※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.257(2025年2月28日配信)からの転載になります。
今年は2月に入っても寒さが続き、マフラー、手袋が手放せません。ところが先日、出勤時に民家の庭先で、枝垂れ白梅が二分咲きになっているのを見て、心がウキウキしました。桜の開花予想も発表され、春が待たれます。
先週末、サントリーホールで開かれたピアノコンサートに、家内と出かけてきました。ここ4年ほど注目している演奏家で、心地よいピアノの響きと、MCのおしゃべりを楽しみに出かけています。
クラッシックが好きというわけではなかったのですが、彼の奏でたショパンのピアノ協奏曲に引き込まれ、以来ファンになりました。「音楽」とはその字のとおり「音を楽しめばいい」と思い込んでいましたが、ある方から「音楽」は人の声(音)と楽器の音色だと聞かされ、演奏家が発する声、メッセージにも注目するようになりました。
このピアニストは、プロデビューする前は街角ピアニスト、YouTuberとしてさまざまな音楽とメッセージを発信し、数十万人とも言われるフォロワーを獲得したことでも有名ですが、おしゃべりとメッセージは面白かった。
ショパンコンクールでファイナリストに選ばれ、それを契機にピアニストとして本格的な活動を開始。2年後には拠点をニューヨークに置き、活動も世界に広がりました。そんな成長ぶりを見るのも楽しみに出かけました。
しかし、先週のコンサートでは印象が変わりました。演奏曲目が変わり、不協和音を使う現代音楽が増えていました。1人で2台のピアノとシンセサイザーを駆使して演奏しましたが、オープニングもエンディングも何とも耳障りで聞くのに疲れました。MCにも生気がなく、楽しめませんでした。同伴した家内も「疲れた」と言っていました。
活動の主体が海外に移り、視野が広がったこともあったのでしょうが、聴衆を和やかに楽しませるということがなく、演奏家の考え、メッセージ性の強さが目立ました。演奏家の声や楽器の音色を楽しむ時間の少ないコンサートで残念でした。
私たち雑誌編集者にも同様のことが言えます。読者が何を楽しみに購読していただけるのかを意識した編集が必要だと思います。取材先で感じたことだけを取り上げると編集者の主張が目立ち、読者の興味が希薄になることもあるように思います。取材原稿を書き上げたときの充実感だけではなく、その記事を読まれる多くの読者の関心や興味を思いながら、取材をして記事にまとめ上げるという役割を忘れないようしないといけないと改めて感じました。