※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.150(2021年1月29日配信)からの転載になります。
昨年10月に菅首相が「2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言して以降、「グリーンディール」(脱炭素化と経済成長を両立させる産業政策)が大きな話題を集めています。
私たちも2021年のキーワードは「グリーン」「デジタル」「レジリエンス」そして「ヘルスケア」と考えています。このキーワードが、これからの新分野開拓のキーワードにもなります。
取材でお目にかかったお客さまに話を聞くと、社内でデジタル化を推進したり、BCPを策定して企業体質の強靭化(レジリエンス)に取り組んだりしている事例は多いのですが、こうした分野の関連産業にアタックをかける事例は少ないようです。キーワードに関連した具体的な有望産業が見えていないのもありますが、どうしても従来から継続取引している業界を中心に連想してしまうので、そこまで考えがつながらない、という方が多いようです。
乗用車のEV化を進めるためには充電ステーションの普及が必須です。また、充電に必要な電気を従来の火力発電に頼っていたのでは脱炭素社会は遠のくばかり。今後は再生可能エネルギーをはじめ、CO2を排出しない発電方式に置き換えていく必要があります。
現在、日本の発電所は石炭、天然ガス、石油などを燃やして発電する火力発電が70%以上を占め、原子力発電や再生可能エネルギーの割合が高い欧州各国とは大きな差があります。それだけに国のエネルギー政策を抜本的に立て直す必要があり、風力発電所・温度差発電所・太陽熱発電所といった再生可能エネルギーを早急に実用化しなければなりません。ここに新たな板金需要が生まれる可能性は高いと考えられます。
充電ステーションに設置する充電器の筐体も、多くは板金で製作されています。日本自動車工業会の試算によると、国内需要の車をすべてEVに置き換えるためには充電インフラ整備に14兆~37兆円もの投資が必要になります。板金需要がそのうちの数%だとしても、数百億から1,000億円超もの巨大な市場が生まれます。さらに、再生可能エネルギーの発電所にはパワーコンディショナー、コンバーター/インバーターなどの受配電設備も必要になり、ここにも板金需要が生まれます。
「グリーン成長戦略」が板金市場のパラダイムシフトに火をつけます。