人手不足なんて、どこ吹く風 ― 理念経営で成長する企業【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.48(2017年4月28日配信)からの転載になります。

 

景気が安定してきたことで、人手不足がじわじわと押し寄せてきている状況の中、「社員募集には苦労したことがない」と話される板金工場に2週連続でお伺いすることができた。

 

まず1社目は、3年前に2代目経営者に就任された社長の考えで、社員に働くことの意味を問い続け、社員自らが、日々の働きの中から自分の生きがいを見つけ出していくような“しかけ”を編み出し、その生きがいをモノづくりに転化して業績を向上させている板金企業。

 

受けた仕事で、お客さまに満足していただき、感謝されるような顧客満足度No.1の会社を目指し、「心粋(こころいき)のモノづくり」を実践していた。

 

先代の功績も大きかったが、この5年間で従業員数と売上高を2倍に伸ばし、新規得意先も精力的に増やしている。

そのためのツールの1つとしてホームページに工夫を加え、Webマーケティングを実践、新規得意先の多くがWebから入ってきているという。

自社が保有する設備、得意な加工技術、自社の特徴をPRして差別化を図っている。

 

社長いわく「ホームページのコンテンツにはお金を惜しまない」と、会社紹介の動画制作や写真撮影にもプロを活用して、他社との差別化を実現。

Webにアップしたまま放置するのではなく、定期的にコンテンツを更新し、見る人を飽きさせない仕組みを構築している。

 

社員のキャリアステージを明確にして、技術・技能の伝承・習得にも力を入れていた。

工場を案内していただくと、溶接工程でTIG溶接に従事していた社員は入社2年目ということだが、かなり難易度の高い溶接にチャレンジしていた。

「失敗を恐れていては技術の習得はできない。とにかく、やってみることが必要。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」 ― 山本五十六元帥の言葉どおりの教育を行っていた。

 

もう一方の企業は、今年で創業70周年を迎える老舗の板金工場。

「人材は教育如何によって育つ」という考えで、徹底して社員教育に力を入れるとともに、20数年前から地元の高校から新卒社員を採用、現在では入社10年以上の中堅社員の大半が新卒の生え抜き社員たち。

その一方、異文化を導入しないとマンネリ化すると考え、定期的に中途採用者も雇用、常に新しい風を社内に採り入れようと努力されていた。

 

極めつけは、会社のバランスシート(BS)を社員食堂に掲示するとともに、前々期、前期、今期の損益計算書(PL)も公開、経営を完全にガラス張りにして、経営状況を共有化していることだ。

給料を上げるためには、売上を上げる一方で原価低減努力を惜しまないように、全員経営で取り組んでいる。

 

そして今、取り組んでいるのが理念経営。

リーダークラスの社員が経営計画の骨子をつくっていた。

ゆくゆくは、会社の経営理念を策定するという。

こうした社風が評判を呼び、社員の同級生などが同社へトラバーユしてくることにもつながっている。

 

いずれの企業にも共通しているのが家族経営だが、人手不足などどこ吹く風。

2社とも社員が中心になって活躍し、2050年までの中・長期経営計画まで立案しようとしていた。