※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.294(2026年7月31日配信)からの転載になります。
過日、生産財メーカーのマーケティング担当者の方々数名と、「2026年の暦年・年度の生産財受注額」を予測する機会がありました。出席されたメーカー各社の足元の受注状況は大きく改善、1~6月の受注額実績は過去最高額となる企業もあり、大半が前年同期比で3割以上改善しています。足元のみならず、半年先の先行き受注も好調を持続するとの見方が大勢を占め、成り行きで推移したとしても過去最高の受注額になるという見方で一致しました。
担当者が異口同音に好調な受注の要因として挙げておられたのが、AI向けデータセンターが需要を牽引しているという点です。日経電子版によると「人工知能(AI)向けデータセンターがスマートフォンをしのぐ巨大な経済圏となり始めた。最先端のAIサーバーは部品数が車の40倍超にのぼり、関連業種は多岐にわたる。産業史上、類のない巨額投資でビジネスの常識が塗り替わる『データセンターエコノミー』の新時代が到来した」(2026年7月22日)と指摘されています。それを裏付けるように、「データセンター向けのコネクターだけでも膨大な数となりプレス、射出成形機などが数十台ロットで発注される」といわれる担当者もおられました。そして「この好調さは2028年から2029年頃まで続く」というのが共通した見方となっていました。
その一方でIBMのCEO、アービンド・クリシュナ氏は「1GW規模のデータセンターをフル稼働させる設備を整えるには約800億ドル(約12兆4,400億円、1ドル155.5円換算)かかる。20〜30GWのデータセンターを稼働させようとしている企業は、その1社だけで1兆5000億ドル(約233兆2,500億円)の設備投資を迫られることになる。設備投資が8兆ドル(約1,244兆円)に達すると、利息を払うだけで約8,000億ドル(約124兆4,000億円)の利益が必要になる」(ポッドキャスト「Decoder」、2025年12月)と、AIの普及を背景にした巨大施設の過熱する建設ラッシュと、需要の過大予測や投資回収への懸念を語っていました。
そこから「データセンターバブル」という声が聞かれるようになり、冒頭の会議の出席者からは「バブル崩壊」を懸念する発言もありました。
立地先で大量の電力や、サーバーが発する熱を冷却するために大量の地下水を消費するため、誘致反対の住民運動が全米で広がりを見せ、日本でも立地を規制する地方自治体の動きも出てきています。また、米国・オープンAIで開発中のAIモデルが、サイバー攻撃能力の評価テスト中に隔離環境を脱出し、同業他社のシステムに侵入する事故が発生するなど、AIが人間の知能や能力を全般的に超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が迫ってきたと感じます。
議論の尽きない懇談が続きましたが、需要の先行き以上に人間とAIの共存をいかにして実現するのか、という不安と懸念を共有できたのは幸いでした。






