梵鐘に思いを馳せる【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.158(2021年5月27日配信)からの転載になります。

 

先日、NHKラジオの早朝の番組に、京都・正覚寺の住職でジャーナリストでもある鵜飼秀徳氏が出演し、「2040年には3分の1のお寺が消滅すると言われています」と話していました。

 

全国の寺院数は、一時期は約7万7000あるといわれていましたが、最近は住職がいないお寺も増えています。ここ数年は、人口減少と若者の宗教への関心の低下、檀家の減少に加え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、寺院の経営はきびしさを増しているようです。

 

寺院の総収入は2020年までの5年間でほぼ半減したと伝えられています。現在はコロナ禍で人々は外出自粛を強いられ、寺院へのお布施なども減って、事態はいっそう深刻になっているようです。

 

そうした影響もあるのかもしれませんが、寺院にはつきものの梵鐘の新規製造が最盛期の1/10ちかくに落ち込んでいるようです。先日、200年以上にわたって鋳造により梵鐘を製造している、ある企業を訪ねました。この企業は、戦後から昭和40年頃までは年間200口(こう)の梵鐘を製造していたそうですが、現在は20~30口にまで減っているということです。梵鐘づくりを手がけている鋳造業者も最盛期から大きく減少しているようです。

 

大晦日に聞く百八つの除夜の鐘、平家物語の冒頭に出てくる「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」 ― 常に日本人の身近にあり、日本人特有の「侘び・寂び」の感性にも通じる梵鐘、仏教が伝来した飛鳥時代から鋳物によってつくられてきた梵鐘も、時代の変化の影響を受け、つくり手企業の存続が危ぶまれています。

 

この危機を乗り越えるために、この企業は地元の酒造メーカーとコラボし、地域の産業技術研究所の協力を得て、ウイスキーの蒸留器(ポットスチル)を鋳造で製造するプロジェクトにチャレンジしました。ポットスチルはもともと銅板金でつくられていましたが、胴と錫の合金を使い、鋳造で製造することを思い立ったようです。

 

2年前には、コラボした酒造メーカーに2基の鋳造製ポットスチルが設備され、大麦などの原料の蒸留作業を行っています。ウイスキーは蒸留後、樽に3年間寝かせるので、2021年には鋳造製ポットスチルで蒸留されたウイスキーが蔵出しされるとのことでした。

 

15代目となる梵鐘メーカーの社長は45歳。社長に就任するまでは製造一筋で、梵鐘をはじめとしたさまざまな鋳造製品づくりに取り組んできただけに、培われてきた技術を伝承するためにも、鋳造技術を応用した新製品開発に情熱を燃やしていました。しかし、社員の平均年齢は50代なかばと高く、後継者育成もままならない状況で、前途は平坦とは言えないようです。

 

古くから受け継がれてきた伝統技能をぜひ継承していってほしいと思いました。