※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.246(2024年9月26日配信)からの転載になります。
先日、ある私学の工学部機械工学科の教授と懇談する機会があった。
教授は「工学系の学部は研究や学びの場所ではなく、優良企業に就職するための学校になってしまった」と語り、日本の将来の技術力を心配されていた。
教授の研究室にはM1、M2を含めると24名の修士の学生が在籍しているが、博士課程に進学する者はほとんどおらず、在籍する博士課程の学生の大半は外国人留学生だという。教授が修士の学生だった40年以上前は、研究のために研究室に泊まり込み、休日も惜しんで大学に来て研究していたが、最近は泊まり込みはなく、休日に研究室に出てくる学生もいないという。大学当局からは「休みの日には学生に電話やメールで連絡しないでください」との通達が出ているという。学生はお客さまというわけだ。卒業論文も、実験よりもコンピュータシミュレーション結果でまとめる学生が多いという。
学部の学生にいたっては、3年生から企業への就労体験 ― インターンシップが始まり、春、秋と研修に出かけてしまって研究時間もまともに取れず、「大学に何を学びに来ているのかわからない」という。
文部科学省によると、大学院博士課程に進学する学生は、2003年をピークに減少傾向が続き、2021年度には1.5万人となった。そうした傾向を反映しているのが論文数の国際比較。「科学技術指標2023」によると、1年あたりの論文数は中国が46万4,077本でシェアは24.6%。以下、米国の30万2,466本、インドの7万5,825本、ドイツの7万3,371本と続き、日本は7万775本で昨年と同じ5位で、シェアは3.8%だった。
教授が憂えておられるように、あらためて日本の技術レベルの低下が心配される。