北陸新幹線金沢開業がもたらす変化


最近のテレビには、3月14日の北陸新幹線金沢開業を目前にして、北陸への観光誘致を促す、JR東日本、西日本が提供するスポットCMが数多く流されている。

 

「和」をコンセプトにデザインされ、ブルー、ホワイト、ゴールドに塗り分けられたE7系(東日本)、W7系(西日本)の新幹線車両が走る姿はいかにも北陸をイメージさせ、永平寺に始まる北陸の観光スポットの紹介とをあわせ、視聴者に北陸への旅心を沸き立たせる内容となっている。

 

筆者は開業前の1月22日、JR西日本の白山総合車両基地の見学と合わせて、車両基地から富山駅までの区間を試験走行する、W7系車両にJR西日本車輌部のご好意で試乗する機会を得た。

 

試乗したW7系は、12両編成で運転席のある先頭車、後部車が全長26m、普通車両は25m、12両全体長さが302mにもなる。

試乗会ということで11号車のグリーン車に乗せていただくことができ、隣の12号車にあるグランクラスにも試乗することができた。

11号車と12号車のデッキの壁には、布地の質感をイメージさせるパネルが張られ、日本の四季をモチーフとしたデザインが取り入れられている。

さらに乗降ドアの内側パネルは、加賀では最上のお客をもてなす部屋に用いられ赤壁をイメージして、赤色に塗られており「人と空間の和」をテーマに重厚な空間を創り上げている。

 

また、グランクラスにはフルアクティブ、グリーン車にはセミアクティブの各サスペンションが搭載されているので、乗り心地は快適。

260km/hの高速運転時でもほとんど揺れを感じることがなく、軌道の出来がよいことも相まって乗り心地の良さが目立った。

 

途中、金沢、新高岡の駅にも停車したが、ホームと列車の間にはホームドアが設置されており、ホームからの転落事故防止への対応も万全だった。

開業後は東日本17編成、西日本10編成で運行が行われ、長野駅出発後は富山、金沢にしか停車しない「かがやき」で、東京、金沢間を最短2時間28分で結ぶ。

これまで在来線を乗り継いでも、最短で3時間50分も掛かっていた移動時間が1時間20分の大幅短縮となり、東京圏と北陸との距離感がなくなった。

 

開業に関して、地元金沢では加賀や能登などへの観光客が増え、地元への経済効果は大きいと期待している。

現実に金沢駅前や片町、香林坊といった繁華街には新しく開業したホテルが建ち並んでいる。

また、地元新聞には4月以降に金沢で開催されるコンベンションの数が例年の2倍以上になって、春以降はホテルも満室状態が続く、と報道されている。

 

その影響で、台湾など海外から当地を訪れる旅行者の宿泊先確保ができない状態となってきており、台湾の大手旅行代理店が金沢へのツアー募集を中止したというニュースも報じられている。

また、東京との時間が大阪―東京間とほぼ同等となったことで、北陸へ工場進出する企業も出てきているという。

もともと加賀地方は地盤が強固で、過去にも大きな地震が起きたことがなく、BCP/BCM対策からも生産拠点を北陸へ移転することを検討する企業も出てきているという。

それだけに地元産業界は、仕事量増大に繋がるとして開業を歓迎している。

 

反面、最速で東京との間が2時間8分で結ばれ、これまでの3時間11分から1時間3分短縮される富山では、富山―東京間が完全に日帰り圏となることで大きな変化が起きる気配だ。

YKK株式会社は北陸新幹線の開業に合わせ、2015年3月には本社スタッフの約2割にあたる300人規模の大規模な本社機能の黒部市への移転を計画している。

同社はもともと創業地が富山県という条件もあるが、今後は同様なケースが出てくることも考えられる。

 

大手企業のUターン傾向がある一方で、地元の方々にお聞きすると、富山は金沢ほどには観光資源を持たず、観光地も宇奈月温泉や荘川温泉、黒部、氷見などに限られ、観光客誘致活動も金沢ほどではないようだ。

逆に富山から東京へショッピングや観光目的で出かける人が増え、金銭面では歳入よりも歳出のほうが多くなって、地元への経済効果を疑問視する関係者も多い。

 

北陸新幹線開業によって、北陸にもたらされる変化は物理的にも大きなものがある。

この変化にどのように対応していくのか。これも変化対応のひとつの事例となる。

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