今日よりも明日という「一歩」が大切【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.68(2017年11月30日配信)からの転載になります。

 

 

毎年年末は新年号と2月号の企画を抱え、多忙な取材日程の中、各種行事をこなすため、タイトな日程で動いています。

ただ、今年はお客さまをお訪ねしても、顔色の良い、元気な経営者の方が多く、かえってこちらが元気をいただく機会が増えています。

 

本日伺った、ある企業の経営者から、元気な話をお聞きすることができ、その感動をすぐさま書き留めたいと、帰りの新幹線の中でこれを書いています。

 

今年58歳になる3代目社長は35歳で社長に就任、社長として23年目を迎えるベテラン社長です。

直近は、突発的に発生した発注元のSCMトラブルの影響を受け、師走は製造ラインが2交代で操業する発注元に部材を供給する必要があるため、連日21時頃までの残業と土曜の休出で対応しながらも、三六協定の特別条項の上限 ― 月間80時間以内の残業で何とかやりくりされていました。

 

さらに、発注元が海外の同業メーカーを買収したことから、買収先が製造していた新しい製品の部材供給が求められそうな雲行きで、「2年先の2019年まで仕事量はゆるやかに増加する見通し」と安堵の表情で語っておられました。

「得意先の企業・業種は、その時々の環境の変化で入れ替わりが起きるが、板金需要が減る可能性は少なく、『板金加工の専門家集団』という事業ドメインを明確にできれば仕事はなくならない」と確信を持っておられました。

 

この経営者は、若くして社長に就任した当時から社員教育に力を入れてこられ、「景気や社会環境が変わっても、企業経営にとっての最重要課題で永遠に変わらないものは『人財育成』です」と淡々と話されていました。

 

60名の社員の半数が1級・2級の工場板金技能士で、それに追従するように毎年チャレンジする人が現れます。

 

2年前からは、社員間のコミュニケーションを活発化させる目的で、毎月第3土曜日に社員を4名ずつの小集団に分け、与えられた教材から自分が感銘した文章とそれに対する感想を述べあうサークル活動を実施しています。

1年目の上半期には「何でこんなことをするの」という反対や戸惑いの声も上がりましたが、今では大半の社員が積極的に参加、お互いに自分の考えを述べあうようになったといいます。

同じ事柄に「感じる心」、「伝える言葉」の大切さ、「心の動き」などへの共感を通じて、言葉選びや態度にも変化が出てきているといいます。

 

「目指すのは製品の行く先、社会的な責任までも考えたモノづくり」、「社員一人ひとりのモチベーションが向上しないと技量も向上しません」と、この社長は社員教育の意義を語っていました。

こうした活動に取り組むことで、同社のQ,C,Dに対する発注元の信頼は高く、ベストサプライヤー賞を何度も受賞されています。

 

また、32歳の事業継承者にも恵まれ、35歳で社長に就任した自身のことを振り返りながら「人を核とした体制」での事業継承を考えておられました。

 

得意先・仕事・社員・後継者に恵まれ、盤石の体制 ― 「素晴らしいですね」と投げかけると、「何が起きるのかわからない世の中です。変化に対応するためには自分自身が日々変化しなければならない。これで良いということではなく、常に今日よりも明日という一歩が大切という信念でやっています」と、笑顔で答えてくれました。

 

まだまだ素晴らしい経営者がたくさんおられます。

これからも多くの方に出会いたいと思いました。

「一例一休」を見直す台湾【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.64(2017年11月1日配信)からの転載になります。

 

本誌11月号では台湾の板金業界を特集、台湾版「働き方改革」ともいえる「一例一休」(完全週休2日制)が法制化されてからの台湾製造業界の対応について紹介している。

ところが台湾では、労使ともに不評だった「一例一休」に関する労働基準法(労基法)改正の行政院案がまとまり、年内にも法改正が行われる可能性が出てきた。

 

特に企業の不満が大きかった7日連続勤務の禁止が撤廃され、最大で12日連続勤務が可能になる。

このほか行政院案では、時間外労働時間の上限規制について、「甲案」では、労使の合意があれば月46時間から54時間に引き上げ可能、「乙案」では3カ月で138時間として月54時間を超えても構わない ─ と、2案を挙げている。

休息日(所定休日)の時間外労働手当を4時間単位で計算する規定も撤廃され、実労働時間で計算されるようになる見通しという。

 

この改正に産業界は歓迎ムードだが、労働団体は、労働環境の悪化につながる改悪だとして反発している ― と台湾メディアは伝えている。

 

日本でも「日本再興戦略」改訂2015(2015年6月30日閣議決定)において、引き続き「働き過ぎ防止のための取組強化」が盛り込まれたほか、2014年に施行された「過労死等防止対策推進法」に基づき、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(2015年7月24日閣議決定)が定められるなど、長時間労働対策の強化が課題となっている。

 

すでに長時間労働を是正するため労働基準法36条に基づき、会社は法定労働時間(主な場合、1日8時間、週40時間)を超える時間外労働を命じる場合、労組などと書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることが義務づけられており、中小企業でもこの対応が行われている。

 

業界を回っていると、景気回復の影響で多くの企業で繁忙感が出てきており、1日あたり2~3時間の残業が一般的で、土曜日を出勤にしている企業も目立って増えている。

その結果、社員の残業が月間40時間をはるかに超え、60時間、80時間に迫っている。

 

三六協定を社員代表と締結しているので、今のところ是正を求める指導などは行われていないが、これが常態化すればブラック企業として労働基準監督署からの改善命令も出かねない。

さらに人手不足感も高まっており、企業経営者は頭を痛めている。

 

日台ともに雇用情勢の改善を図る中で長時間労働をどのように打開するかが大きなテーマになっている。

少子高齢化が進み、人生100年時代を迎えたといわれるものの、働き方の問題は解決が難しい。