※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.43(2017年3月31日配信)からの転載になります。
医療現場では相変わらず医師と患者の信頼関係が肝になる。
過日、私の家内が白内障の手術で大学病院を紹介していただき、そこで利き目ではない方の目にレンズを入れる手術を受けた。
あまり知られていないが、レンズには近くがよく見えるレンズ、遠くがよく見えるレンズ、中間のレンズと、大きく3種類があるようだ。
家内は車の運転や読書、パソコンの操作をすることを考慮しながら、医師とも相談して中間の距離に合わせたレンズを入れた。
ところが術後の視野が以前にも増してぼんやりして、遠くのものも近くのものもはっきり見えない症状が現れた。
人間の目のように焦点が自動調節できるわけではないので、入れてしまったら視野や視力を改善するのは難しいことがわかって、もう片方の目の手術で同じレンズを入れることに不安を感じ、手術を躊躇すると、主治医から「やめますか」とあっさり言われ、主治医への不信感を募らせてしまった。
不安な患者に対する治療方針や手術の説明、術後の生活のクオリティーをどのようにして確保するのか、もう少し患者の側に立った説明をしてほしかった、と家内は話していた。
そこで今度はWebで検索、クリニックのWebサイトをよく見て判断し、納得した解説をされていたクリニックの医師と出会って治療を続けるようになった。
白内障の手術は一泊二日か、日帰りも可能なほど、簡単で手軽にできるようになったが、術前と術後のクオリティーを考え、何を優先して生活したいと考えているのか、患者の要望に耳を傾け、医師と患者の関係の中で、医師が治療法や薬の内容について、患者に十分な説明を施し、患者の同意を得た上でそれを実行する「インフォームドコンセント」の考え方が、まだ日本では十分には浸透していないようだ。
一方、私のかかりつけの大学病院の医師が4月に医局を去って、ご自分のクリニックを開業します、という案内をいただいた。
かれこれ10年以上お世話になっている医師で、患者が不安に思うことを事前に予期して、必ず検査結果に基づいた適切なアドバイスをしてくださっていた。
患者にはネガティブな話は一切せず、病気と向き合って、どうしたらそれを克服できるのか、一緒になって考えてくださる先生が意外に多いことがわかってきた。
そんな先生は、家内が出会った先生と比較すると、対応がまったく異なっているようだ。
生命に関わる重大な病気でないという安心感があったのか ― 患者がそれまでの生活のクオリティーをできるかぎり継続できる治療が求められている気がする。