安易なポピュリズムは国を亡ぼす【メルマガ連携】

 ※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.263(2025年5月29日配信)からの転載になります。

 

 

米の価格高騰に対応して、政府備蓄米を市場放出する件についての失言による農林水産大臣の交代は、政治家の資質が問われたお粗末な出来事であった。急遽、農相となった小泉新大臣は早速、随意契約により備蓄米の店頭価格を5kgあたり2,000円台とする方針を発表。テレビ東京と日本経済新聞の世論調査によると、小泉大臣に「期待する」と答えた割合は65%と、現内閣の支持率34%に比べても、はるかに高い数字となった。現内閣はこれによって息を吹き返したようだ。緊急事態に対する石破首相のリーダーシップが問われていただけに切り札を出したのだろう。

 

幼少の頃から米飯が大好きな高校1年生の孫は、昼の弁当を含め、1人で1日5合ちかくを消費するため、米の買い置きがすぐになくなってしまうと息子が苦笑いしていたが、育ち盛りの子どもを抱える家庭では、米の価格高騰と入手難は大変だったようで、今回の決定で改善が進むことを期待したい。

 

それにしても、消費者の米離れが進む一方で、農業人口の減少と高齢化で、主食の米の先行き不安、日本の米の品質が良く海外需要が伸びているなどといった報道もされ、米をはじめとした農政の現状を抜本的に見直す必要がある。小泉大臣にはさらに踏み込んだ指導力を発揮してほしい。

 

それにしても、与党の明確な方針が見えない。少数与党であるため野党への迎合が目立つ。財源の話をせずに消費税率の引き下げや年金増額だけが話し合われている。参議院選挙を前にして、有権者へのリップサービスが先行するだけで、日本が抱える構造的な問題を解決しようとする姿はまったく見えない。消費税率を食料品に限って行うとなれば、財務会計処理の仕組みを大幅に変えなければない。そうした負の部分を考慮せずに、有権者のメリットだけを強調するのは問題だと思う。ポピュリズムは時として、国を亡ぼすことにつながる。トランプ米大統領の米国第一主義も危険な縁を歩いている。

 

政治家はもっと理想と理念と信念を持って政治に取り組んでほしい、と願うのは私だけではない。5年、10年と言うスパンではなく、100年単位でこれから日本や地球環境がどうなるのか、どうしなければならないのか、それをしっかり把握して発言し、有権者をリードしてもらいたい。