変化対応力は「Time is Money」で身につける【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.12(2015年9月29日配信)からの転載になります。

 

最近お会いした経営者に共通して見られるのが、変化への対応力を備えてきていることだ。

 

弊社ブログでもご紹介した「御社の企業価値向上を実現できる我が社に投資してください」と提案営業に回る経営者もそのおひとり。

 

過日お会いした経営者は自社の特徴や経営者の思いを「YouTube」で動画配信、自社のWebサイトにもリンクして、PR効果を狙っている。

事業継承者としての決意表明、工場の生産改革への取り組み、さらに加工技術や導入した設備を紹介する動画などが紹介されている。

インタビューも十分に構成された内容は玄人はだしで、企業の特徴、経営者のモノづくりへのこだわり、同社の技量がよくわかる。

そうした営業成果として、同社への引合い、新規受注件数は着実に増加傾向にあるという。

 

都内のアーバン工場の経営者は、地域の異業種と「つながる町工場プロジェクト」を立ち上げた。

仕事を連携してこなすために、IT・ネットワーク技術を活用して発注情報、製品情報を共有するとともに、作業者のスキルアップを目指し、各種技能検定受験のための事前講習会を共同で実施するなどして検定合格率を向上させ、社員のモチベーションアップにも役立てている。

 

「自社だけで取り組むと、受検する社員も真剣みが足りない。ところが何社もの企業と連携して受験準備を行うと『あいつには負けたくない』というライバル心が目覚め、真剣に取り組むようになった。今年は溶接の技能検定を受検した3名が全員合格した。ITでつながることも大切だが、社員の動機づけに役立つ、メンタルな部分での連携も大切だと思うようになった」と語ってくれた。

 

こうした経営者に共通しているのは、事業継承者として、これからも家業である板金加工業を継続させたいという強い意志。

その一方で、これまでの継続取引先のみならず、新規顧客開拓にも積極的になっていることだ。

 

以前取材した3代目の若き女性社長が「仕事が落ちてくるのを待つ、“待(ち)工場”ではなく、提案営業ができる町工場にならなければいけない」と語っていたが、こうした思いは前述の経営者にも共通している。

 

また、自社だけで完結する事業の進め方、取り組みではなく、異業種を含めた企業連携にも積極的だ。

公共展への出展、Webを活用したネット営業の展開など、情報発信にも熱心に取り組んでいる。

変化が求められている時代だからこそ、変化に対応する次の手を考え、積極的に取り組まれている様子が伺える。

 

1995年にWindows 95が発表されてから20年。

以来、世の中のあらゆることにスピードが求められるようになった。

 

Time is Money――時は金なり。

こうした経営者を見ていると、日本はまだまだ捨てたものではないと感じる。

 

安倍首相は安保法制が国会を通過したことで、これからはアベノミクスの果実を社会的弱者に配分できるよう経済発展に全力を尽くし、日本の国民総生産(GDP)を600兆円まで引き上げる目標を表明した。

スローガンは大変結構だが、市井で実直に取り組む中小企業の経営者の先進的な心意気や連携にも学んでほしいと思います。

 

セールストークは「価値創造に貢献できるサプライヤーに投資してください」―双方がWin-Winになる訴求力

過日、首都圏のお客さまを訪問し、8月に2代目に就任したばかりの新社長と懇談しました。

新社長とは1998年頃から面識があり、初めてお目にかかったのは家業に入る前に勤めていたメーカーの社員でした。

大学を出たばかりの新人で、慣れない営業職で苦労されていましたが、経験を積まれ、成長していく過程を見ることができました。

 

家業に戻られてからも営業を担当し、新規の顧客開拓に努力されていた。

メーカー営業とちがって、板金加工が理解できなければ話にならない。

現場で機械の操作を学び、経験と知識を積まれ、先代が継続取引先を担当する一方で、新規の顧客開拓を担当された。

 

行政が主催する商談会や公共展への参加、知り合いや取引金融機関からの紹介、斡旋などで間口を拡げていった。

それとともに、アルミ溶接技術に特徴があり、その技術力をアピールするためにWebサイト制作にも力を注ぎ、小まめな更新に注力された。

こうした努力が実を結び、継続取引先からの信頼を高め、仕事を増やす一方、新規取引先も増やし、事業を拡大されていった。

家業に戻られてからは、2年に一度程度しかお目にかかることはできなかったが、お会いするたびに経営者としての器が大きくなり、逞しく成長されていった。

 

今回、2年ぶりに会社をお訪ねすると、新しい名刺を差し出しながら「8月に2代目社長に就任しました」と話してくださった。

気負いもなく淡々とした語り口に、社長としての風格も備えられてきたようだ。

 

近況をお聞きすると、ご自分のデスクに戻られ、書類ホルダーに格納された資料を次々と持ってこられ、必要な資料を見せながら回答してくださった。

中でも新規の顧客開拓実績については、どんな手段で実現できたのかをきちんと分析された資料を見せていただき、驚いた。

 

際立っていたのが、展示会出展から成約につながった案件が全体の25%を占め、Webサイト経由の割合も16%を占めていたことだ。

他社からは「公共展に出展しても、成約にはなかなか結びつかない」と嘆きの声を聞いているが、どうしてどうして、かなり高いヒット率で成約が進んでいる。

 

その訳を聞くと、「公共展といっても、総合展ではなく、業種別の専門展に出展。そこで当社が得意とするアルミ溶接技術などの加工技術を主体に展示するとヒット率が上がります」という。

今年もエアロスペース展や福祉機器展などに出展するという。

 

さらに驚いたのが、提案する際のセールストーク。

「当社はお客さまの価値を高めることができるサプライヤー。だからこそ当社に投資していただくとリターンも大きい」。

「仕事を下さい」というお願いではなく、「お客さま価値を高めることができる企業だから投資してください」と話すそうだ。

 

組み立てたときにボルト結合の穴置が少しでもずれていると、組立が大変になる。

ところが同社が納品した製品は、ブランクから曲げ、溶接も精度良くできているので、穴位置が正確で、組立も楽にできる。

それだけでも作業性を改善して製品価値を高めることができる。

トレーサビリティーも高いのでリピート生産でも不良発生が極小化できる。

こうした営業が功を奏しているという。

 

「最近は板金加工やへら絞り加工した部品を組み立て、センターに回転軸を圧入、軸のブレを±5/1000以内に収める半導体製造装置関連の製品を受注し、高精度化への対応力も備わってきているという。

変化への対応力ということが最近よく言われるが、2代目社長の言動を見ていると、そのことを強く感じさせられた。

 

お客さまは明らかに変化されています。