師走に思うこと【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.93(2018年11月30日配信)からの転載になります。 

 

師走 ― いよいよ、12月を迎えます。

皆様も、この1カ月は総決算の勢いで過ごされるのではないでしようか。

 

今年は地震、台風、集中豪雨など、自然災害が6~9月に集中。

人的被害はむろん、住宅や鉄道、道路などの社会インフラにも多くの被害をもたらし、復興の目途もたっていない状況です。

インバウンド需要もこの時期は前年度を下まわり、6~9月期のGDPはマイナス成長となりました。

 

海外に目を転じると、米中の貿易摩擦は貿易戦争から“新冷戦”ともいわれる危機的状況を生み出し、世界経済に大きく影響してきました。

また、EUからの離脱を目指す英国との交渉は一応の決着を見ましたが、この結果に異を唱える与党の議員や、野党がこぞって議会で交渉結果の批准に反対し、このままでは「無秩序離脱」という事態も起こりかねません。

そうなれば英国経済はむろん、欧州経済にも混乱が広がり、世界経済にも大きく影響してくることか考えられます。

 

国内は「働き方改革」がいよいよ本格化するとともに、来年10月からは消費増税が予定されるなど、経済成長がマイナスに働く要因もあります。

が、2020年の東京五輪開催、さらには2025年に開催が決まった大阪万博などの国家プロジェクトもあり、経済が大きく落ち込む要因にはならない気がしています。

それだけに米中と欧州の動向が来年の世界経済を揺るがすトリガーになってくると思います。

 

ところで、11月末に長野県小布施にある「信州北斎美術館」を訪ね、葛飾北斎が80歳から晩年まで4度にわたりこの地に長期間逗留して肉筆を振るった作品に出会ってきました。

肉筆とは一点もので、ここでしか見ることができません。

東町・中町の祭屋台の天井画に描かれた「龍図」と「鳳凰図」は大胆な構図で、しぶきを上げる波濤の中から、燃えるような紅地に飛翔する龍と、暗い藍を基調にした背景に鮮やかな朱色で彩られた鳳凰。

有名な「富嶽三十六景」を見慣れていた私には驚きの感動でした。

これだけの天井絵を、80歳を優に超えた北斎が描いたとは驚きです。

 

92歳で亡くなるまで森羅万象を描き、生涯に3万点を超える作品を発表した北斎の辞世の句は「人魂で 行く気散じや 夏野原」。

あの世に行ったら、人魂となって夏野原をふわりふわりと散策する、と言う意味のようです。

どこまでも遊び心と絵師としての創作魂を持ち続けていたようです。

 

人生100年時代。

私たちも生ある限り浮世から離れることはできませんが、自分がこれと決めた人生を、とことん生き貫く気概を持ち続けたいものです。