※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.20(2016年4月2日配信)からの転載になります。
3月5日に表彰式が行われた職業訓練法人アマダスクール主催の第28回優秀板金製品技能フェアで厚生労働大臣賞、経済産業大臣賞、中央能力開発協会会長賞、「単体品の部」の金賞を受賞されたいくつかの企業に、受賞製品の製作過程の苦労話や、同フェアへの応募動機、目的などについて話を伺うため、お伺いしました。
(5月号で詳報予定)
ほとんどの会社に共通していたのが、直近2~3年間では大きな受注量を抱え、超繁忙期にあったにも、かかわらず、同フェアへの応募を会社方針で決定。
忙しい合間を縫っての応募作品の製作を全社的にバックアップ。
就業内・外にかかわらず、労務費や材料費、電気代、消耗品代などの費用を会社で負担、社員教育の一環として積極的に取り組んでいたことだ。
中には全社員を社員食堂に集め、応募概要を説明した後に参加者を募り、公募対象分野別にチームを編成。
チームごとに若手社員からリーダーを決め、テーマ決定から構想図・製品図・展開図の作成に始まり、抜き~曲げ~溶接の全工程をチームメンバーが手分けして取り組んだ企業もあった。
チームのメンバーは平均6~7名で「単体品の部」「組立品の部」「高度溶接品の部」「造形品の部」という募集部門ごとにチームを編成し、応募した企業もあった。
部門ごとにエントリーするため、参加する社員の数だけで30名超えになり、全社員の半数以上が参加している企業もあった。
一大イベント、という趣もある。
応募した社員の方々に話を聞くと、「CADで絵が描けたらカタチに出来ないものはない」という考えが多く、テーマ設定でも「うねり」「ひねり」などの複雑な形状が入っている。
形状的に見ると、どこから加工すればいいのかと戸惑うような製品を曲げ、溶接している。
製品を見ても、品質の高いを加工を行い、モジュール単位で組立している。
挑戦した社員の多くは年齢20代、30代と若い。
就業内での作業や、テストする材料費を考えると採算に合わないと感じることもあるだろう。
まして、材料費の高いステンレスやアルミを使うと材料費だけでも、ざっくり百万円単位の費用を会社が負担している場合もある。
経営者も自社の作品が果たして「成るか、成らないか」は、はなはだ不安ではあるが、社員のモチベーションアップ、垣根を超えたフレンドリーシップ、横断的な技術力アップなどを考慮すると、金額の多寡だけではない、という気持ちにもさせられる。
また、表彰式の会場で他社の応募製品を見ることで「この製品はどこから曲げたらこんな曲げ加工精度や通り精度が出せるのか」「溶接はどうやっているのか」「仕上げはどんな工程でやっているのか」などなど、日頃から自分たちが携わっている工程や製品と見比べてそのちがいを認識し、「もっと勉強しなければいけない」などと課題を見つけることもできる。
参加するだけではなく、出来上がって展示されている応募製品を見ているだけでも、社員の動機づけに役立っている。
「最近はITを活用したモノづくりが盛んに行われることから、図面を見る力―読解力が低下している。
「何でそんなことを覚えないといけないのか」と公然と話す社員も出てきている。
「デジタル化も必要だが、図面を読む、描く技術は最低限知っておくべきです」と語る経営者も見受けられている。
各社とも、受賞を機に「さらに精進して、もっと上位の賞を狙いたい、大臣賞を狙う」と宣言する経営者や作業者もおられた。
少なくとも4社のお客さまを見る限りでは、アナログとデジタルを使い分けるとともに、アナログ技術 ― 中でもベーシックな技術に関しては、社員研修、たとえばモノづくり現場体験などを通して、職場をローテーションする多能工育成を目指している企業もあり、心強く思った。
現場力を充実させることに燃えておられる社長が、まだまだたくさんおられることに安心するとともに、将来へ明るい希望も見ることができた。
まんざらでもない日本の製造業 ― 未来をもらった。