※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.224(2023年11月28日配信)からの転載になります。
東京商工リサーチの調査によると、全国の社長の33.3%が70歳以上という。経営者の平均年齢は上昇傾向にある。休廃業・解散件数は年間で4万件以上と高水準となっており、休廃業・解散件数増加の背景には経営者の高齢化が一因にあると考えられ、こうした状況への対応は喫緊の課題となっている。
しかし、高齢化が悪いかと言えばそうでもない。事業承継者を育成するという観点からも、高齢化だけが問題ではない。
サミュエル・ウルマンの名詩の一節「青春とは、真の青春とは、若き肉体のなかにあるのではなく、若き精神のなかにこそある」(自由訳・新井満)ではないが、70代以上の経営者にも「若き精神」をもち、エネルギッシュに経営に取り組まれている方が数多くいる。
小誌12月号、1月号の取材を進める中で、70代の経営者3名にお目にかかったが、いずれも経営へのモチベーションが高く、企業業績も順調だ。3社とも事業承継者である子息が専務として支えており、経営基盤も盤石な業態を整えている。
その中には57歳で脱サラ、起業した方もいた。自分のやりたいことを貫徹するためには自分が責任を取らなければいけないと、退職金を元手にご自身が考案されたアイデアを事業化。22年目に年商20億円を突破し、4人で始まった会社も30名の社員を抱えるまでに発展、販売も順調で業績も右肩上がりとなっている。77歳になった現在も「体力は落ちたが気力、好奇心は創業当時よりも充実している」と話され、浮かんだアイデアをカタチに変えるため、徹夜もいとわないと笑顔で語っておられた。
74歳になられた別の経営者は、専務に任せている機械加工部門を分社化し、新会社を設立するなど事業意欲が高い。もうひとりの70歳の経営者は、長男・次男が入社して製造・販売を任せられるようになり、新しいビジネスモデルを構想して新規事業の開発に積極的に取り組まれていた。
3人の経営者に共通するのはウルマンの詩のとおり、ポジティブにエネルギッシュに日々を過ごしていることだ。「若き精神」を持つことの大切さをあらためて感じた。