※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.113(2019年8月29日配信)からの転載になります。
夏休み前、関西の大学の理工系学科の研究室をいくつか訪問しました。
休みに入っていると思っていたら前期試験真っ盛りの大学もあれば、就職が内定している学部生が研究室で卒業研究に取り組んでいる大学もあり、結構な活況でした。
指導される教授・准教授・講師の先生たちとも懇談しましたが、学部生や院生の研究指導、試験監督、そしてご自身の研究成果のまとめなどで忙しくされていました。
最近は、就職希望の学生は学部3年から会社説明会や会社訪問の機会が増え、夏休み期間中はインターンシップへの参加を優先、落ち着いて勉学や研究に取り組む時間が減っているともお聞きしました。
こうした傾向は学部生に限らず、修士課程の院生も同様のようでした。
就職戦線は売り手市場なので、学生が企業を選ぶことができ、大学院に残って研究を継続する学生は減少しているようです。
京都大、大阪大でも修士課程に進む学生は学部全体の3割程度、私学ではそれ以下だそうです。
そのため、研究室スタッフの数も、講座制の大学研究室で教員を含めても十数名ということが多く、学生に人気がある研究室でも20名以下となっています。
しかも、修士課程や博士課程の学生の多くが海外からの留学生で、日本人の割合は半数以下になり、大学研究室のダイバーシティ化が加速していました。
それはそれで、研究室の会話が英語になるため、日本人学生の外国語能力が高まるというプラス効果もみられる一方、海外からの留学生の存在がなければまともな研究ができないという現象も現れてきているようです。
イギリスの高等教育専門誌「THE」(Times Higher Education)が発表した2019年の「THE世界大学ランキング」によると、日本からは東京大学と京都大学が引き続きトップ100入りし、東京大学は順位を4つ上げて42位、京都大学は9つ上げて65位でした。
日本からは前回より14校多い103校がランクイン。
数ではイギリスを抜き、アメリカに次いで2位となっており、世界的にみても日本の大学はがんばっています。
人口減少が進む中、日本経済の活力の低下が避けられなくなっていますが、世界をリードする新技術を開発するためにも、大学での教育や研究のあり方が問われています。
筆者が駆け出しの記者だった頃、大学の研究室を訪ねると、多くの日本人学生が在籍し、その多くが研究室に泊まり込んで研究に没頭する姿を見かけました。
しかし今では研究室もきれいになり、寝袋や長椅子に置かれた毛布などは見かけなくなっています。
先生たちも「ブラック研究室と言われたくない」というわけで、研究室での寝泊まりは推奨しない傾向もあるようです。
それでも仮眠用のベッドを置いている研究室もあり、かつての名残を感じました。
キャンパスではセミが鳴き、夏真っ盛りでしたが、研究室でも熱い研究が続けられているのを見て、まだまだ捨てたものでもないと感じました。