鋼材加工から発想転換で「野菜工場」を立ち上げる【メルマガ連携】

 ※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.185(2022年5月27日配信)からの転載になります。

 

 

日本の食料自給率の低さが問題となっています。

 

ロシアのウクライナ侵攻によって世界最大の小麦輸出国であるロシアとの経済関係が悪化、さらに世界屈指の小麦輸出国であるウクライナからの小麦輸出が大幅に減少、食料不足が懸念されています。「ウッドショック」「半導体ショック」「スティールショック」に続き、「食料危機」が現実のものになろうとしています。

 

農林水産省によれば、2020年の日本の食料自給率は37%(カロリーベースによる試算)と、過去最低を記録した2018年と同水準に再び下がりました。日本で食べられている食料のうち、37%が国内で生産されたもので、残りの63%は海外からの輸入に頼っていることになります。

 

この数値は欧米各国と比較しても大きく下回っています。食料自給率が好転しない理由としては、高齢化による農業生産者の減少、またそれにともなう耕作放棄地の増加といった、農業そのものの衰退が挙げられています。

 

そんな状況を少しでも改善したいと、静岡県の鋼材加工業者が富士山の伏流水が集まって流れる柿田川の水を活用した「野菜工場」を開設。日量1万1,000株の「グリーンレタス」を静岡県内のスーパーに卸し、地元の消費者から支持されています。

 

この「野菜工場」は、使用する電力の1/3を工場屋根に設置した太陽光発電システムで発電した電気を使用しており、カーボンニュートラルにも貢献しています。工場は耕作放棄地に建設しており、「農業工場」として建設認可もスムーズに取得できたようです。工場では女性社員を中心に40名ちかい作業者が働いており、地元の雇用機会も創出しました。

 

後継者難で事業承継に困っていた「野菜工場」をM&Aで取得。生産規模を拡大するために新工場建設を計画、地元の市当局や県、耕作放棄地の地権者に相談して土地を借り上げることで、地権者には家賃収入が入り、荒れ放題となっていた耕作放棄地が整備され、「野菜工場」が建設され、環境整備にもなりました。地域の雇用機会が増え、自治体には税収入も期待できます。

 

そしてなによりも日本3大清流のひとつである柿田川の水を使って水耕栽培された「グリーンレタス」は、農薬をいっさい使用しておらず、無農薬で「食の安心・安全」が担保されており、消費者にも喜ばれています。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三方よしに加えて「作り手よし」「地球よし」「未来よし」の六方よしとなっています。

 

この企業は今後収穫できる野菜の品種を増やすとともに、収穫ロボットなどを導入して自動化を進め、「野菜工場」の拡張も計画しています。さらにこのビジネスをモデル化、全国の耕作放棄地を活用したビジネス展開も考えています。

 

鋼材加工から「野菜工場」と発想の転換がおもしろいと思いました。