春よ来い早く来い

暖かくなった関東地方に「春一番」が吹いたかと思うと、翌日の月曜日は凍るような寒さ。

前日との温度差が10度以上にもなった。

寒暖の差が大きいので体調を崩す人も増え、インフルエンザが全国的に大流行している。

春一番が吹いた翌日から寒くなるというのは、天気予報では定番のようで、寒さが長持ちしないのは春の兆し、ということです。

 

ところで、最近の株式市場にも「春一番」が吹いて、株価も寒暖の差のように大きく乱高下している。

年明けに「申年は騒ぐ」と本欄で書いた話が、そっくり当てはまる市況が続いている。

株価に比例するように外国為替市場では「有事の円買い」で、機関投資家が「日本円を持っていれば安全だ」と円買いに走ったことで円高が加速。一時は110円台をつけた。

それまで120円台だったものが、瞬間的には1割近い円高水準まで円が買い進まれた。

 

これを受けて欧州通貨、ユーロに対しても円高に振れている。

昨年10月に1ドル=120円台、1ユーロ=130円台前半の為替水準を想定していた日本企業は、急激な円高による為替差損で、3月期決算の収益が下振れする懸念も出ており、このことも株価下落に追い討ちをかけている。

こうした負の連鎖は日本経済の減速にもつながりかねない。

 

内閣府が発表した昨年10~12月期の実質GDPは▲0.4%(年率換算▲1.4%)となった。

民間設備投資は順調に伸びているが、GDPの6割を占める個人消費が▲0.8%、住宅投資が▲1.2%と落ち込んだ影響が大きい。

 

景気の指標であるGDP成長率、株価、為替の動向を見ていると、昨年9月に安部政権が発表したアベノミクス「新・三本の矢」で実現しようとした「2020年までにGDPを600兆円にする」「合計特殊出生率を1.8まで回復する」「1億総活躍社会を目指す」というアクションプランは、年明け早々から厳しい状況となっており、目標達成も困難視されるようになっている。

日銀は景気刺激策としてマイナス金利を発表、更なる金融緩和を実施しているが、景気刺激の有効対策にはなっていない。

 

2015年の1世帯当たりの消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年比2.7%減となり、2年連続のマイナスとなった。

消費支出の水準は比較可能な2000年以降で最低という。

 

消費支出にしても、合計特殊出生率にしても、未来に期待するものがあれば上昇する可能性もあるが、現状では国民は財布の紐を緩めるどころか、老後のためにせっせと箪笥預金で小金を溜め込むことに精を出すようになっている。

 

バブルの頃は銀行の預金金利は6%以上で、元金を10年預け入れるとほぼ2倍になった。

ところがマイナス金利によって、元金を2倍にするためには800年も預け入れなければならないという試算結果も出ている。

これでは銀行に預けるのではなく、株式・投資信託などさまざまな金融商品を購入、少しでも利回りのよい運用を考えざるを得ない。

 

ところが、株価がこれだけ乱高下するとハイリスク・ハイリターンを狙うことのない一般投資家では手が出せず、箪笥預金でいつでも現金を持ち出せるようにしておこうという防衛本能が優先してしまう。

だからこそ、国民が安心して暮らすことのできる社会を実現することが何よりも求められている。

 

過日、テレビのトーク番組で著名な男性タレントが「お金を回さないと景気は回復しない。だから僕は後輩たちには機会があるたびに食事に誘ったりして、できるだけお金を使うようにしています」と語っていた。

奢られた後輩も、飲食店も、経済もお金が回ることで「三方良し」ということなのだが、可処分所得の多い人とそうでない人によるちがいもあるので、一概には言い切れない場合もある。

国民も自分たちの行動が経済社会にどんな影響を与えるのかを考えた消費行動が必要なのもたしかである。

 

社会に出て間もない頃、先輩から「耳たこ」のように聞かされたのが、第35代アメリカ合衆国大統領、J.F.ケネディーが大統領就任式典で、「あなたの国家があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたがあなたの国家のために何ができるかを問おうではないか」と呼びかけた演説。

たしかにこの演説の言葉は聞くたびに重い。

それだけにネガティブに政治や景気を捉えるのではなく、ポジティブな気持ちで捉えていくことが必要だと思います。

 

春一番も吹いたので、これからは日々芽吹きの春に季節は変わっていく。

「丙の申」は実をつけた果実が成熟し固まっていく時とも言われている。

 

春よ来い早く来い!

“Change” ― 水面下で進む日台連携/企業発展はマインド ― “心”で決まる【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.18(2016年2月3日配信)からの転載になります。

 

2月に入り景気はますます混迷を増してきました。

日銀は1月29日の政策会議でマイナス金利というサプライズを発表。

一時的に株価は上昇しましたが、週明け後は一転、反落し、投資家も企業家も先行きを読みきれずに混迷しています。

 

そんな日本から2泊3日という強行軍で半年振りに台湾を訪問し、台北・台南・台中のお客さまを訪問しました。

 

台湾は、このたびの総統選挙で国民党に変わって民進党の蔡英文主席が総統に選出されるとともに、立法委員(国会議員に相当)選挙でも民進党が過半数を占めました。

民進党が総統選挙に勝利したものの、立法院選挙では過半数を取れなかった8年前とはちがい、民進党による政権運営が安定すると思われます。

台湾国民の多くが従来とは異なった政治の変化 ― “Change”を期待していました。

 

そうした中で、4社のお客様を取材しました。

事前情報で台湾のGDP成長率が昨年は1.1%と低成長だったこと、輸出入とも前年比で2ケタの落ち込みとなったことから、仕事量も減って厳しい環境におかれているのではと危惧していました。

 

しかし、驚いたことに4社とも業績は好調。

2社は新工場を竣工したばかりで、ファイバーレーザ複合マシン、ファイバーレーザマシンなどの最新鋭機を導入していました。

1社においては日本でもあまり例がない3台のファイバーレーザマシンを導入していました。

 

好調の大きな要因は、経営者のマインドがポジティブで、自社の製品に誇りを持っていることです。

1社はメーカーだったので当然自社ブランドを持っていますが、サプライヤーであるほかの3社も、納品先へ納めるダンボールやパレットに社名を表記、ダンボールには社名とともに「Made In Taiwan」と大きく印字されていました。

しかも、かなりの割合でそれらのダンボールが日本へ向けて輸出されていました。

 

台湾のお客さまはもともと国内に有力な発注元がないため、海外の市場開拓には熱心。

そのため経営者は子どもたちを海外へ留学させ、外国語やビジネスのハウツーを早くから学ばせ、ネットワークを構築しています。

今回も2社の経営者が長男・長女を日本の大学や語学研修学校に留学させ、日本語を学ばせていました。

 

こうした対策が功を奏しているのか、2社とも日本企業からの受注が売上に占める割合は高く、1社は6割強が日本の、それもトップ企業からの仕事でした。

円安が進み、2年前に比べて台湾ドルが2割近く円に対して上昇しているので、為替差損が発生して利益が出ていないのではと思いましたが、各社とも自動化をはじめとした自助努力によるコストダウンで乗り切っていました。

設計から加工、塗装、組立までのワンストップ加工に対応できることも大きな強みとなっていました。

1社は年内にも日本国内に営業所開設を計画していました。

また、日本で開催される公共展に出展、営業開拓にも努めていました。

 

さらにその中で気になったのが、発注元である日本の大手企業が、日本のサプライヤーと台湾のサプライヤーを引き合わせ、日台連携のSCMを構築しようと動いていたことです。

ハイテク関連企業の1社は日台のサプライヤー同士で技術交流会を開催、サプライヤー同士が実質的に役割を分担して協力する関係を構築していました。

特に九州のある板金サプライヤーが敏感に動いていました。

たしかに、鹿児島空港から1時間で台湾に来ることができ、距離的には東京よりも近い関係があります。

そうしたロケーションを考えれば、日台の有力な板金サプライヤーが連携して日系大手から多くの仕事を受注することは当然考えられますし、発注元がBCM/BCPの観点からも日台でSCM構築を考えることもわかります。

 

こうした事実を知るにつけ、企業の発展は経営者のマインド ― “心”で決まるということを痛感しました。

板金業界に変化 ― “Change”が始まっています。