学術研究分野の人材育成 ― 10~20年先を見据えた戦略を考える【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.231(2024年2月27日配信)からの転載になります。

 

 

文部科学省の科学技術・学術政策研究所がまとめた「科学技術指標2023」によると、1年あたりの論文数は中国が46万4,077本、シェアは24.6%で、以下米国の30万2,466本、インドの7万5,825本、ドイツの7万3,371本と続いた。日本は7万775本で昨年と同じ5位で、シェアは3.8%という。

 

一方で他の論文に多く引用される「注目度の高い論文」は、世界の中でその国の研究成果レベルを判断する1つの目安とされる。このうち、引用数が極めて高い「トップ10%論文」の1位は中国の5,516本でシェアは29.3%。以下米国の4,265本、英国の1,033本。日本は319本でスペイン、韓国に抜かれて前年の10位から12位に後退し、シェアは1.7%だった。

 

企業・大学・公的機関を合わせた研究者の数で日本は約70万5,000人で、いずれも前年同様3位を保った。人材育成の面では、日本の大学院修士課程入学者は2020年度以降増加傾向にある一方、大学院博士課程入学者は2003年度をピークに減少傾向に歯止めがかかっていない。ものづくり日本をさえてきた学術研究分野の人材不足がめだっている。

 

塑性加工やレーザプロセッシング分野の大学研究室に伺っても、博士課程で学ぶ院生の大半が外国人留学生で、中でも中国人留学生が多い。修士課程まではそれなりに日本人学生もいるが、博士課程になると一気に減ってしまう。

 

修士課程の院生に博士課程に進学しない理由を尋ねると、「博士号を取得しても企業での評価にならない」「修士を卒業し、あらためて3年、博士課程で学んで博士号を取得しても、生涯所得で差がつかない」「大学に残っても助教から、講師、准教授、教授というキャリパスが見えず、将来が不安」という答えが返ってくる。

 

講座制がなくなり、研究者の自由度はかなり改善したものの、講座制当時の負の部分が残っているのも事実で、研究室の指導教授の意向への配慮も少なからず残っており、研究資金や実験装置などの活用を考えると、自分の研究が思う存分にできる環境にはほど遠いようだ。

 

10〜20年先を見据えた戦略を打たなければ、現状が大きく変わるとは思えない。真摯な取り組みが待たれている。