活況が続く半導体製造装置業界 /サムスン電子、東芝など相次ぐデバイスメーカーの大型投資【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.4(2015年1月29日配信)からの転載になります。

 

昨年から半導体デバイス産業が活況となっています。

 

とりわけ昨年10月に発表された、業界トップのサムスン電子が、総工費1兆6,000億円を投じて、ソウル近郊の京畿道平沢(ピョンテク)市に半導体の新工場を建設するというニュースは、業界に大きなインパクトを与えました。

この新工場は、2015年前半に着工、2017年末までに稼働させる計画です。

 

昨年9月には、サムスン電子を激しく追い上げる東芝が、米国のサンディスクコーポレーションと共同で建設を進めていた、NAND型フラッシュメモリを製造する東芝・四日市工場の第5製造棟の第2期分の竣工式および、新・第2製造棟の起工式を行ったことが報道されました。

 

東芝四日市工場の第5製造棟(第2期分)は、2013年8月から東芝が建屋建設を進め、昨年7月から東芝とサンディスクの両社が生産設備の導入を進めていました。

9月から15nmプロセスを採用した製品の量産を開始しており、9月末から順次出荷を行っています。

 

新・第2製造棟は、3次元構造のNAND型フラッシュメモリ(3Dメモリ)の専用設備を設置する拡張スペースを確保するために建設しました。

2015年夏に一部が竣工、2016年前半には全体が竣工する予定で、竣工した建屋から順次生産体制を構築、2017年中には本格的な生産が始まる予定とされています。

東芝、サンディスク両社が2017年までに行う投資額は、約7,000億円といわれています。

 

半導体デバイス業界では、ビッグデータの利用拡大により、データセンターなど産業用の需要が増えるほか、スマートフォンやネットワーク家電への搭載が増えるため、メモリー半導体の需要が今後数年、拡大が続くと見込まれています。

 

反面、サムスン電子や東芝の大型投資によって、供給過剰となって、市況が悪化する懸念もあります。

そのため、サムスンの新工場は6階建てとなるものの、最上階から設備を導入する計画で、市況を見ながら下層の階へ投資を拡大する計画だと伝えられています。

 

半導体デバイス業界の相次ぐ大型投資の影響で、半導体製造装置業界では新品・中古を問わず、繁忙状態が続いています。

各社とも年初、サプライヤーを集めた賀詞交換会で、受注が好調なことを説明し、生産への協力を依頼したといいます。

 

しかし、シリコンサイクルの影響でもともと好不況の波が激しい半導体製造装置業界だけに、過去に煮え湯を飲まされたサプライヤーが多いことから、市況が大きく変わったからといって、そのまま引合いに飛びつくサプライヤーも少ないようです。

そのため、製造装置メーカーはサプライヤー探しに躍起になっているともいわれています。

 

いまのところ半導体製造装置以外の業界でも受注が活況で、サプライヤーの中には受注単価が厳しい半導体製造装置の仕事を選別するケースも出てきています。

特に、中古装置のレトロフィットに対応した板金部材の調達が間に合わない状態が続いているようです。

 

ある板金工場の経営者は「受注が決まっていても市況が悪化すればキャンセルが当たり前の半導体業界。その影響は我々の経営に直接影響します。今が良いからといってすぐに手を出せるものではありません」と語り、先行きへの警戒感は強いものがあります。

 

サムスン電子や東芝の動向を見ていると、ここ1~2年、半導体製造装置関連の板金サプライヤーは超多忙な状態を持続する様子です。

北陸新幹線金沢開業がもたらす変化

最近のテレビには、3月14日の北陸新幹線金沢開業を目前にして、北陸への観光誘致を促す、JR東日本、西日本が提供するスポットCMが数多く流されている。

 

「和」をコンセプトにデザインされ、ブルー、ホワイト、ゴールドに塗り分けられたE7系(東日本)、W7系(西日本)の新幹線車両が走る姿はいかにも北陸をイメージさせ、永平寺に始まる北陸の観光スポットの紹介とをあわせ、視聴者に北陸への旅心を沸き立たせる内容となっている。

 

筆者は開業前の1月22日、JR西日本の白山総合車両基地の見学と合わせて、車両基地から富山駅までの区間を試験走行する、W7系車両にJR西日本車輌部のご好意で試乗する機会を得た。

 

試乗したW7系は、12両編成で運転席のある先頭車、後部車が全長26m、普通車両は25m、12両全体長さが302mにもなる。

試乗会ということで11号車のグリーン車に乗せていただくことができ、隣の12号車にあるグランクラスにも試乗することができた。

11号車と12号車のデッキの壁には、布地の質感をイメージさせるパネルが張られ、日本の四季をモチーフとしたデザインが取り入れられている。

さらに乗降ドアの内側パネルは、加賀では最上のお客をもてなす部屋に用いられ赤壁をイメージして、赤色に塗られており「人と空間の和」をテーマに重厚な空間を創り上げている。

 

また、グランクラスにはフルアクティブ、グリーン車にはセミアクティブの各サスペンションが搭載されているので、乗り心地は快適。

260km/hの高速運転時でもほとんど揺れを感じることがなく、軌道の出来がよいことも相まって乗り心地の良さが目立った。

 

途中、金沢、新高岡の駅にも停車したが、ホームと列車の間にはホームドアが設置されており、ホームからの転落事故防止への対応も万全だった。

開業後は東日本17編成、西日本10編成で運行が行われ、長野駅出発後は富山、金沢にしか停車しない「かがやき」で、東京、金沢間を最短2時間28分で結ぶ。

これまで在来線を乗り継いでも、最短で3時間50分も掛かっていた移動時間が1時間20分の大幅短縮となり、東京圏と北陸との距離感がなくなった。

 

開業に関して、地元金沢では加賀や能登などへの観光客が増え、地元への経済効果は大きいと期待している。

現実に金沢駅前や片町、香林坊といった繁華街には新しく開業したホテルが建ち並んでいる。

また、地元新聞には4月以降に金沢で開催されるコンベンションの数が例年の2倍以上になって、春以降はホテルも満室状態が続く、と報道されている。

 

その影響で、台湾など海外から当地を訪れる旅行者の宿泊先確保ができない状態となってきており、台湾の大手旅行代理店が金沢へのツアー募集を中止したというニュースも報じられている。

また、東京との時間が大阪―東京間とほぼ同等となったことで、北陸へ工場進出する企業も出てきているという。

もともと加賀地方は地盤が強固で、過去にも大きな地震が起きたことがなく、BCP/BCM対策からも生産拠点を北陸へ移転することを検討する企業も出てきているという。

それだけに地元産業界は、仕事量増大に繋がるとして開業を歓迎している。

 

反面、最速で東京との間が2時間8分で結ばれ、これまでの3時間11分から1時間3分短縮される富山では、富山―東京間が完全に日帰り圏となることで大きな変化が起きる気配だ。

YKK株式会社は北陸新幹線の開業に合わせ、2015年3月には本社スタッフの約2割にあたる300人規模の大規模な本社機能の黒部市への移転を計画している。

同社はもともと創業地が富山県という条件もあるが、今後は同様なケースが出てくることも考えられる。

 

大手企業のUターン傾向がある一方で、地元の方々にお聞きすると、富山は金沢ほどには観光資源を持たず、観光地も宇奈月温泉や荘川温泉、黒部、氷見などに限られ、観光客誘致活動も金沢ほどではないようだ。

逆に富山から東京へショッピングや観光目的で出かける人が増え、金銭面では歳入よりも歳出のほうが多くなって、地元への経済効果を疑問視する関係者も多い。

 

北陸新幹線開業によって、北陸にもたらされる変化は物理的にも大きなものがある。

この変化にどのように対応していくのか。これも変化対応のひとつの事例となる。

変化対応力

早いもので、新年から3週間がたちました。

賀詞交換の挨拶や行事も終わり、普段と変わりのない日常が始まっていると思います。

 

昨年末までは、多くの経営者が今年の景気は厳しいと想定していました。

しかし、年明け後に開かれた業種別の新年賀詞交換会に集まった業界関係者の話を聞いていると、景気は後退するどころか、まだまだいけると感じておられる経営者がかなりおられることが分かりました。

 

特に産業用ロボット、工作機械業界など自動化、省人化に対応する生産財業界にそうした傾向が強いことが分かりました。

産業界では2極化が進んでおり、厳しい競争環境に対応するためには、生産性の改善、品質向上、短納期対応という地道な活動を着実に進めていく王道しかない――ということを経営者が改めて認識されているからです。

そのため、自動化・合理化投資に積極的に取組む企業が増加、生産財に対する投資意欲が強まっていると思われます。

 

円安が進む中で、地産地消で海外へ生産移転された仕事が、日本へ回帰する傾向も目立ってきました。

移転先である新興国では人件費アップが進む一方で、サポートインダストリーが未成熟ということもあって、現地生産を始めるためにはすべてを内製化する、サプライヤーを日本から連れて行く、ローカルサプライヤーを育成していく――という方法しかなく、モノづくりのインフラの差が認識されてきたことも大きいと思います。

それだけに日本のモノづくり基盤や日本人の国民性による優位性が改めて評価され、製造回帰が始まっていると思われます。

 

もちろん、円安傾向が何処まで続くかは分かりません。

今後、新興国でヒトづくり、インフラ整備が進めば、モノづくり基盤の底上げも期待できます。

それだけに、経営者は目先のトレンドにだけ目を奪われるのではなく、人口減少が続き2050年には人口が1億人を割り込むかもしれない、日本の将来動向までを考えた幾つかのシナリオを持つことが必要となります。

特に、大手企業とは異なり、資金力や人材の点でも劣る中小企業にはより一層、そうした視点でこれからの変化を注視し、変化対応が求められています。

 

そんな観点でお客さまを回っていると、お客さまの変化が着実に進んでいるのを感じます。

特に社員数が50名を超え、年商も10億円という壁を越えた企業に、そうした傾向が強くなっています。

 

最近、規模間格差ということがよく言われています。

スケールメリットという利点がある一方で、規模が大きくなってきただけに事業撤退はできない、事業を継続させなければならない――という使命感が、そうした経営者の意思決定に深く根ざしてきていると思います。

 

企業の成長はトップの器で決まる、とよく言われます。

それだけに企業経営者は自らの器を大きくしていく努力を惜しんではならないと思います。

 

経営者自身の変化対応力が求められています。

阪神・淡路大震災から20年―日本人の力強さを感じます

阪神・淡路大震災から20年。

今年も1月17日午前5時46分を迎え、ラジオから流れる時報に合わせ、自宅の窓から見える富士山の方角に向かって手を合わせました。

 

NHKのラジオ深夜便が、震災20周年の特番を流しており、目覚めてからずっと震災を体験した方々からの手紙が朗読されるのに耳を傾けていました。

夫や妻、両親や子供など、肉親を亡くされた方々から、当時のことが今も忘れられない。何故、父や母、妻や夫、かわいい子供が亡くならなければいけなかったのか、という被災者の無念さを聞くと残念でなりません。

 

当時、取材に訪れたことのあった神戸のお客さまの工場も被災されました。

ようやくその工場を訪れることができたのは、3カ月も後のことでした。

仮設工場も出来ておらず、被災した工場の一部を使って生産を再開されていました。

最寄り駅から工場へ伺う途中の街並みの、いたるところにまだ震災の傷跡が残り、ブルーシートが被せられているのを見て、胸が痛んだことを思い出します。

訪れた工場では2代目社長に就任されて間もなく、被災された社長が「生産を再開できたことがうれしい」と語っておられた声が、その笑顔と共に今も記憶に残っています。

 

そのお客さまも1年後に再度訪れたときには仮設工場へ移っておられました。

そしてそれから数年後には、震災復興資金も活用され、新たな新工場を建設されました。

時間の経過とともに三宮、元町といった繁華街も元のような賑やかさを取り戻し、地震による火災で多くの建物が消失した長田地区も再開発が進み、近代的な建物が建ち並び、以前の面影はなくなりました。

 

確実に震災から復興していることわかります。

しかし、報道によるとこの20年で震災復興に費やされた資金は16兆円。

それでようやく被災地域の人口や経済活動が震災前の規模にまで戻ったといいます。

 

改めて日本人の力強さ感じながら、一日の仕事を始めたいと思いました。

平成27年新春に思うこと/「グローバルスタンダードへの対応を考える」【メルマガ連携】

※この記事は、「Sheetmetal メールマガジン」No.3(2015年1月15日配信)からの転載になります。

 

関連業界団体の賀詞交換会や、昨年末に訪問した板金工場の経営者とのお話を通じて、改めて板金業界のグローバル化について考えさせられました。

 

日本がガラパゴス化しないためにも世界標準、世界のデファクトスタンダードへの対応が課題となっています。

板金業界にとっては需要業界のトレンドであり、JISに準拠しておけば問題ないという観点だけではなく、業界を取り巻く環境の変化ということで見ておく必要があると思います。

 

例えば、板金業界にとってなじみの深い配電盤業界は、内需関連産業であり、製品を海外へ輸出する割合は高くはありません。

しかし、製造業の海外移転が進むことで、特に工場設備向けに受注してきた配電盤や分電盤の仕事が海外へ流出する傾向が顕著になっています。

 

ところが、海外で盤を製造するためには、電気設備技術の国際標準規格(IEC規格)の認証を取得することが前提となります。

さらに、IECだけでなく、米国のUL規格などの海外主要規格に対応することも必要になってきます。

 

今後の経済発展が期待される新興国では、送配電網、移動体通信の普及に即応した通信インフラ、道路や鉄道などの交通インフラなどの整備に関連した需要の拡大が期待されています。

そこには当然、新たな板金デマンド(需要)が起きてきます。このデマンドに対応するためには、グローバルスタンダードへの対応が必須となります。

 

例えば、海外鉄道インフラ需要の開拓にあたって、国土交通省や一般社団法人日本鉄道車両工業会では、鉄道の海外発展のためには鉄道製品の国際認証が欠かせないとして、独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター(IA Japan)の認定を受けた、独立行政法人交通安全環境研究所鉄道認証室(NRCC)が、安全性や信頼性を評価し、認証した鉄道部品の採用を進めています。

 

日本鉄道車両工業会の平成27年新春懇親会で、来賓として挨拶された国土交通省の藤田耕三鉄道局長も「海外の様々な鉄道プロジェクトに参入する日本企業は、日本で唯一、鉄道製品認証を発行することができるNRCCの認証を取得してください」と強調されていました。

 

昨年まではこうした発言がなかっただけに、発展が期待される海外の鉄道プロジェクトを受注するためには、グローバルスタンダードへの対応が必須であることが、今さらながら鮮明になりました。

 

今後、板金業界の主な需要先である産業界では、これまで以上に海外シフトを強める傾向にあります。

そこで派生する新たな板金需要を掘り起こすために、板金業界はIECをはじめ、世界標準の製品規格への対応を考えておかなければなりません。

 

石川 紀夫(Sheetmetal ましん&そふと 編集主幹)

14年の工作機械受注は1兆5,000億円、外需が初めて1兆円超え

日本工作機械工業会が14日に発表した、2014年12月の工作機械受注総額が1,442億円と、07年9月(1,420億円)を超え、過去最高額を記録した。1,400億円超えは6年9カ月ぶりとなる。

 

このうち、内需は前月比では減少したものの、7カ月連続の400億円超で、堅調に推移している。また、外需は7カ月連続の前月比増で、9カ月ぶりの900億円超えとなり、過去最高額を記録した。

 

この結果、14年の累計受注総額は7年ぶりに1兆5,000億円を超え、07年に次ぐ、過去2番目となった。1兆円超えは4年連続となる。

 

内需は、2年連続で4,000億円を超え、リーマンショック以降の最高額を記録した。

一方、外需は史上初の1兆円超えで過去最高額となった。

 

日工会では15年の受注(推定)は1兆5,500億円前後を見込んでおり、このままの勢いで受注が推移すれば2年連続の1兆5,000億円超えも夢ではない。

 

今年の世界経済は年明け早々にフランスで発生した、イスラム過激派によるテロで、17名の犠牲者が出たこと、さらには中東で勢力を拡大するイスラム国の動向など、テロへの脅威が高まっている。

さらに、ギリシャの経済危機を契機にEUの存在価値も問われている。

原油価格が下げ止まらないことで、石油輸出による外貨獲得で経済成長を遂げてきたロシア経済の減速も避けられない。

 

また、クリミア情勢を巡るロシアとの軋轢によって、成長が鈍化する欧州経済。

さらに、米国の金融緩和策縮小の影響。さらには石油価格の下落によってシェールガスの採掘コストへの割高感が出てくれば、アメリカのエネルギー情勢にも大きな変化が見込まれ、好調を持続する米国経済も、内実には厳しいものがある。

そして中国経済の成長鈍化という懸念材料もある。

 

しかしながら、工作機械の海外需要は今までのところ、米国の自動車・エネルギー・航空機産業を中心に堅調だ。

 

また、年末の「ASEAN経済共同体」発足による貿易促進に備え、年末までに行われるミャンマーの総選挙結果によっては、ミャンマーに対するアメリカの経済制裁が解除され、海外からの投資が促進され経済がブレークする可能性もある。

また、タイを中心に周辺国へ製造業の投資が広がることが期待される。

予断を許すことは出来ない情勢変化の中で、工作機械業界は底堅い受注の持続を期待できそうだ。

 

そうなると製造原価の7-10%を占める工作機械向けの板金カバーの仕事も底堅いと見ることができそうだ。

懸念材料があるとすれば外需の割合が7割超えとなるため、地産地消で工作機械カバーの現地調達割合が増えることによる国内市場の収縮。

しかし、為替が現状の1ドル120円前後で推移すれば、国内調達コストの安値感も出てきて、海外生産していた仕事が国内へ製造回帰する可能性もある。

 

いずれにしても、板金業界の主要な需要先業界である工作機械業界の好調な受注が、板金業界には明るい追い風になることを期待したい。

祈りの魂

先週、フランス・パリで起きたイスラム過激派によるテロで、17名もの人命が失われたことはとても残念です。

 

世界中で宗教的立場を超えてテロのない世界を求める世論が高まっています。

その一方で、ジハード(聖戦)をムスリムの義務とするイスラム教そのものを否定して、イスラム教徒に対する憎しみを露わにして、世界中でイスラム教のモスクを襲ったり、イスラム教徒を差別する行為が発生しています。

 

メディアではイスラム教の世界と、キリスト教(西洋)の世界との戦い、などと比喩する報道も現れています。

イラクにおける「イスラム国」の台頭を含め、紛争の火種のひとつがイスラム諸国にあることは紛れもない事実ですが、それだからといって、イスラム教徒を差別することは問題で、そうした行為は許されるものではないと思います。

 

社会人になって間もない頃、イランから日本へ中小企業論を学ぶために留学していた大学院生と、仲良くなったことがありました。

我が家にも来て食事や歓談したこともしばしばでした。

当時のイランはパーレビ国王が統治する王制国家で、ホメイニ師を中心に巻き起こったイラン革命勃発前の頃でした。

 

フセインさんと呼ばれていたその友人は、テヘランの有力者の子息でした。帰国後は政府の役人となって英国に駐在。

その後にイラン革命が起こり彼は英国に亡命しました。

しばらくは音信があって、イラン経済の立て直しに尽力したい、とテヘランへ帰国。

そのまま音信が途切れて20年以上が経過しました。

 

家族の写真を肌身離さずもち、アラーの神様への信仰心も深く、私と話しているといつも、「貴方には信仰心がないのか、日本人には“祈りの魂”がないのか」と言われ続けました。

日本人が仏様と神様に頭を下げることが理解できないということで、仏様と神様のちがいを説明するのに苦労した記憶もありました。

 

イスラム教徒による過激な行動が報道されるたびに、彼は今どうしているのか、元気にしているのかと思い出しています。

そして彼が真剣に問いかけてきた日本人には“祈りの魂”がない、という言葉を思い起こします。

 

昨年末に父を亡くして7日参りを繰り返す中で、唱えるお経「正信偈」にもなじみが出てきました。

たまたま実家は浄土真宗大谷派(東本願寺)であり、親鸞聖人の教えから、真宗の大儀・大綱を七言60行120句の偈文に求めた「正信偈」を必ず唱えます。

 

「帰命無量寿如来 南無不可思議光」から始まる正信偈を、ご院さまと唱和すると不思議と心が落ちつき、15分程の読経の間は信仰の世界に入ることができます。

ご院さまの読経の声がすばらしいので、一層その境地が深くなるから不思議です。

日本人には“祈りの魂”がないといわれ続けましたが、この時ばかりは“祈りの魂”に浸ることが出来ます。

 

そんなことを考えていると、今回のテロに対する世界からの批判と、何よりも平和を求める多く人々の心の中にこそ“祈りの魂”を感じます。

 

キリスト教徒の20億人に対してイスラム教徒は12億人といわれています。

世界の2大宗教でありその意味でも宗派を超えた共生と共存を願うとともに、音信不通となって久しいフセインさんが元気でいることを願います。

第3次安倍政権に注目―オリンピックまでの5年、ポストオリンピックの5年を考えた成長戦略への期待

新年明けましておめでとうございます。

2015年が皆様にとって幸多い年になることを願っております。

 

年末の総選挙で、政権与党である自民・公明両党が、衆議院で2/3を占める圧倒的な勝利を収めた。

第3次安倍内閣は発足後直ちに、昨年4月の消費税率引き上げ後に回復していない個人消費のてこ入れと、地域経済の底上げにより、経済の好循環を全国津々浦々で感じられるようにするために、26年度補正予算で地方への好循環拡大に向け3.5兆円の緊急経済対策を打ち上げた。

さらに27年度本予算でも、経済対策と地方創生に向けた予算措置を行うとともに、昨年9月に官邸に立ち上げた「まち・ひと・しごと創生本部」が中心となって地域活性化の中長期ビジョンの策定作業を行っている。

 

地方や中小企業の創生に向けて各種補助金対策も必要だが、それ以上に急務な仕事の創生に取り組む姿勢を見せている。

補助金を使って設備を更新したのはいいが、肝心の仕事を受注できなければ設備は生かされず、補助金も生きたお金にはならない。

それだけに「まち・ひと・しごと創生本部」が具体策をどのようにまとめるか注目したい。

 

新年があけ、各種業界団体の賀詞交換会が各所で行われ、私もいくつかの懇親会に参加させていただいた。

その中で際立っていたのが、来賓で出席された所轄省庁の大臣、局長などの幹部が、挨拶で異口同音に話されていた①企業で働く社員のベースアップ、②協力工場などの中小企業が円安や電気料金値上げなどのコスト上昇分を価格に転嫁することを認めてあげてください―という2点の異例のお願い。

 

1点目のベースアップは前年に引き続いての要請となるが、2点目の価格転嫁に関する要請は昨年まではなかった項目。

逆に言えばアベノミクス効果が、広く地方や中小企業の隅々にまで行き渡っていないということから、最低2%程度のベースアップと、コスト上昇分の価格転嫁を大手企業に認めさせることで、アベノミクス効果を全国津々浦々に浸透させようという政府の意向がはたらいていることは間違いない。

 

来賓で挨拶された菅義偉内閣官房長官は「昨年末の衆議院選挙で安倍内閣は国民から4年間の政権の付託を受けた。4年間は今の政策に変更はありません」と言い切った。

 

また、太田昭宏国土交通大臣は「2020年の東京オリンピックまでの5年間、ポストオリンピックの5年間、つまり2025年までの10年間の成長戦略をきちんとやりぬかなければならない」と挨拶された。

 

経済界では「2020年の東京オリンピックまでの景気はいける。しかし、オリンピックが終わるとともに、日本経済は一気に減速するのではないか」という不安を持っている。

大田大臣の挨拶はそんな不安を持つ経済人への強いメッセージとも言える。逆に言えば、第3次安倍政権は強いリーダーシップでアベノミクスの第3の矢である、成長戦略を推進すると宣言しているようでもある。 

 

誠に心強い限りであり、これまでに参加した賀詞交換会の中でもひときわ、政府の強気が目立った―というのが正直な感想だった。

願わくは安倍政権にはこの公約どおりに、強いリーダーシップを持って日本経済の発展に貢献していただきたいものである。第3次安倍内閣に注目。