※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.194(2022年9月29日配信)からの転載になります。
1962年に開校された12校をはじめとし、全国に51校55キャンパスの国立高等専門学校(以下、高専)が設置されていることをご存じの方はどの程度いらっしゃるでしょうか。正直私も今回、高専で教育・研究活動を行っておられる先生方の研究室をお訪ねして、初めてその事実を知りました。
1950年代後半からの日本経済の成長はめざましく、それを支える科学・技術のさらなる進歩に対応できる技術者養成の要望が産業界から強まっていきました。こうした要望に応えて、1962年に初めて「高専」が設立されました。
「高専」は、大学の教育システムとは異なり、社会が必要とする技術者を養成するため、中学卒業生を受け入れ、5年間(商船高専は5年半)の一貫教育を行う高等教育機関です。5年間の「本科」の後、2年間の専門教育を行う「専攻科」が設けられています。幅広く豊かな人間教育を目指しており数学・英語・国語などの一般科目と専門科目をバランスよく学べるカリキュラムが用意されています。
実験・実習を重視した専門教育を行い、大学とほぼ同程度の専門的な知識・技術を身につけられるよう工夫されているのが特徴となっています。5年生の卒業研究はエンジニアとして自立できるよう、応用能力を養うことを目的としており、学会で発表できるような高い水準の研究も行われていいます。
学校ごとに名称は異なりますが、高専には機械工学科・電子工学科など5学科があります。学科定員は40名となっており、1学年の学生数は200名、5年生までいるので学生数は約1,000名となっています。最近は2年間の専攻科に進学したり、4年制大学に編入する学生の割合が増えたりする傾向が強くなっており、中には修士課程や博士課程を目指す学生もいるようです。
それにしても、中学を卒業した15歳の若者が学科を専攻して将来進むべき道を選ぶのは、途中で学科を変更することができるとはいえ、きびしいものがあると思います。通学できない場所に住んでいる学生が多いため、半数以上の学生が「教育寮」と呼ばれる寄宿舎で生活しているようです。
最近は建築デザインや材料系の学科に入学する女子学生が増える傾向になっており、機械工学科を目指す「ものづくり女子」が増える傾向のようです。また、「ロボットコンテスト」「プログラミングコンテスト」「デザインコンペティション」などの全国大会が開催されるようになり、時代を反映した取り組みも行われるようになりました。「グローバルエンジニア」育成のための国際交流事業も積極的に行われるようになりました。
理論だけではなく実験・実習に重点が置かれた教育を行うため、実習工場では、たとえば鋳造工程を学ぶために「砂型」を製作して鋳物を鋳造する工程も学んでいました。
「高専」が誕生して60年。改めて「高専」の果たしてきた役割とこれからの在り方に関して考えていく必要を感じました。