沖縄と板金加工【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.108(2019年6月28日配信)からの転載になります。

 

この仕事に携わるようになって数十年。

国内外の取材社数は、複数回お伺いした会社を含め2,500社ほどになり、累計では3,000社を超えています。

 

その中で、自身が取材に出向いたことがなかったのは沖縄県だけでしたが、この6月に念願叶い、沖縄の板金事業者2社を取材で訪問することができました。

これで47都道府県すべてを訪れることができました。

 

取材した沖縄の2社の板金事業者は、従業員規模では50名以上、年商は7~13億円。

製造する板金製品は配電盤、鋼製建具、建築金物でいずれも建設関連に携わっておられます。

塗装・電装組立にも対応する一貫した製造ラインを備えており、沖縄県でもトップクラスの板金事業会社でした。

 

ご承知のように、沖縄県は最近の調査では人口増加率が47都道府県で一番高い県であり、平均年齢も全国平均の45.8歳よりひとまわり若い41.3歳と、成長性の高い県となっています。

その反面、「基地の町」とも言われ、米軍・自衛隊の施設がいたる所にあって、観光以外の産業が発展しづらい環境でもあります。

 

政府や沖縄県は、20億人の人口が集積する東アジアの中心として、沖縄県の経済発展を目指しています。

40%以上の所得控除や設備投資減税などの税制上の優遇措置を講じた「経済特区」を県内各地につくり、国内外の企業誘致を目指していますが、思うような成果があがっていない状況です。

 

ここ数年は、インバウンド効果もあって沖縄を訪れる観光客がうなぎのぼりで増え、大型リゾートホテルをはじめとする宿泊施設の建設ラッシュとなっています。

また、観光客の消費需要を見込んで大型の商業施設やコンビニチェーンも続々とオープン。

セブンイレブンが14店舗を7月11日に同時オープンするとともに、セントラルキッチンなど食品加工機能を備えた食品工場を建設中でした。

県内いたる所でクレーンが稼働し、工事が進んでいます。

そのため鉄筋工やコンクリート打ちの職人が集まらず日当が高騰、那覇市内では日当が5万円という話も聞きました。

 

大型店舗やコンビニが次々とオープンするため、人件費が高騰しています。

6月27日に大型商業施設、サンエー浦添西海岸パルコシティがグランドオープン、売場面積6万㎡は県内最大クラス。

県内初進出の94店舗を含む250店舗が入居するということで、この施設で働く従業員の数は約3,000人。

パート従業員の時給1,300円でも集まらなかった、と聞きました。

その結果、県内産業の人件費も高騰、訪れた板金工場も人件費の高騰と、社員の離職率が上がったことで、その対応が大変、とも話しておられました。

 

土地価格も高騰し、数年で2倍以上になったということでした。

宮古島などの沖縄諸島では、風光明媚な海外地帯で坪単価100万円に高騰、土地バブルが起きているようです。

こうしたことでマスコミなどでは「沖縄バブル」などとも揶揄されるようになっていました。

 

訪問先の工場では、ファイバーレーザマシンや工程統合複合マシン、最新のベンディングマシンなども設備されていましたが、セットプレス、アイアンワーカー、シャーリングマシンといった設備も活躍しており、発展途上という印象は否めません。

しかし、人手不足、働き方改革、人件費の高騰という課題を抱え、経営者は課題解決に腐心しておられました。

 

IoTを活用、タブレット端末に3次元モデルのビューワを呼び出して確認する仕組みや、原価管理を徹底する目的で生産管理システムを導入して、進捗・実績管理に取り組もうとされていました。

また、「理念経営」を掲げ、「会社は誰のためにあるのか」「何のために働くのか」という「ヒトとしての幸せ」の根源などを幹部と真剣に語り合いながら、社員教育に取り組んでおられました。

2代目経営者の方は、アメリカの大学を卒業、英会話力を備え、米軍関係の仕事を開拓しようと努力されていました。

 

夜に板金事業会社以外の企業経営者にも参加していただき、美味しい沖縄料理を味わいながら3時間ほど会話しましたが、みなさん熱い思いをお持ちで、沖縄の現実も知ることができました。

最近、沖縄にはベトナム人、中国人が増えているということです。

技能実習生という名目で入ってくる人もいるようですが、インバウンド対応もあるようでした。

 

沖縄に会社をかまえ、製造や資材調達を行う会社を中国の広東省東莞に持っている経営者の方は、沖縄のロケーションから米中貿易摩擦の先行きを心配され、その中で「米軍が駐留する沖縄の戦略的な位置づけがますます重要になる」ともおっしゃっていました。

ある経営者は、キャンプ・ハンセンの施設改修で必要な建材の仕事を新たに受注、鋼材加工設備を急遽導入して、意欲的でした。

防衛問題と切り離した事業計画が立てられない沖縄の板金事情も理解できました。

 

沖縄のお客さまと沖縄板金事情のレポートは8月号誌上で紹介します。

お楽しみに!