経済の好循環をけん引する企業の設備投資【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.218(2023年8月29日配信)からの転載になります。

 

 

中国リスクの高まり、為替市場での円安効果もあって、海外へ生産移転していた製品の国内回帰がかなり見られるようになっている。板金サプライヤーの間でも、国内回帰によって仕事が増えたという声が聞こえてくる。

 

日本政策投資銀行が8月3日に発表した「2023年度の設備投資計画調査」によると、2023年度における大企業の設備投資額は前年度実績比20.7%増の20兆6,152億円と見込まれている。生産拠点の分散化や環境対応の必要性が、背景にあると分析されている。

 

製造業では、デジタル化やEV開発の進展により、鉄鋼・非鉄金属等の素材産業や、電気機械、自動車等がけん引し、前年度比26.5%増と大幅な増加が見込まれている。また、人流拡大を受けて、鉄道の安全対策や航空機の導入、都市部の再開発や物流施設の新設等も継続すると予測されている。

 

海外投資に関しては、中国で自動車、電気機械、精密機械が伸び悩む一方、化学関連での伸びが見込まれ、北米では自動車用のバッテリーや半導体材料等が引き続き伸びると見られる。また、全ての地域において、エネルギー関連の投資が継続すると分析している。プラスは2年連続で、コロナ禍前の水準を回復した。

 

興味深かったのは報告書の中に、「国内生産拠点を強化する動き」という記述があり、向こう3年間で国内生産を強化する動きが、2021年度調査の41%から2023年調査では51%へと大幅に上がっていることだ。向こう3年間で海外生産を強化する動きは、2021年度調査では48%、2023年度調査では49%。国内生産拠点を強化する動きが、海外生産拠点を強化する動きを上まわるのは初めてだ。

 

この計画どおりに設備投資が行われれば、製造業はGDPの2割を占めているだけに経済成長に対しても好影響を与える。物価上昇のペースに賃金上昇が追いつかずに停滞している個人消費に代わって、民間企業の設備投資が経済成長を支えるといっても過言ではない。

 

設備投資によって日本製品の競争力が生まれ、企業の業績が改善、賃上げの原資もでき、ベースアップによって個人消費が改善して景気の好循環サイクルが生まれることを願う。