2回めの北陸新幹線――ルック北陸で見えてくること

乗車するのは2回めとなった北陸新幹線「かがやき」は、開業3日目に乗車したときよりも乗客の数は少なく、長野駅を過ぎると3割ほどの数に減った。

 

また、富山駅で「はくたか」に乗り換えて、新高岡駅まで乗車したが、指定席車両ということもあって数名の乗客しかおらず、東海道新幹線「こだま」より乗車率は低いように感じた。

新高岡駅で下車したが、5号車から1号車までの自由席車両の乗車口には、多くの乗客が並んでいた。

帰りの富山までの「つるぎ」は富山止まりということもあって、乗客はさらにまばらだった。

 

3月14日の開業に合わせるかのように、長野・善光寺の7年ぶりのご開帳が始まり、賑わいを見せるかと思っていたが、平日のビジネス利用では乗降客は意外に少ない印象だ。

しかし、4月29日からのゴールデンウィーク期間中は、黒部アルペンルートの開通、チューリップ祭りといったイベントも始まり、指定席はほぼ満席ということで、利用者は大幅に増加しそうだ。

 

上越妙高駅を過ぎるとトンネルが多くなるが、糸魚川駅を過ぎ、黒部宇奈月温泉駅に近づくと、車内放送で「トンネルを出ると左手に立山連峰が見えてきます」というアナウンスが流れた。

車窓から左側を見ると、雪を頂いた立山連峰が見え、大半の乗客はその雄大な景色に見とれる。

北陸新幹線で一番の絶景だ。

 

ところで、地元の人たちは一様に開業を歓迎しているが、新高岡駅で見たように、富山-金沢が約30分でつながったことで、金沢に出かけて買い物する人たちが増えていることが懸念されている。

 

富山市や高岡市の地元商店街では、消費者が新幹線で手軽に行けるようになった金沢で買い物することで、地元商店街の売上減少を心配するとともに、金沢一極集中によって金沢の商圏に一気に取り込まれることを心配する声も聞かれるようだ。

 

もともと石川県は観光資源も豊富で、行政も空港や駅周辺の整備に力を入れる一方で、周辺の公共駐車場は料金をしっかり徴収している。

そうした財源も活用してさらに施設を整備するなど、積極的な観光客招致を行っている。

 

それに対して富山空港の駐車場料金は、空港利用者には無料化され、ビジネス客を中心に空港利用を働きかけてきた経緯がある。

こんなところにも行政の姿勢がうかがわれる。

 

もともと富山県はサッシ・建材の一大集積地になっており、工業も盛んだ。

また、農・漁業も盛んで、日本でも豊かな県として知られている。

砺波平野には散居村と呼ばれ、家屋の周囲に防風効果を考えた屋敷森で囲まれた家屋敷が多く点在する。

その風景は日本の伝統的な村風景となっている。

 

さらに欄間づくりで有名な井波彫刻。

毎年9月1日、2日に行われる富山市八尾の「越中おわら風の盆」。

さらに合掌造りで有名な五箇山など、観光資源にも恵まれている。

それだけにこうした豊かな自然や風景をPRすることで訪れる人々を増やす手立てはまだまだ考えられる。

 

開業して1カ月。

北陸新幹線はまだまだいろいろなことを考えさせてくれる。

補助金とともに成長戦略策定を急げ【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.7201541日配信)からの転載になります。 

 

316日から公募が始まった「地域工場・中小企業等の省エネルギー設備導入補助金」への申し込みが殺到しているという。

 

中でも最新モデルの省エネ機器等の導入支援であるA類型は、旧モデルと比較して年平均1%以上の省エネ性能の向上が確認できる機器等の導入を支援するというもので、補助金総額は800億円程度。

1事業あたりの補助金限度額は50万円から最大15,000万円。

補助率は中小企業の場合は1/2以内、その他は1/3以内となっている。

 

補助金申請を行う「補助事業者」は、補助金交付を決定する「執行団体」(一般社団法人環境共創イニシアチブ)、省エネ性能が証明された機器を提供する「製造メーカー等」との間で申請に必要な書面を作成する。

「製造メーカー等」は、加盟する工業会などの「証明書発行団体」に省エネ性能に関する証明書を発行してもらい、これを申請する書面に添付して申し込むと手続きが完了する。

 

すでに各地で商工会議所や銀行などが補助金申請についての説明会を開催しており、多くの中小製造業が申請の手続きを行おうとしている。

しかし、製造メーカーが加盟する工業会が「証明書発行団体」になっても、手続きに時間を要するため、すぐに証明書が発行されるわけではなく、申請書類は整っているのに証明書が来ないと製造メーカーにクレームを寄せるような事態も起きはじめている。

 

補助金総額が800億円程度に限定されているのと、補助金の限度額が15,000万円と高額なだけに、11億と仮定すると補助金を受けられる企業の枠は800社しかないということになる。

それだけに「早いもの順」という認識が中小企業の経営者側にもあるようだ。

証明書を発行する工業会も職員の数が限られており、処理に時間がかかっているようだ。

 

また、証明書を添付して書類を提出しても実際に採択になるかはわからない。

単純に年間を通して1%以上の省エネ効果だけではなく、それが生産性改善にどれだけ寄与するのかといった視点での訴求も必要だ。

さらに書類には今春のベースアップへの対応を記入することが求められ、決算内容なども記述する必要がある。

 

じゃぶじゃぶと補助金を出すということではなく、補助事業者の業績からベースアップへの積極的な取り組み姿勢など、勝ち組企業でなければ申請しても採択されない構造も見え隠れしている。

 

この補助金は景気対策として安倍政権が平成26年度の補正予算で決めた経済対策であり、景気の好循環サイクルを構築するための呼び水的な色彩が強い。

それだけに企業力のある補助事業者の申請が採択される割合は高い。

 

それにしても円高、省エネ、モノづくり補助金など、ここ数年、政府が製造業界に対して行ってきた経済対策の総額はかなりのものになる。

製造業にとってはありがたい政策だが、お金だけ出すのではなく、どうしたら仕事や雇用機会を増やしていけるのか、さらにこれからの厳しい国際競争の中で、日本の中小製造業の体質を強化するために何をしなければいけないのか。

カンフル剤としてのお金だけでなく、日本の製造業復活の成長戦略を打ち出すことの方が重要な気がする。

 

お金とともに、日本の製造業が元気になり、仕事も雇用も増やせるような成長戦略の策定が待たれる。