※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.73(2018年1月31日配信)からの転載になります。
2018年の新年早々から、多くの経営者にお目にかかる機会がありましたが、みなさん生気にあふれ、笑顔がこぼれていました。
しかし話していくと、慢性的な人手不足と、「働き方改革」に対応した人材確保と人材育成にどのように取り組めばよいのか、大半の経営者が頭を抱えていました。
なかでも際立っていたのが、人材育成。
どの企業も、ここ数年で大がかりな省人化・省熟化に対応した自動化・ロボット化投資を行い、長時間連続稼働する生産システムを構築してきました。
ところが、「中堅以上のベテラン社員が、こうした先進的な設備を十分に使いこなせていないのではないか」という課題も見えてきました。
これまでのやり方に固執し、または、新しいシステムの操作方法をなかなか習得しにくく、これまでのやり方でも“俺流”にやれば同等の品質の製品を速くつくれると、ある意味自信を持っているのかもしれません。
新人に機械・装置の使い方を指導する際も、「俺のやり方を見習え」というだけで、具体的な教育ができないといいます。
教え方も“俺流”のやり方を押し付けるので、機械・装置メーカーから運転指導にきてもらうと、間違った操作を教えていたことが発覚する場合もあるといいます。
山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」ではありませんが、会社として操作マニュアルを標準化して、それを読めばだれもが操作を学ぶことができる仕組みを構築するのが最善の方法だと思います。
ところが、実際に標準化作業に取り組み、教育マニュアルを整備している企業は数えるほどしかありません。
「良い人が来てくれるまで根気強く求人活動をするしかない」と出会いを待つ経営者もいますが、社内の教育システムがきちんと構築されていないと、そもそも「良い人」が応募してくる可能性も低く、良い出会いなど望むべくもありません。
それでは機会損失になりかねません。
「星取表」とか「スキルドマップ」といったやり方で社員の技能を評価し、多能工化を進める企業も増えていますが、作業者によってやり方が異なっていては評価もできませんし、その人が休んでしまったら、作業が止まることもありえます。
そのためにも標準化に取り組まなければなりません。
ある企業では外部コンサルタントを頼み、社内で他人への仕事の教えかた、仕事を教えてもらうときの依頼のしかた、言葉選びなど、社会人として必要な「基本的な学びの姿勢」の教育を受けているといいます。
それもひとつの方法でしょう。
1月にスイス・ダボスで行われたダボス会議では、第4次産業革命のことに話題が集まったといいます。
その中で、高い失業率や財政赤字に悩まされているフランスの競争力を高めるため、教育制度の改革や労働法の改正などに取り組んできたフランスのマクロン大統領が「第4次産業革命に対応するためにも、教育と職業訓練にしっかりと取り組まなければならない」と発言したことからもわかるように、欧州各国では職業教育が最大の課題となっています。
日本でも安倍首相が「生産性革命」と「人づくり革命」を大きな課題として取り上げ始めました。
企業もタイムリーな設備投資とともに「人材育成」 ― 会社が存在し続ける“カギ”である“人財”を育みながら、技能教育の重要性を認識して、会社としての作業標準化、機械操作マニュアル、教育マニュアルの策定に力を入れる必要が生じています。