経営者のマインドが企業成長の根本【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.29(2016年11月8日配信)からの転載になります。

 

10月25日から29日までドイツ・ハノーバー見本市会場で開催された「EuroBLECH

2016」に出かけてきました。

詳細はSheetmetal 12月号で紹介しますので、そちらをご参照ください。

 

出展社の1/2、来場者の1/3はドイツ国内の企業や来場者でしたが、世界41カ国から1,503社もの企業が出展、会期中には世界100カ国から6万人以上の来場者があり、板金業界の世界的な広がりを感じることができました。

 

今回もEuroBLECH視察と併せ、ハノーバー市近郊の板金工場を訪問してきました。

その板金工場の経営者は、23歳で創業以来20年、今年43歳とバリバリの積極社長でした。

従業員数は職業訓練学校の実習生4名を含め20名でしたが、ドイツ国内の200社以上の企業と取引を行っており、業績は順調とのことでした。最近は短納期の仕事、試作など単品加工の仕事も増え、受注の70%が新規品ということでした。

平均的な納期も1~3日の特急品から、1カ月を要する塗装・組立まで行って納品する仕事まで幅広く手がけていました。

 

社長が自社の強みを「スキルを備えた質の高い社員のモチベーションの高さ」と話すとおり、溶接や曲げ加工に高い技能を備えた社員が忙しく働いていました。

彼らは溶接・曲げ作業に精通した作業者ですが、日本のような多能工ではなく、専門職としてその仕事を長年担当してきた作業者ばかりで、中にはマイスターの資格を取得している社員もおられました。

4名の実習生も週1~2日は職業学校で座学を学び、社内で実技を研鑽しています。

 

ドイツでの義務教育は9年間。

日本でいう小学校は、ドイツでは基礎学校と呼ばれています。

4年間の基礎学校を終了すると、子どもたちには進学する学校形態に関して、基本的に3つのコースから選択しなければなりません。

「基幹学校」「実科学校」「ギムナジウム」の3つです。

いうなれば、ドイツでは早くも10歳で将来の進むべき道を選択しなければなりません。

 

大学など高等教育機関への進学を目指す人は、「ギムナジウム」と呼ばれる全日制の新学校へ進みます。

この学校に進むのは大体30%くらいで、他は手に職をつけるために職業教育課程に進学しますが、ここでも2つの選択があります。

ひとつは「基幹学校」へ進学する道で、5年でここを卒業します。

もうひとつの「実科学校」は6年制で、卒業後は専門学校に進学するか、中級事務職や中級エンジニアなどを目指すことになります。

 

「基幹学校」や「実科学校」を修了すると、二元制度(デュアル・システム)と呼ばれる職業教育を受けます。

これは実践的なことを民間企業や公共事業体など、実際の職場で学び、理論的なことを職業学校で習い、実践と理論との2つのことを同時に学ぶことから、「デュアル・システム」と呼ばれています。

期間は、職種や州によって2年から3年半と幅がありますが、通常は3年。

週5日制を基準とし、3~4日が職場、1~2日が職業学校へ通います。

 

職業教育を受けようとする者は、自分の希望する職種の職業教育を実施している事業所を見つけ、各事業所での実習を行い、その実習の対価として、月々の手当てをもらいながら、職業学校に通います。

ドイツでは職業訓練が法律で義務づけられており、18歳未満でギムナジウム等の他の全日制学校に通っていない若い人は、職業訓練学校に通わなければなりません。

 

前出の会社の4名の実習生は3年間、同社で働きながら学んでいました。

卒業後も同社で働くか否かは本人次第のようですが、実習期間中はインターンシップと考え、その後の入社を前提に愛情をもって対応していました。

 

こうした職業訓練は長年、ドイツで続けられてきました。

最近はモノづくりの現場を目指す若い人が減ってきたこともあって、ドイツの職業訓練制度にも、ほころびが見え始めているとも聞いていますが、同社にはマイスター制度の伝統が生きていました。

また、3次元CADデータによる受注が6割を超え、社内でも3次元CADを駆使して製造性検証を行うスキルド・エンジニアが育っていました。

 

さらに最近は多品種少量生産が増えたことで、金型段取りが煩雑な曲げ加工では機械稼働率が低下していました。

そこで昨年、アマダの自動金型交換装置(ATC)付きのベンディングマシンと、多品目一括金型段取りを実現するソフトを導入、一度の金型段取りで曲げ加工できる製品を丸め加工しています。

さらに、キット生産に対応した金型段取りを自動で行うことで、アセンブリー生産に対応して、生産の最適化を図っていました。

こうした機械や仕組みを導入することで、スキルを備えた作業者の能力を最大限に発揮する生産体制が構築されていました。

 

労働時間が週35時間のドイツでは、1日あたり10時間以内と決められており、長時間労働や休日出勤などは考えられません。

それだけに自動化・省人化に対して積極的な設備投資が行われています。

 

「マクロ景気にかかわりなく当社の業績は伸びている」と、社長は先行きにも自信をのぞかせていました。

経営者のマインドが重要なことを改めて感じました。