「一進一退」の景気動向の中で、一極集中が際立つ板金業界の昨今【メルマガ連携】


※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.15(2015年12月9日配信)からの転載になります。

 

経済産業省が11月30日に発表した10月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)の速報値は、前月を1.4%上回る98.8で、2カ月連続で上昇した。

産業用機械や自動車の生産が増えたが、中国の景気減速で輸出が落ち込んでおり、生産の基調判断は「一進一退」で据え置かれた。

 

GDPの6割を占める個人消費は、昨春のベースアップで改善の兆しが出るものと期待されたが、先行きへの不安感が増し、個人消費の伸びは小さい。

また、2割を占める民間設備投資に関して、企業の設備投資意欲は自動車業界や中小製造業を中心に堅調だが、中国経済や欧州経済をはじめ、世界経済の動向が定まらないことから、しばらく様子をみて決めたいという慎重派が多くなっている。

平成26年度補正予算で実施された「省エネ補助金」など、一部の設備投資に対する補助金が、平成28年度予算で復活すると報じられているために、補助金の動向が決まった段階で投資に踏み切るという企業経営者も多い。

 

機械メーカーの営業マンの話を聞いても、2015年度上期は補助金効果で予想以上に売上金額が伸びたが、下期は上期に比べ低調という。

補助金申請で、下期以降の投資計画を前倒しして、計画を先取りしたという事実もある。

前記したように平成28年度予算で新たに補助金枠が策定されるとの情報で、補助金が正式決定したら投資計画を実行するという考えの経営者も多い。

 

そんなわけで営業マンの多くが2015年度下期、場合によっては2016年度上期の売上も厳しい数字になる可能性があるとみているようだ。

たしかに、投資額の半分――営業外収入となるため、税金を払うと実質的には1/3――を補助金で賄うことができれば、企業としても効果が大きいので、予算決定を待って投資するという経営者の考え方も理解できる。

 

それにしても、補助金効果はあるものの、設備投資意欲を持っている中小製造企業が多いというのは心強い。

 

業界を眺めても、半導体製造装置など一部に仕事量の減少が見られるものの、全般的には2015年度は高止まりで推移している。

工作機械業界も、8月以降は前年同月比で2ケタ以上受注が落ち込んでいるが、それでも2015年の受注総額は1兆5,000億円弱と史上2~3番目の数字であり、2016年度の受注に関しても、強気の読みをしている。

そのため工作機械カバーなど、板金業界への発注量は、それほどは下がってはいない。

 

高齢化を迎えてヘルスケア産業――医療機器、健康機器産業、福祉機器など――は相変わらず好調で、業界全体ではこれからも年率4~5%程度の伸びが期待できるという見方が根強い。

それだけに板金業界への発注マインドは底堅い。

 

個別の業界別トレンドを見ると2015年度横ばいか、微減となっているが、その下げ幅は小さいという見方が大勢で、2016年度の板金業界は引き続き好調を持続する雲行きが強い。

 

しかし、トレンドは横ばいでも業界の中では優勝劣敗が顕著になっている。

事業継承者がいないため廃業に追い込まれる企業も増加している。

 

こうした中で最近顕著になっているのが、発注元のサプライヤーへの一極集中購買が目立っていることだ。

従来は、1社購買ではなく、必ず2社以上のサプライヤーとの競争の中で調達する、というのが大手発注元の調達戦略。

しかし、ここへきて目立っているのが発注元の開発・設計と共通のプラットフォームを構築して、試作段階からバーチャル試作に協力し、製造性を検証するとともに設計提案を行って、受注拡大を目指すサプライヤーが増えてきていることだ。

 

結果としてそうしたサプライヤーは、発注元から見ると欠くことのできないパートナーに位置づけられ、2社購買の常識を覆して、そのサプライヤーへすべてを丸投げする傾向も見られるようになっている。

 

さらに、発注側が個別のサプライヤーに発注手配を行って、納入されたパーツやユニットを組み立てる場合は、管理工数や組立工数がかかる。

そこで社内での工数を削減する目的と、横持ちのムダを排除する目的もあって、数社のサプライヤーにモジュール発注することで組立工数を削減する傾向も次第に顕著になっている。

 

その結果、パートナーとなって、モジュール調達に対応できる規模のサプライヤーの売上は、これまで業界の壁と考えられていた年商10億円を突破して、20億円、30億円といった売上レベルを達成する企業も増えている。

 

2016年も業界は目まぐるしく変化する時代となりそうだ。

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