※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.220(2023年9月28日配信)からの転載になります。
科学技術立国・日本を支える大学院では、博士前期課程を終えた後、博士後期課程に進学して博士号取得を目指す修士学生の数が、ピークだった2003年度の約1万2,000人から2019年度は6,000人弱と半減。現在も減少傾向は続いている。
文部科学省が2018年に発表した資料によると、40歳未満の国立大学の教員のうち、「任期付き教員」の割合は、2007年度には38.8%だったのが2017年度には64.2%と、1.7倍ちかくに増えている。研究者の6割以上が、40歳になるまで安定したポストにつけない状況になっている。いわゆる「ポスドク問題」だ。
ポスドク(Postdoctoral Researcher、Postdoctoral Fellow、Postdoc)とは、大学院博士後期課程(ドクターコース)の修了後に就く任期付きの研究職。「ポスドク研究員」「博士研究員」とも呼ばれている。研究者のキャリア形成には避けて通れないポジションだが、期限付き雇用で給与も安いため、生活が不安定という処遇が課題となっている。
世界では、博士課程を経るというのはアドバンテージであり、リーダーになるためには絶対必要条件だ。ところが、日本では博士課程を経た人材が待遇や給与面で冷遇されることが少ない。
博士前期課程を修了した大学院生からは「生涯所得では大学に残って研究者になるよりも、企業に就職したほうが有利」「ポスドクで生活が安定しないのは困る」という声を耳にする。
期限付きの特任助教をされている研究者の方々にうかがうと、「若手研究者が自分自身の研究を継続して行える研究資金を集めるのが大変。大学から割り当てられる研究費は十数万円。研究機材や材料も買えない。研究者として大学に残るのは大変。そんな現実を学生たちも見ているので、大学に残れとは言えない」と語っておられた。なんともモチベーションが上がらない現実がある。
そんな中で最近お目にかかった4名の若手研究者(いずれも35歳以下)は、アグレッシブでモチベーションも高く、ご自身の研究成果を社会実装して、世の中の発展に貢献したいという強い意志を持っておられた。研究資金は潤沢ではないが、中古の機材や手作りした装置などを使って、実のある研究を続けておられた。根っから「ものづくり大好き」な方々だった。
そうした方々とお話をすることで未来に向かっての勇気をいただき、科学技術立国・日本の将来もまんざらでもないと安堵した。