米国メディアが受けたカルチャーショック【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.89(2018年9月29日配信)からの転載になります。 

 

2日ほど、9月末に来日した米国の業界メディア4社の取材に同行しました。

 

7名の記者の中には、これまで何度かお目にかかったことがある記者もいましたが、半数以上は来日するのも初めてという記者たちでした。

それぞれこの業界ではキャリアを積んだ方々でしたが、案内したお客さまの工場を見て、大変驚いておられました。

 

工作機械メーカーの工場では、5軸制御の高精度マシニングセンタの主軸スピンドルやハウジングの加工・組立工場を案内していただきました。

自動化が進んだ工場で、粗加工から焼き入れまで、ミクロン台に仕上げる精密加工の工程が、ほぼ無人で加工され、しかも生産するスピンドルの種類が3ケタにもおよぶと聞いて、驚いておられました。

スピンドルが、クリーンルームでさまざまな測定機具を使いながら緻密に組み立てられていく様子には、感嘆の声をあげていました。

 

IMTSシカゴショーなどで見たことがあるメーカーのマザー工場だっただけに、1台の工作機械が組み上がっていく工程は驚きそのものだったようです。

30年程前はアメリカにも有力な工作機械メーカーがありましたが、今は事業買収でほとんどなくなっており、それだけにマザーマシンをアメリカ製造業界に供給する日本の工作機械業界の高い技術力とそれを支えるエンジニア・作業者のスキルに感動していました。

 

そして、工作機械の主要部品に板金カバーがあることを初めて認識したようです。

加工部品の4割が板金カバーという説明に驚くとともに、毎月調達する板金カバーの金額を聞き、その数字の大きさに驚きを隠せない様子でした。

板金カバーがなければ高精度な工作機械も裸同然、その機能を果たすことができません。

板金カバーと、それを製作する板金サプライヤーの存在に初めて気がついたようでした。

 

板金サプライヤーの工場を見学したときには、彼らは完全にカルチャーショックを受けていました。

毎月受注するアイテム数が数千点、しかもその大半がロット10個以下、1個の注文がかなりの割合を占めていることに驚愕していました。

 

1個の部品を丁寧に製作し、合い紙を置いて傷がつかないようにパレットに納め、さらに一点一点に作業指示書を添付して工程流しをしている現実を見て、「アンビリーバブル」「クレイジー」という言葉を連発していました。

出荷ステーションで女性作業者が丁寧に梱包しているのを見て、「これで利益は出るのか」と経営者に質問していました。

経営者の「顧客満足度を最大化するためにはこうした努力は欠かせない。こうした努力ができなければ仕事が来ない」という答えにも驚きを隠せずにいました。

 

明らかに日本のモノづくりに驚くとともに、そこまでやることの意味がよく理解できていなかったようです。

私は彼らに最初に会った時に、「日本を楽しむとともに、日本のモノづくりを理解していってください」とお願いしましたが、その成果は十分あったように思えました。

ただ、それが驚きに終わるのか、尊敬にまで昇華するのかまではわかりません。

取材記事が掲載されるのが楽しみです。