安倍政権5回目の成長戦略「未来投資戦略2017」を決定【メルマガ連携】


※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.57(2017年7月27日配信)からの転載になります。

 

2017年6月9日に「未来投資戦略2017」(成長戦略)が閣議決定された。

安倍政権になって5回目の成長戦略となる。日本経済再生本部のもとに設置された未来投資会議で議論され、名称も「日本再興戦略」から「未来投資戦略」へと変更された。

ただし、働き方改革および人材活用を通じた「生産性の向上」や、イノベーションの促進などにより2020年までに名目GDP600兆円の実現を目指す方向は継続する。

 

今回の「未来投資戦略」は、これまでの「日本再興戦略」の成果と課題を整理することから始まっている。

 

「日本再興戦略」の成果としては、①60年ぶりの電力・ガス小売り市場の全面自由化、②60年ぶりの農協改革、③再生医療制度の導入、④法人実効税率の引き下げ ― などを実現したとしている。

一方、課題としては、設備投資や消費など、民間の活動に力強さが欠けている点を指摘している。

背景には、長期にわたる生産性の伸び悩みと、新たな需要の創出が欠如していることが挙げられている。

 

「未来投資戦略」では、こうした課題を打破し、日本が世界で優位に立つためのカギが、第4次産業革命の先端技術(IoT、ビッグデータ、AI、ロボット)をあらゆる産業や社会生活で導入し、「Society 5.0」を実現すること、としている。

 

現在進行中のデジタル革命(第4次産業革命)は、実現不可能と思われていた社会の実現を可能とする一方、対応が遅れれば、あっという間に最先端企業・国に飲み込まれることになる。

日本がグローバルな競争で優位に立つためにも、製造業の枠を超えて、モノ、ヒト、機械、システムなど、様々なものをつなげる「Connected Industries」の実現に向けた動きを加速する必要があるとしている。

 

未来投資戦略2017は、アベノミクスの成果を強調しつつも、生産性の長期伸び悩みや新規需要創出の欠如を問題視している。そして第4次産業革命の社会実装を通じた「Society 5.0」の実現を目指す切り口から戦略分野を設定し、課題解決に向けた新たな施策も打ち出している。

しかし、その具体的な内容を評価すると、これまで公表された4回の成長戦略で取り上げられたメニューを、新しい文脈に沿って組み替えた部分が多いように思われる。

この背景には、成果が得られるまで時間がかかる分野を引き続きモニタリングしていくという意味合いがあると思われる。

 

その一方、日本銀行は20日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%達成時期を「2018年度ごろ」から「2019年度ごろ」に先送りした。

企業の賃金・価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることが背景にある。

物価目標達成時期を先送りするのは昨年11月の会合以来となる。長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針は維持する。

 

黒田東彦日銀総裁は2013年の総裁就任時に、物価上昇率2%の目標を2年程度で達成すると宣言していた。

達成時期を繰り返し先送りしている日銀への信頼は揺らぎ、現行の金融政策を疑問視する声も強まっており、アベノミクス効果 ― 5回目の成長戦略への反応も冷ややかな気がする。

 

実のある成長戦略が求められている。

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