「台湾独立」を考える台湾の若き事業継承者たち【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.81(2018年5月31日配信)からの転載になります。

 

 

先週末、日本の板金工場を視察するために台湾から来日した高雄・台南地区の板金工場の事業継承者の方々と話をする機会がありました。

大半が20代で若々しく、最年少の事業継承者は25歳という方もいました。

入社して2~3年という職歴ですが、参加者の目は輝き、考え方もアグレッシブで、意欲的でした。

なかにはアメリカの大学で経営学を学んできた参加者もいて、これからの板金工場の経営を真剣に考えておられ、いろいろな情報を披瀝しながら積極的に会話していました。

 

そのメンバーのおひとりと会話した際に、驚きがありました。

私が「最近、台湾と外交関係を持つ国が減っている。報道では台湾と外交関係を締結している国は18カ国まで減少したと言われている。世界には200カ国以上の国がある中で、台湾を承認する国は10%を割り込んでいる。若い人は世界から孤立する台湾の将来をどう考えていますか」と尋ねました。

 

すると思わぬ発言がありました。

「台湾には現在2,300万の台湾人が生活している。その多くは台湾で生まれ育った人々です。『中華民国』と名乗る台湾政府に対して、『二つの中国はない。中国は一つ』と主張する中国が、台湾を承認する国に圧力をかけて、国交を断絶させている。台湾が『中華民国』と名乗る限り、この問題は続く。それならば『台湾』として独立宣言すれば、『二つの中国』はなくなる。そうなれば、台湾は独立した国として、外国との交流も可能になる。多くの台湾人はこのような考え方を持っている。したがって、台湾の将来には明るい展望がある。だからこそ我々次世代の経営者も、自分の会社を世界で通用する企業にしなければならない」と力強く話してくれました。

 

少しアルコールも入っていましたが、力強さを感じさせる話で、私も20代の若い経営者が将来に向けて希望を持ち、行動しようとする姿に驚くとともに、その若さに憧憬の念を抱きました。

 

これまでも台湾にはたびたび訪問し、すでに50社以上の板金工場を取材してきました。

起業した経営者の傍らにはいつも後継者が控え、日本からの取材の一部始終に触れ、勉強している姿を見てきました。

また、若くして起業した人も情報に敏く、ネットワークを駆使して自社の盛り立て方を模索している姿を見てきました。

どの経営者も意気軒昂で、元気をもらってきました。

同じように今回お目にかかった方々からも、元気をもらうことができました。

 

これまで、国民政府とともに第2次世界大戦後に台湾へ移住した「外省人」と、それ以前から台湾に住んでいる「内省人」では、同じ中国を話す国民でも、中国との関係に関しては考え方が異なっていると思っていました。

しかし、台湾で生まれた若い経営者のマインドは外省人・内省人というこだわりを捨て、「台湾人」というアイデンティティが確立しているように思えました。

こうしたアイデンティティを備えた若い経営者が誕生することで、これからの台湾企業は、ますます目の離せない企業に変貌していくだろう、と確信しました。

 

人手不足が自動化を推進し、人材育成へのマインドを変える【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.80(2018年5月2日配信)からの転載になります。

 

今年に入ってすでに30社あまりのお客さまを訪れましたが、おおむねお客さまの顔色は良く、先行きの景気に対しても強気な見方をされる方が、半数ちかくおられました。

中には「この景気は5年続く」と断言される経営者も現れ、足もとの経営環境に不安はないようです。

 

しかし、どの経営者も異口同音に語られるのが「人手不足」。

さらに働き方改革が進む中で、労働環境の変化に対応するのが大変、と話しておられます。

 

「この先は自動化しかない」と述懐されたお客さまは、自社の工場自動化に取り組むとともに、自動化に関連した業界の仕事を積極的に開拓する努力をされていました。

 

また、ベトナムに工場進出されているお客さまは、現地でベトナム人労働者を直接雇用、日本人社員同様の雇用条件で正規社員として採用して日本で働いてもらっていました。

これはかなり好条件であると思われます。

「実習生の場合は3年という期限がありますが、正規社員として雇用し、原則10年の勤務実態があれば日本に永住することも可能になります。在留歴9年のベトナム人社員は、優秀で、すでに当社の管理職として活躍しています。これからはダイバーシティ(多様な人材を積極的に採用する考え方)の時代を迎えるので、社員も国籍・性差・年齢を問わず、優秀な人材を採用すべきです」と業界に先駆けて決断され、異国の人材を積極的に登用する経営者も現れています。

ここまで踏み込んだ決断をされるお客さまはレアケースですが、今後は同様の決断をされる企業が増えると思います。

 

また、大半のお客さまに共通しているのが、「強い人材」の育成に取り組み、教育投資に積極的になっておられることでした。

そのために社外の人材育成セミナーやポリテクセンターなどの機関を利用して、社員のスキルアップ、キャリアアップの教育に取り組まれる企業も増えています。

さらには、社員教育のマニュアルを職種ごとに作成、先輩社員が時間内に後輩を指導する機会を定期的に持つ企業も現れています。

しかし、こうした取り組みも仕事が多忙を極めてくると、納期優先で時間が取れずに構想倒れになることもあるようなので社内教育には限界もありそうです。

 

ある企業では「素人発想」「玄人実行」というスローガンを掲げ、OJTによる社員教育に取り組まれていました。

この企業では、相談役に退任した創業社長が、ステンレス・アルミ・チタンなどの非鉄の精密溶接技術に早くから注目し、技術・技能の研鑽・伝承に力を注いでこられました。

定期的に社員を指導するとともに、課題を与えて作業に習熟させることを心がけて、広くPRされてきました。

毎年行われる溶接技能コンクールにも積極的に参加し、「ほかの会社の社員の技術レベルと比較して、自分のスキルがどのレベルなのか見極めることが大切」と、結果よりも参加することで己を知ることに力を入れておられました。

 

こういった例を鑑みると、政府が方針を提示する前――まさに「先見の明」によって自身の信じる方向にシフトされた経営者の決断に敬服します。

人手不足、働き方改革が問われる中で、企業の取り組みをこれからも注視したいと思います。