※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.160(2021年6月29日配信)からの転載になります。
再生可能エネルギーの普及拡大を目的として、2009年に太陽光発電の「余剰電力買取制度」(FIT)がスタートしました。その後、東日本大震災と原発事故が発生し、再生可能エネルギーのさらなる導入拡大を目指して、2012年から「固定価格買取制度」(改正FIT)が施行されました。
この制度によって、住宅用は10年、産業用は20年の間、電力会社が一定価格で買い取ることになり、一時は「太陽光バブル」と呼ばれるほど市場は活性化しました。
ただ、FITはすべての国民が電気料金の一部として「再エネ賦課金」を負担することで成り立っているため、FITが適用される太陽光発電所が増えるほど国民負担が大きくなっていくという負の側面もありました。そして、電力自由化にともなって、無条件に一定価格で売電できるFITを改め、電力市場と連動した価格で売電する「FIP」が新たに導入されることになりました。
2019年以降は、10年間の固定価格買取期間が順次終了する「卒FIT」が進んでいます。2019年度末までに住宅用(10kW未満)を導入した住宅は267万6,000件あり、初年度だけで56万件が対象になりました。その後も毎年約20万件の住宅の固定買取が終了していくと言われています。
こうした住宅では、FIPに基づき売電を継続するか、「蓄電池」を導入して自家消費に切り替えるか、判断を迫られ、多くの住宅が自家消費に切り替えてています。特に近年は自然災害による大規模停電がたびたび起こり、「災害対策」が自家消費への切り替えを加速する要因にもなっています。
その結果、太陽光発電で「創った」電気を「貯めて」「使う」ニーズが顕在化し、昨年から一般住宅向けの「蓄電池」の需要が活発になっています。太陽光で発電した電気を直接、蓄電池に充電することで、直流・交流の変換ロスをおさえ、効率的に自家消費する取り組みです。
すでに大手住宅メーカーをはじめとした複数の企業が、個人住宅用の蓄電池市場に参入し、板金業界には蓄電池の筐体製造の仕事が大量に出てきています。企業ごとに発注ロットは異なりますが、月産数百個から1,000個以上の発注が行われているケースもあるようです。
また、太陽光で発電した電気をEVに充電したり、EVのバッテリーに蓄えられた電気を自宅で活用したりすることで、電気料金の節約やピークシフト、災害対策に役立てようという考えも生まれ、「V2H」(車から家へ)のシステムも注目されてきています。
2050年のカーボンニュートラルに向けたエネルギー政策がどう進んでいくのか、それにともない板金需要がどのように変化していくのか、市場の見極めが大切になっています。