以前の日常に戻ることが“新常態”ではない【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.154(2021年3月30日配信)からの転載になります。

 

1都3県に出されていた緊急事態宣言が解除されたこともあって、桜が満開となった首都圏では人の動きがコロナ以前に戻りつつあるように感じます。

 

乗り合わせた新幹線も、1週間前と比較すると乗客数が増え、駅のコンコースでもキャリーバッグを持った若い人や子連れのファミリー旅行者を数多く見かけるようになりました。羽田発の福岡便も、減便や機種変更の影響か、往路・復路とも満席となっていました。

 

年度替わりの時期も重なって、小規模ですが、レストランや居酒屋で歓送迎会を行っているグループを見る機会が増えました。個室ながら、10人ちかい大人数での宴会では、会話がはずんでいました。

 

こうした様子を見ると、すっかり以前の日常が戻ってきたように感じますが、新規感染者数は増加傾向となっており、第4波への懸念が増しています。

 

ご本人たちは自己責任で参加されているのだから罹患してもやむなし、と言えばそれまでですが、家族やほかの社員に感染させるリスクが高まっています。できれば今しばらくは自粛をお願いしたいと感じています。

 

感染拡大から1年以上が経過して、“withコロナ”がすっかり日常になった気がします。ただ、“withコロナ”という“新常態”は、感染予防に気をつけてコロナ前と同じ日常に戻ることではないと思います。

 

今回、取材でうかがった横浜の工場では、本社工場と地方の主力工場との往来を1年以上行っておらず、もっぱらテレビ会議を活用してコミュニケーションをとり、前にも増して短時間に問題解決ができるようになったと話されていました。本社から社長・専務が工場へ出向かなくなったこともあって、「工場長をはじめとした工場幹部のマネジメント能力が大きく向上してきた」と、社長が話されていたのが印象的でした。

 

社長が本社から工場へ出向けば、現地の社員は社長の顔色をうかがいながらの仕事になってしまい、言われたことしかできない「指示待ち幹部」になるおそれがあります。社長が来訪できない緊急事態だからこそ、自分たちがしっかり工場管理をしてミス・ロスのない工場運営をしようと努力するようになった、とうかがいました。

 

取材にうかがった際は、本社工場で社長や専務も立ち会って、工場長以下の工場幹部の方々にオンラインでインタビューをしました。工場長をはじめ、みなさんの回答は的確で、これからの工場運営やものづくりプロセス改革に積極的な発言をされていました。受け答えの様子を聞かれていた社長は、オンライン取材を終えた瞬間に「みんなの答えには驚いた。めきめき成長している」と喜んでおられました。

 

“新常態”は、こうしたこれまでとは異なった環境の中で「たくましくなる」ことを言うのではないかとあらためて思いました。