今、自分たちに何ができるのかを考える

今日(2/23)の日本経済新聞朝刊に世論調査結果が紹介され、景気回復の実感を聞くと「実感していない」が81%にのぼったことが紹介されていた。

 

安倍内閣は景気の好循環を目指すために、アベノミクスによる経済効果が全国で実感されることを目的に、「地方創生」を政策課題の優先事項に掲げている。

しかし、地方の隅々にまでに景気が回復してきた、と感じられるほどの成果が上がっていないことが、この世論調査結果からも明確になった。

 

しかし、そのことが、ことさらに問題なのだろうか。

 

取材で全国を回るが、地方の中核都市でも、駅前の商店街がシャッター通りだったり、高齢化が目立っていることもあって、活気のない街並であったりすることも多い。

しかし、それらがすべて政治だけの問題なのだろうか。

 

地方にも業績好調な企業は数多くあるし、事業意欲の高い経営者も育っている。

そんな企業では社員も30代で若さに溢れており、工場に入るだけで勢いを感じさせてくれる。

必ずしも地方だから、都市部に比べて政治の恩典を受けることができず、景気が悪いというわけではない。

 

逆に首都圏にも事業後継者が育たず、このままでは今後数年以内に、廃業せざるを得ない企業が数多く存在しているのも事実。

地方だからということではなく、そこで事業を行う経営者の姿勢が業績や景況感に大きく反映している場合が多い。

 

現在のようにインターネットが普及してくると、東京からの距離や時間という、物理的なハードルはほとんどなくなっている。

地方は都市部に比べ地価が安かったり、労働人口が豊富だったりと、事業を展開するのに好条件がそろっている場合も多い。

自治体が企業誘致や雇用機会を増やすことを目的に、企業に様々な優遇措置を講じている場合もあって、都市部よりも恵まれた立地環境の場合が多い。

 

そうした地方で成功している企業を見てみると、企業規模が大きく、会社のホームページを工夫して、国内はもとより海外からの受注にも対応している場合が多い。

どちらかといえば「自分の城は自分で守る」という自律意識の高い経営者が経営されている場合が多い。

 

その反対に「景気の実感が湧かない」と回答する企業経営者の意識のどこかに、口を開けていれば仕事が落ちてくるといった、他力本願の思考パターンが残っている場合が多い。

継続取引さえしてさえおけば、黙っていても仕事を回してもらえる、行政が主催するジョブマッチングに参加すれば仕事を斡旋してもらえる――といったネガティブな姿勢が見受けられる場合もある。

 

それだけに、バラマキ的な発想で「地方創生」を考えても実態は変わらない。

それよりも予算のバラマキをすることで、本来なら自然淘汰される企業を延命する弊害が起きる可能性もある。

 

以前にもこのブログに書いたが、結果の平等ではなく、参加することにハードルを設けないことのほうが大切だ。

今の政府や地方の行政機関、企業の中には結果の不公平をことさらに強調する傾向が強い。

政府が自分たちに何をしてくれるのかが問題ではなく、この環境で今、自分たちに何ができるのかを考えるこが需要だと思う。

 

何度も書いてきたフレーズだが、J.F.ケネディーの大統領就任演説での演説。

「国が自分たちに何をしてくれるかを問う前に、自分たちが国ために何ができるのかを考える」ことのほうが大切である、と思います。

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※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.5(2015年2月10日配信)からの転載になります。

 

最近お客さまを歩いて気がついたことのひとつが、魚釣りとの類似性。

釣り糸をたらして、ひたすら手ごたえが来るのを待つ。

仕事が来るのをじっと待つ姿が似ている。

 

釣り糸をたらす人がどんな獲物を釣り上げたか気になるので、周りの釣り人の様子を伺う。

自分のところに引きがこないのに、別のポイントでは他の釣り人がドンドン魚を釣り上げている。

ポイントが悪いのかもしれないと、獲物がかかっている場所へ移動する。

そうしていつの間にか、そのポイントに周りの釣り人が集まって、競うように釣り糸をたらすことになる。

 

そうなると引きが悪くなって、これまでのようには釣れない。

ところがある釣り人だけは変わることなく獲物をゲットしている。

自分には引きがないのに、なぜその釣り人だけが釣れるのか。

不思議に思って聞く。「どんな仕掛けで、餌は何を使われているのですか」。

 

釣り人だって早々には教えてくれない。

しかし見ていれば、次第に様子が分かってきて、仕掛けを変えたりするうちに釣果も生まれ、やっと周りの釣り人と対等に話ができるようになる。

 

喩えは悪いが、板金業界でも限られた仕事量の中で全体の仕事が薄ければ、「あの業界が好調なようだ」「あの会社には仕事がありそうだ」などと、忙しい同業の取引先に営業したり、関連業界で仕事を探そうとしたりと、ある意味では釣りの世界と同じような仕事の奪い合いをしている。

 

ところが最近は、そんなポイント周辺に、魚群探知機を装備した高速船で乗り付け、巻網でごっそりと獲物をさらっていく海外からの不心得者が現れた。

その結果、よく釣れていた人も、そうでなかった人も、一様に釣果が得られにくくなってしまうことがある。

 

これと類似した出来事が業界でも起きています。

発注元がコストの安いところで製造する、適地適産という考え方が一般的となって、これまで発注のあった仕事が海外に流失するということが起きています。

 

そこで、釣り人の気持ちになってこれからの釣果を展望すると、魚影が濃い釣りのポイントはどこか、しっかりと捕まえることが大切です。

そのためには天候から気温、風力、風向を事前に調べ、それにあわせた仕掛け、餌の準備が必要です。

時には撒き餌をまいて獲物を呼び寄せたりすることも必要になってきます。

ただ待つのではなく、釣果を達成するための準備が必要です。

 

板金業界でも同様に、魚影――業況が良い業種・業界を探すこと、そしてその業界ではどのポイントでヒット率が高いのかを調べることが大切です。

さらに天候、気温、風力、風向など取り巻く環境をしっかり把握するインテリジェンスが重要です。

これらは日々の新聞やインターネットなどを分析すれば分かることで、公になっている情報の中に必要なネタはあります。

しっかりと情報を集め、分析すること――インテリジェンスから始めなければいけません。

 

周りで釣果が生まれないから船で沖合いに出るのもひとつですが、沖に出たからといってよく釣れる訳でもありません。

自分を釣り人の立場に置き換えて考えると、また違った観点で仕事を探すことができると思います。

あっちの方で釣れているから、そっちへ行くということでは、堂々巡りとなってしまいます。

 

仕事を釣り上げる太公望にもインテリジェンスが必要になっています。

北海道の現実

札幌の雪祭りが2月5日から始まりました。

今年は雪も多く、雪像製作に雪不足の影響はなかったようです。

 

仕事で2月3日、4日と札幌、旭川へ出張しました。

雪祭り開催前ということで、ホテルの宿泊料金もオフシーズン価格でリーズナブルでした。

しかし、開催前夜の4日からシーズン価格となり、一気に3倍の価格になるようです。

 

チェックアウトの際、フロントで一緒になった台湾からのツアー客に話を聞くと、彼らも宿泊費を含む旅行代金が上がる前に、観光に来たと話していました。

そして驚くことに、雪祭り会場では雪像を作る作業を見学したとのこと。

出来上がった雪像を見るよりも、その過程をリアルに見た方が面白い――と話していたのが印象的でした。

聞くと、こうしたツアー企画が台湾では人気が出ているということです。

 

目的地に向かうため乗車したタクシーの運転手に話を聞くと、今年の札幌市の除雪予算は当初160億円だったそうですが、大雪が続き、シーズン半ばで予算が尽き、急遽60億円の追加予算措置を行って、除雪作業に当たっているとのことです。

当初計画した1日あたり1億円の予算では収まらない、半端ではないお金です。

たかが雪、されど雪です。

 

しかし、タクシー運転手によれば、除雪の仕事が冬場の土建業者にとってはなけなしの仕事。

それが地域経済の活性化にも繋がっているということですから、雪様様ということになるようです。

 

たしかに、雪祭りにも昨年は海外を含め230万人が来場しており、1人当たり1万円を消費したとしても230億円。

交通費や宿泊費を考えると、期間中、北海道内には1,000億円以上のお金が落ちる計算となります。

日本のGDPの4%が北海道といわれているので、北海道の総生産額は21兆円。

それを分母に考えると大変な経済効果です。

 

道央道を走ると2時間で旭川に着きます。

途中の景色は雪に覆われた山ばかり。

沿線に見かける建物の数は少なく、工場などの大型の建物はほとんどありません。

それだけに観光立国として経済活動を支えなければ、北海道経済が立ち行かないという実態が見えてきます。

 

旭川では、旭山動物園にほど近い旭川工業団地内にある板金工場を訪ねました。

仕事は道内から受注するものの、納品先の大半が道外。

社長は次男の子息を関東に住まわせて、営業開拓を担当させると話しておられましたが、道内の得意先だけに頼っていては、事業の拡大は望めないということのようです。

 

その一方で意外に知られていないのが、旭山動物園、札幌円山動物園などの園内の施設に板金需要があるということです。

来園者が動物を飼育されている檻の外から見るための柵の手摺、階段など、板金製品はいろんなところに使われており、こうした需要を専門で受注する業者が札幌近郊にありました。

 

また、訪問した旭川のお客さまには2人のご子息がおられますが、いずれも「旭川鉄工青年部」に所属され、全国的に有名になった「鉄工パフォーマンス」のメンバーでした。

 

2008年、旭川鉄工青年会が鉄工業界に携わる者として「鉄」をテーマにアピールすることを計画。

鉄を工具グラインダーで仕上げる時に飛散する鉄粉を火花に見立て、音楽に合わせてグラインダーで鉄を研削し、火花を飛散させるパフォーマンスをアピールするようになりました。

これが様々なイベントで公開され、評判となっています。

そんなメンバーの一人となって、地元の産業活性化に努力されていることを教えていただきました。

 

全国を歩くと、現実の中で活動する人々の息吹が分かります。

現場、現実、現物を改めて認識しました。