特集

2024年を展望する

主要業種別トレンド分析

多様化するリスクに警戒を要するも、日本経済はゆるやかな成長が続く

全体的には横ばいか微増 ― 「半導体製造装置」「データセンター」の成長率が高い

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2024年の世界の実質経済成長率は2.9%

画像:多様化するリスクに警戒を要するも、日本経済はゆるやかな成長が続くIMF世界経済見通し(2023年10月)の経済成長率予測(%)

国際通貨基金(IMF)が2023年10月に発表した世界経済見通しによると、2024年の世界の実質経済成長率は2.9%。中国やユーロ圏の経済減速を反映し、7月の予測から0.1ポイントの下方修正を行った。5年後の成長率も3%前後にとどまると予測している。

2024年はロシアによるウクライナ侵攻の長期化、イスラエル・パレスチナ紛争による中東情勢の悪化など、地政学的なリスクに加えて、欧米を中心とするインフレの長期化、欧米各国の中央銀行の金利引き上げによる個人消費や企業の設備投資の低迷が懸念されている。

中国の2024年の成長率は4.2%と0.3ポイント引き下げられた。IMFは「不動産危機がさらに深まる可能性があり、世界経済にとって重要なリスク」と指摘するとともに、「当局が人為的に不動産価格を維持する政策は中長期的に弊害がある」と疑問を呈した。

米国経済は景気後退が懸念されていたが、2023年は0.3ポイント上方修正して2.1%、2024年も0.5ポイント上方修正して1.5%と予測した。しかし、急ピッチの利上げ効果に加え、足もとでは財政混乱を背景にした長期金利の急上昇で住宅ローン金利は約23年ぶりの水準まで上昇した。また、11月の米国購買担当者景気指数(PMI、速報値)は、製造業が10月から0.6ポイント低下して49.4となった。好不況の節目とされる50を下まわり、「不況」水準に落ち込んだ。

2024年11月には米国大統領選挙が行われる。米国大統領選挙の前後には世界的に景気が低迷する傾向があり、予断を許さない。

日本経済は2024年もゆるやかな成長を予想

IMFの世界経済見通しによると、日本の2023年の実質経済成長率はインバウンド(訪日外国人)などの消費拡大で2.0%と0.6ポイント引き上げた。2024年は1.0%と前回予測を据え置いた。

民間の調査機関も、2023年はコロナ禍明け後の需要回復がほぼ一巡したが、インバウンド効果などもあって景気回復はゆるやかなペースになると見ている。2024年も景気のゆるやかな回復が続くとしている。

ただし、「物流の2024問題」による物流コストの上昇、人件費の上昇、原油価格の高止まり、円安による輸入物価の上昇が続くと予想され、家計の節約志向が強まることで個人消費の伸びが抑制されると見られている。加えて、海外経済の減速や人手不足を背景としたサプライチェーンの制約といったマイナス材料が加わることで、景気回復ペースが鈍るリスクもある。

2024年は、「デフレからの脱却」を旗印に始まった「量的・質的金融緩和」 ― いわゆる「異次元緩和」がスタートして11年をむかえる。円安や物価上昇をおさえるため、春先以降にも「金融引き締め」への政策転換が行われるとの予想もあり、そうなれば利上げによる景気減速も考えられる。政府の経済対策も、さらなる財政悪化を招く国債発行に頼ることは難しくなっており、2024年の日本経済は内外ともに先行きに対する不確実性が増している。

こうしたマクロ経済の状況を踏まえつつ、板金業界の主要な得意先業種のトレンドをまとめた。各業界団体の統計や民間調査会社のレポートを参考にしつつ、一部は小誌編集部が独自に予測を行った。

工作機械

2024年も生産調整が続く見込み

画像:多様化するリスクに警戒を要するも、日本経済はゆるやかな成長が続く工作機械の受注金額推移/一般社団法人日本工作機械工業会

日本工作機械工業会がまとめた2023年1~11月の受注実績(11月は速報値)は前年同期比16.0%減の1兆3,594億円となった。前年同月比では11カ月連続で減少し、2023年通年で1兆5,000億円を割り込むのは確実。編集部では前年比18%減の1兆4,500億円と予想する。

欧米での金利上昇による中小企業を中心とした資金繰りの悪化、先行き不安などで設備投資が停滞した。また、中国の景況悪化により、東アジアや国内ではゆるやかな減少傾向が続いた。

外需は、中国が年初来低調で、調整局面が長引いている。2023年夏以降は工場の平均稼働率が回復に向かい、金額ベースでは下げ止まったが、回復の足取りは重い。北米は、今のところ米国を中心に堅調に推移している。インドは自動車や電気機械を中心に好調が続き、年度半期では最高額を更新した。

内需は、補助金による下支えが見られたものの、半導体関連や自動車関連で弱含みの状態が続いている。受注額が400億円を下まわる月も見られた。ただ、半導体関連の一部や電気・精密が上向き傾向で、自動車関連が上昇に転じる気配も感じられる。

編集部では、2024年の受注額を前年比10%程度減の1兆3,000億円と予測する。回復に転じる要素はあるものの、生産調整の局面が長引くと見込んだ。

つづきは本誌2024年1月号でご購読下さい。

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