ASEAN出張でパワーをもらいました【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.26(2016年8月30日配信)からの転載になります。

 

8月には台風が4個も上陸、特に関東・東北・北海道など、これまで日本に上陸した台風とは異なるコースをたどったのが大きな特徴でした。

これまでの台風の多くはフィリピン沖やマリアナ諸島など、はるか東方で発生、その後大東島から沖縄を通って九州、四国に上陸するというのが一般的でした。

それが最近は日本近海の海水温が上昇することで、日本近海で発生、そのまま日本に向かい、関東以東に上陸するコースをたどるケースが増えてきているようです。

 

ところで、8月の旧盆明けから久しぶりにタイへ出張しました。

8年ぶりのタイ出張でバンコク市内も大きく変わっていました。

1年前の8月17日、首都バンコクの繁華街で、観光客ら20人が死亡し、120人以上が負傷した爆弾テロがあり、訪問した翌日に1周年を迎えました。

さらに1カ月前にはタイ南部で爆弾テロが相次いだこともあって、出張に際しては安全に配慮するようにと、何人もの方々から忠告されました。

しかし、バンコク市街は賑わいを見せており、爆弾テロのあった現場にも多くの観光客が訪れていました。

 

ビジネスの話に戻すと、今回の出張では2社のローカルの板金サプライヤーを訪問したほか、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナムのパワーサプライヤーの経営者とも懇談する機会がありました。

2015年12月にASEAN経済共同体(AEC:ASEAN Economic Community)が発足し、ASEAN域内では、物品やサービス、投資分野の自由化が進み、ヒト・モノ・カネの動きが自由化されました。

 

これによってタイに進出した日系企業は、人件費が高騰するタイから人件費の安い他のAEC加盟国に進出、AEC域内で適地生産して装置部品をタイに輸入するSCMを、新たに構築することができるなど、大きな変化が生じました。

その一方でローカルのパワーサプライヤーは、域内に進出した外資の仕事を自由に取りに行くことができるようになり、その結果、サプライヤー間でメガコンペティションが加速しており、商戦が急激に進んでいます。

 

その中で目立つのが、中華系のネットワークがモノづくりの中でも力を増していることです。

バンコクでお会いした域内のパワーサプライヤーの経営者の多くは、2代さかのぼると漢民族の出身者で、華僑、客家(ハッカ)と呼ばれている方々のようです。

国籍は異なっても、話している言葉を何気なく聞いていると、英語だけでなく中国語でも話しているのを耳にします。

 

こうしたサプライヤーの多くが、プレス加工、金型製作、板金加工、機械加工などにワンストップで対応し、アセンブリーにまで対応できる設備能力を備えています。

当然、現地には日本のようなピラミッドの下請け構造がないので、SCM構築は十分でなく、ワンストップで対応しなければ部材調達ができないという背景がありますが、その結果、高いレベルの加工能力を備えています。

そして得意先を見ると、日系や欧州、米国のトップ企業と取引しており、業種も半導体・FPD製造装置、医療機器、食品機械、エネルギー関連、通信機器など幅広い分野にわたっています。

 

自国に市場がないため国外へ仕事を獲りに行くことはビジネスとしては当然のこと。

ワンストップ対応で一気通貫のモノづくりに対応できるリソースを構築するなど、逞しさにあふれていました。

詳細は本誌次号で紹介させていただきますが、アグレッシブでポジティブな発想と行動でビジネスを拡大していました。

そして何よりも、2代目・3代目となる若い経営者の大半が米国や英国の大学を卒業し、中にはMBAの資格を取得するためにビジネススクールへ通っている方も多くいるということで、言語・ビジネスマナー・パワーなどに秀でている人が多くいます。

 

DNAは漢民族でも、発想はドライな欧米流。

徹底した提案営業で得意先を開拓されていました。

こうした方々と話をしていると、国内市場に仕事があり、大手のピラミッド構造の中で口を開けていれば仕事が落ちてきた「待つ工場」の日本は逞しさに欠けている気がしました。

こうした企業の多くが今、日本市場を開拓するために日本事務所の開設準備を計画するようになっています。

 

日本もこれから本格的なメガコンペティションを迎えることになりそうです。