ゴールデンウィーク期間中に円高が加速、一時1ドル=105円台まで円が買われました。
連休明け後の為替市場では1ドル=107円台とドルが買い戻されているものの、円高基調を嫌って株式市場では1万6,000円台を割り込む気配となっています。
市場では日銀による追加緩和がなかったことや、アメリカの金利引き上げが当分見送られたことなどの金融政策への失望感があるものの、根底には日本経済、アメリカ経済の動向が、今年に入って悪化の兆しが出ていることへの警戒感があるのは否めません。
特に11月の大統領選挙を控え、アメリカでは共和党、民主党の大統領候補者指名争いにも先が見え、共和党はトランプ候補、民主党はクリントン候補が指名を獲得するのは確実となっています。
こうしたなかで発表されたアメリカの第1四半期のGDP確報値は前期比年率で2.9%減少し、改定値の1.0%減から下方修正されました。
これは2009年第1四半期以来5年ぶりの大幅な落ち込みとなります。
アメリカの雇用統計では過去4カ月連続で、毎月20万人ペースで増加しており、実体経済は順調と思われていただけに、改定値を大幅に下回るGDPの減少に先行きへの不安が増しています。
これはひとつには今回の大統領選挙で共和党候補に選ばれたトランプ候補の保護主義や、移民に否定的な政策など、今後のアメリカの経済政策が、成長力を損なうような方向へと進む不安が高まっていることがあります。
自由貿易や、移民の流入はこれまでのアメリカ経済発展の活力となっていました。
今後、保護主義や、移民に否定的な政策が支持を集めるようになれば、こうした政策によって経済の活力が損なわれることが懸念され、経済活動が委縮することも考えられます。
また、TPPについては、大統領選挙を通じて反対論が高まっており、今年中にも期待されていたアメリカ議会での承認が、大幅にずれこむ可能性も懸念されています。
そうなれば、アメリカ経済のみならず、TPPを成長戦略の一環としている日本経済にも影響が及部ことは必死です。
一方日本では、中国経済の減速の影響や円高による輸出の落ち込みなどで企業の設備投資にも陰りが見られ始めています。
お客さまを回っていると、今年の景気に関して下触れリスクが高まっていると判断し、需要減を見越して設備投資を手控える動きも見え始めています。
「ものづくり補助金」には多くの企業が応募していますが、その効果も限定的にならざるを得ない雲行きです。
安倍首相は5月26、27日に行われる、伊勢志摩サミットで世界経済の持続的な発展を実現するには、G7が協調して財政出動による景気のテコ入れを行う必要がある、とサミット後の共同宣言に盛り込みたいようですが、ドイツなどはこの提案には否定的といわれています。
財政出動で景気は一時的には下げ止まり、しばらくは上昇することが期待されますが、それが一時のあだ花になる可能性は否定できません。
景気を牽引する企業の設備投資意欲や、個人消費を活発化させるための政策が重要だという考え方が根強くあります。
財政の健全化を進めるドイツがこの呼びかけに応じるとは思えません。
日本もアベノミクスの3本の矢の効果で、一時に比べて景気は回復し、個人消費を支える個人所得もこの2年は大幅に上昇してきました。
しかし、補助金や財政出動は結果として赤字国債の発行額を増やし、財政の健全化を考えると厳しい状況です。
しかもデフレからの脱却という目標達成は困難な状況です。
こうしたことを考えるとやはり、これまでのアメリカが目指してきた自由貿易と移民の流動化といったダイナミックな政策が必要だと思います。
日本はさらなる規制緩和によって民間の力を大胆に活用できる社会実現を目指すべきだと思います。
特にIoT、ビッグデータ、ロボット、人工知能(AI)などによる技術革新によって実現が期待される第4次産業革命への取り組みに、政府も本腰を入れて対応してもらいたいものです。