※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.51(2017年5月31日配信)からの転載になります。
2012年の第2次安倍晋三内閣発足後、国内総生産(GDP)は47兆円、雇用は170万人増加、政権発足時は4.3%だった完全失業率が3.0%にまで減少するなど、経済指標が改善してきた。
アベノミクスの実効性に対する経済界の評価は高く、国民世論も50~60%台で安倍政権を支持している。
もともとアベノミクスは、円安と株高をテコに経済成長を実現し、それが賃金の上昇に結びつき、個人消費が改善して需要を喚起、デフレ脱却を目指すというシナリオだった。
しかし、マイナス金利政策の導入にもかかわらず、為替相場は円高に転換し、株式相場も先進国では最低のパフォーマンスにとどまっている。
もともと金融政策だけで景気回復を図るのは無理筋との見方があったが、実体経済からもその実態が示されている。
そこで、「3本の矢」にもある成長戦略による経済再生が、ここへきて大きな課題となっている。
こうした中で、5月に各業界団体の定時総会・懇親会が開催され、私も4団体の懇親会に参加し、集まっておられた経営者の方々から、企業経営の実態をいろいろお聞きした。
4団体の定時総会・懇親会に出席された企業経営者の顔色は大変良く、「昨年後半からの景気回復を受け、業績は改善。先行きについても、少なくとも年内までの景気は好調に推移する」という認識で一致していた。
その一方で地政学的な問題、ポスト五輪をめぐる課題などから「景気は今年がピーク。2018年以降は厳しくなる」という見方をされている方が多かったことも印象的だった。
こうした中で参加者から聞こえてきたのが、IoT技術を最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間とを融合させることで人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」 ― 「Society 5.0」を世界に先駆けて実現していくという政府の戦略が、「具体性に乏しく、大手企業ならばともかく、中小零細企業ではどのように取り組めばいいのか皆目検討がつかない」という声が多かったことだ。
経済産業省は3月にドイツ・ハノーバーで開催された「CeBIT 2017」(国際情報通信技術見本市)で、日本の産業が目指す姿を示すコンセプトとして「Connected Industries」を発表した。
各業界団体の懇親会場でも、経済産業省の来賓挨拶ではほとんど「Society 5.0」「Connected Industries」という言葉が使われていた。
しかし、その内容を理解されていた方は少なかったように思われた。
大手企業の経営者も概念としては理解されていても、現実的なこととなると十分な理解を備えている方々はほとんどいなかった。
中小企業経営者を中心に、日本経済の成長戦略の骨格ともなるこうした考えについて、十分なコンセンサスをとることの重要性を痛感しました。