中小製造業の賃上げと価格転嫁問題【メルマガ連携】

 ※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.209(2023年4月28日配信)からの転載になります。  

 

 

今春の民間企業の賃上げは、政府からの強い要請もあり、高い水準となりました。

 

日本労働組合総連合会(連合)がまとめた4月11日時点の集計によると、定昇込み賃上げ率の加重平均は3.69%、300人未満の中小企業の組合でも3.39%となりました。2022年やコロナ禍前、2019年の同時期の集計結果を大きく上まわり、6月末時点の最終集計との比較だと1993年の3.90%と同水準で、30年ぶりの高水準となりました。

 

しかし、大手企業とは異なり中小企業 ― とりわけ大企業からの受託生産を日々の糧とする中小製造業では、材料価格をはじめ人件費などのコスト上昇分を価格転嫁できなければ収益の悪化が避けられません。

 

ところが、中小企業庁の2022年9月の「価格交渉促進月間」フォローアップ調査によると、受注側中小企業のコスト上昇分に対して、発注側企業がどれだけ価格上昇(転嫁)に応じたかの割合である「価格転嫁率」は、業種・コストによってバラツキがあったものの、46.9%と半分以下でした。

 

政府は特に中小企業の賃上げにあたっては、サプライチェーン全体で適切に利益を共有し、下請け中小企業の賃上げ原資の確保のためにも「価格交渉促進月間、下請からの情報を活用した取引適正化の強化」と「業界団体を通じた取引適正化のプロセス体系化・強化」に取り組んできました。3月には岸田首相も出席して、政府と労使の代表による「政労使の意見交換」が開催され、今後の中小企業や小規模事業者の賃金交渉について意見交換が行われました。開会に先立ち岸田首相は、これまで政府が実施した価格転嫁に関する調査結果を踏まえ、「中小・小規模企業の賃上げ実現には、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠で、業界団体のみなさんには自主行動計画の改定・徹底を求めます」と発言しています。

 

中小企業庁が公表した、取引適正化のための「自主行動計画」を策定した業界団体(約50)に対し、今年1月から300名に増員された「下請Gメン」のヒアリング成果をまとめた取引情報(約1万件/年)によると、原材料価格について、上乗せや要否の調査等の前向きな動きがある一方、価格が長期間にわたり据置きとなっている事例が見られています。また、価格交渉の対応として、将来の取引が減少することを示唆して、価格転嫁を認めないという事例も見られます。また、値上げを打ち消すかたちでの値下げや、転注が行われている事例も見られます。また、労務費の上昇分について協議に応じないという事例や、人件費上昇分と利益を加味した原材料費と加工賃を提出したところ、加工賃を下げさせられ、2022年前半から2回にわたって値上げはできたものの、結局利益が出ない価格で製造を請け負うこととなっているという報告もありました。

 

賃上げは継続して行っていく必要があります。そのためにも価格転嫁問題はこれからも大きな課題になると思います。