朝の連ドラ「あさが来た」に教えられた変化対応力

年明けから世界経済が騒がしい。

 

株式市場では日経平均が大発会後、5日連続で下げるという戦後初めての事態となった。

その後も原油価格が1バレル30ドルを割り込んだこと、中国経済の減速が想定以上に進んでいること、さらにはイランとサウジアラビアが国交を断絶するなど、中東情勢が緊迫していることの影響を受け、株価は世界的に低迷している。

丙の申年は革命の年 ― などと前回のブログで紹介したことが現実味を帯びてきたように思えます。

 

そんな中で昨年秋から放映が始まったNHKの朝の連続ドラマ「あさが来た」の視聴率が平均20%台を上げています。

朝の連ドラ初のチョンマゲドラマとして、江戸から明治、大正と「明治の女性実業家」として活躍した広岡浅子の生涯を描く内容となっています。

主題歌を歌うAKB48の「365日の紙飛行機」がヒットチャートの上位に入るなど、ドラマ以外でも話題を集めています。

私も朝の時間は見られませんが、BSの深夜の再放送や日曜日午前11時からの1週間分のダイジェスト版を見るなど、楽しみに見ています。

 

「びっくりぽんやぁ」という主人公・あさの軽妙な台詞が心地よく、人間ドラマとしても面白い。

215年続いた鎖国によって、世界史上でも例がない平和な社会をつくりあげ、経済も発展した江戸時代が終焉して、明治政府が誕生。

文明開化と富国強兵政策で短期間の間に列強国と肩を並べるまでの発展を遂げていった、明治・大正時代を根底で支えてきた商いの変化――経済の発展を市井の人たち、しかも女性の目線で見ることができるのも面白い。

 

ところで、広岡浅子のベンネームは「九転十起生」(きゅうてんじっきせい)。

この言葉から伺えるように、「あさ」は炭鉱事業から銀行、生命保険事業、女性の大学設立と様々な事業に取り組んできた。

ドラマでも紹介されていたが、石炭採掘の現場にも出向き、時には坑道に鉱夫たちと一緒に入り、労働を共にした。

労働者と同じように苦楽を共有、机上のヒトだけではなかった女性経営者であったようです。

 

このドラマの視聴率が高いのは、明治という時代に女性として生まれながら、何事にも「魁」として、新しい事に興味を持ち、きっちりと採算を計算、事業としてなるか否かを精査して進んだこと。

また、心に響く台詞が時々聞かれるのにも勇気づけられる。

 

たとえば「世の中が変われば、時代に合った新しい商いが出てきます」という台詞。

まさしく今の企業人に求められている変化対応力を言い当てている。

当たり前といえば当たり前ですが「あさ」が話すと心に残ります。

 

ドラマを視ていると、騒がしいスタートとなった丙の申年も、新しい息吹が感じられると思えます。

革命が起きる波乱の年という見方がある一方で、果実が実り熟する時期――という見方もあるようです。

その意味で世の中の変化、体制を見極め、そこから生まれてくる新しいビジネスの「潮目」を読み取ることが大切だということを教えてもくれます。

 

もともと、広岡浅子は京都の小石川三井家の出身で、豪商三井家のDNAが継承されていたともいえます。

三井家は代々、「商売上手は、一に才覚、二に算用、3には始末」という家訓を守ってきたといわれていますが、「あさ」の言動にもこの教訓が影響していたと思います。

 

朝ドラからもいろいろなことを教えてもらえます。

変化対応力を備えてピンチをチャンスに変えていく「才覚」が求められていると思います。

「革命」の丙申の年こそ“United Power”で日本人を売り込む【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.17(2016年1月9日配信)からの転載になります。

 

七草粥も終わり、いまさらではありますが、明けましておめでとうございます。

今年も製造業のトレンドを中心に、取材を通じて感じた率直な想いを書いていきたいと思います。

 

ところで、今年の干支は1956年に次ぐ戦後2度目の丙申(ひのえさる)。

専門家によると、丙申は「革命」の年。

さまざまな場面で時代がうねり、争いごともある年ということのようです。

中国古代の自然解釈である陰陽五行説によると、丙申は激しい太陽の熱さとともに、地上全体の火山活動が活発になる可能性がある年と言われます。

 

60年前の1956年の丙申では、経済白書が「日本経済の成長と近代化」の結びで「もはや戦後ではない」と記述。この言葉は流行語になりました。

1人あたりの実質国民総生産(GDP)が、1955年に戦前の水準を超えたからで、1956年は高度経済成長の始まりとなった神武景気の幕開けの年となりました。

 

そういう意味で、2016年はどのような時代の変化点になるのか、期待と不安で新年を迎えた方も多かったと思います。

年明け後の株式市場では中国経済の減速、アメリカの利上げによる新興国経済への不安の高まり、原油価格の下落と中東情勢の緊張の高まり、さらには国際的なテロの頻発など、不安材料が目白押しとなったことが大きく影響しています。

 

こうした中で、中東からの難民の数が昨年1年間で100万人を突破したドイツ、移民国家とも言われ多文化共生を標榜してきたフランスでも、これ以上の移民の受け入れを拒否する保守政党が台頭、これを支持する人々も増えています。

同様に多民族国家であるアメリカでも、大統領選挙の年ということもあり、共和党候補の1人で極端な差別発言をするドナルド・トランプ上院議員への支持率が地域によって差が大きいなど、先進国全体で内向き志向が広がり、保守化傾向が高まってきています。

 

しかも、世界的に所得格差が進み、富裕層と貧困層という2極化が拡大、日本でもパートやアルバイトなどを含む非正規労働者の割合が毎年増加。

非正規労働者の割合は1984年の15.3%から2014年には37.4%と大きく上昇しており、いまや労働者の3人に1人以上が非正規労働者ということです。

 

この非正規雇用労働者のうち、年収が200万円以下という労働者が全体の1/3を占め、日本でも所得格差が年々広がっています。

格差社会が広がり、内向き志向が高まることで不均衡な社会が拡大し、社会不安によるリスクが高まります。

丙申が「革命」の年になるというならば、こうした事象が引火点となって、社会の破綻を招くことになるのかもしれません。

 

ところで、年明け後1週間が経過する中で、産業界では経団連をはじめとする各種団体の新年賀詞交換会が開催され、私もそのいくつかに出席しました。

そこで受けた印象では、昨年に比べ、業種によっての景況感に温度差が出ていることが気にかかりました。

 

とりわけ厳しい空気だったのは建設機械業界の懇親会。

中国経済の減速で、日系建機メーカーはいずれも生産がピークの1/5程度まで収縮、回復の兆しも見えず、中国工場のリストラに踏み切ったメーカーも現れています。

さらに中国経済の減速はアジア新興国にも影響を与えており、インドネシア、タイ、インドといった日系建機メーカーの工場がある地域でも生産が減っているということです。

とりわけ石炭などの資源価格が下落しているだけに、鉱山機械の落ち込みが目立っているようです。

 

反面、顔色もよく元気な挨拶に喜色が際立っていたのが鉄道車両業界です。

昨年は北陸新幹線や仙台地下鉄東西線の開業などがあったことに加え、今年は新函館までの北海道新幹線の開業、さらには今年秋口までには答申される予定の首都圏の交通整備計画など、鉄道インフラへの関心が高まっています。

さらにはタイ、インドで相次ぐ高速鉄道計画に対応した日本の新幹線の採用決定。

安倍政権が取り組む「インフラ輸出」の尖兵として、鉄道インフラ事業の海外進出が堅調、日系車両メーカーはこれまで以上に海外需要の開拓に真剣になっています。

 

懇親会では国土交通省の若い官僚が「日本の鉄道は正確な運行、安全・安心な乗り物――まさに鉄道は勤勉な日本人を象徴しています。鉄道インフラを輸出するということは、日本人そのものを世界にアピールすることになります」と熱弁を振るう場面も見られ、参加者一同に元気が溢れていた。

 

業種による温度差はあるものの、“Made In Japan”を売り込むこと=日本人をPRすること、という考えには共感を覚えました。

建機業界でも、これからは建機単体のビジネスからIoT技術を活用、建設工事全体を統合管理して建機の効率的な運用までを提案するソリューションビジネスが注目されてきます。

その中では、日本製建機の特徴をいかんなく発揮できる場面が必ずあるはずで、そこでも日本人をPRするにつながっていくと想定されます。

 

そういう意味でこれからは官民一体となったオール・ジャパンでの取り組みが肝要になっていくと思います。

つまり、日本人の“United Power”を発揮した取り組みが重要になります。

内向き志向を止め、オール・ジャパンの“United Power”で頑張っていくことが重要だと思いました。