※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.244(2024年8月29日配信)からの転載になります。
少子高齢化が進む日本では、ものづくりを支える労働人口の減少と、イノベーションの源である理工系人材不足が大きな問題となっている。そのため、人口の半分を占める「女性」を人材供給源として活用することに関心が集まっている。そのためには理工系に進む女性を増やし、女性のエンジニアや研究者の育成が必要だが、企業・大学内での女性の活躍は増えていない。結婚・出産・育児・家事など女性の負担はまだ大きく、それが足かせとなって男性のようにその道一筋というわけにはいかないようだ。
日本でなぜ女性のエンジニア・研究者の比率が低いのか、国などもその原因究明と解決へ向けた取り組みが進められているが、根本の問題として大学の理工系学部に入学する女子学生の数が少ない。日本の女性だけが理工系を敬遠する合理的な理由はなく、なんらかの要因があると考えられる。子ども時代から理工系に興味を持てるような雰囲気を醸成することが重要性という指摘もある。
このような社会的背景の中で、関西地区では2006年から大学・企業などの関係者が女子高校生を対象に、理工系のおもしろさを伝えるための活動を開始。2007年度から科学技術振興機構の支援を得て「女子中高生のための関西科学塾」の活動を始めている。そしてより安定的に運営するため、活動の理念に共感する企業等から資金提供を受けるとともに、関西科学塾をより充実したものにしていくことを目的に2017年11月に「一般社団法人関西科学塾コンソーシアム」が組織された。
現在は女子中高生に①理工系の学術分野のおもしろさを実験・実習を通して伝えること、②理工系を好きな仲間が大勢いることを知らせること、③(女性に相応しい)職業としてさまざまな理工系の仕事があることを知らせること ― などを目的に活動している。
7月に行われた「第19回関西科学塾」に講師として招かれた女性研究者は、「100名以上の女子中高生が集まり盛況だった。しかも講演後の質疑応答での質問内容も高度で奥深く、彼女たちの科学技術に対する好奇心の高さに驚いた。女性だからというだけで科学技術に対する好奇心の芽を摘まないように、両親を含めた大人がしっかりサポートしないといけない」と感想を語っていた。
このような試みが全国各地でも行われ、女性活躍社会の実現に向けて努力しなければいけないと強く感じた。