特集

事業承継を機に発展する岡山・島根の板金企業

業務用冷凍冷蔵庫と半導体向け空気清浄装置を取り込み急成長

「超短納期・多品種少量生産」と「大ロット・一貫生産」の2工場体制を構築

芦田産業 株式会社

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画像:業務用冷凍冷蔵庫と半導体向け空気清浄装置を取り込み急成長2021年に建設・移転した「本社工場」の内部。工場面積は約3倍になり、新鋭設備を次々に導入して生産能力の大幅増強をはかった

「2工場体制」を構築し急成長

画像:業務用冷凍冷蔵庫と半導体向け空気清浄装置を取り込み急成長「2工場体制を有効に活用して幅広い分野にチャレンジしたい」と語る芦田裕士社長

岡山県津山市の芦田産業㈱は2021年8月、旧本社に併設していた「旧第1工場」の老朽化対策のため、新たに「本社工場」を建設・移転した。これにより工場面積は約3倍に拡大。ファイバーレーザ複合マシンEML-2512AJ-PDC(2棚・TK仕様)、ファイバーレーザ溶接システムFLW-3000ENSIS、パンチングマシンEM-2510MⅡ(2棚・TK仕様)などを導入し、生産能力の増強をはかった。

2023年秋には、ほぼ休眠状態だった「第2工場」を改修して専用の組立スペースなどを設け、半導体工場や半導体製造装置工場のクリーンルームなどで用いる空気清浄装置の製造事業を本格化。それとともに、「本社工場」からEM-MⅡなどを移設し、厨房設備や業務用空調機器の部品生産を「第2工場」へ移管した。「本社工場」の空いたスペースには、自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATCや2台目のEML-AJを導入。これにより、「本社工場」では短納期・多品種少量生産、「第2工場」では比較的ロットサイズが大きい案件の加工・組立と機能分担が明確になり、全体の生産能力は約20%向上した。

「本社工場」開設後の2022年5月期の売上高は工場移転前の1.5倍になり、過去最高を記録。2023年5月期は前期比28%増となり、2024年5月期もさらなる増収が見込まれる。従業員数も工場移転前の30名強から約1.5倍の49名に増えた。

芦田裕士社長は「2工場体制を有効に活用して、半導体産業のニーズをつかむとともに、より幅広い分野にチャレンジしたい。採用活動と新規受注獲得に力を入れ、早い時期に売上高10億円を達成したい」と意気込みを語っている。

画像:業務用冷凍冷蔵庫と半導体向け空気清浄装置を取り込み急成長左:「本社工場」の開設に合わせて導入したファイバーレーザ複合マシンEML-2512AJ-PDC(2棚・TK仕様)。2023年にもう1台増設した/右:2023年に導入した自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATC

2017年以降は立て続けに大規模投資を実施

同社は1946年に設立し、乾麺などの食品販売を手がけ始めた。1960年代には外国産の飼料用大麦や政府余剰米の飼料化工場を立ち上げ、1970年代には孵卵器の製造事業に参入するなど多角化を推進。さらに、板金加工設備を導入し、木工中心だった孵卵器の金属部品などの加工も手がけ始めた。

バブル崩壊後は事業環境が悪化し、鳥インフルエンザの流行が決定打となって、2004年には民事再生法の適用を申請した。4年間で事業を整理し、唯一の黒字部門だった板金加工部門を残すかたちで再スタート。当初は難航したものの、冷凍冷蔵機器メーカーを皮切りに、厨房機器メーカー、空調機器メーカーなどとの取引が次々と始まり、経営が軌道に乗っていった。

芦田社長は2016年に5代目経営者に就任して以降、設備投資を積極化。2017年から2019年にかけて1年に1台のペースでベンディングマシンを導入し、2021年から2023年にかけて新本社工場の開設、「第2工場」の改修、それにともなう生産設備の増強と、立て続けに大規模投資を行った。

中でも2021年の「本社工場」建設・移転は、同社にとって大きな転換点となった。

当時の状況について芦田社長は「順調に仕事量が増えていく中、旧第1工場が手狭になり、お客さまから増産要請をいただいても受け入れられない状態でした。駐車場も従業員の必要数を確保できず、増員もままなりませんでした」。

「主力のパンチングマシン(VIPROS)は30年くらいフル稼働していて、老朽化により毎週のように故障で止まっていました。VIPROSの担当者は夜中や休日でも出勤してなんとか動かしている状態で、休みを取ることもできませんでした。かといって工場は手狭なため入れ替えもできず、いつ供給責任を果たせなくなるかわからない。コロナ禍の真っ最中でどうなるかわからない時期でしたが、『古い工場のままでは未来はない』『投資するなら今しかない』と考え、新工場の建設・移転に踏み切りました」と振り返る。

画像:業務用冷凍冷蔵庫と半導体向け空気清浄装置を取り込み急成長左:ファイバーレーザ溶接システムFLW-3000ENSISは溶接品質の向上と溶接工程の負荷平準化に貢献している/右:溶接まで完了したクリーンルーム用空気清浄装置の部品

会社情報

会社名
芦田産業 株式会社
代表取締役
芦田 裕士
所在地
岡山県津山市神戸508-2
電話
0868-35-3820
設立
1946年
従業員数
49名
主要事業
業務用冷凍冷蔵庫、空気清浄装置、業務用空調機器、厨房設備、工作機械などの板金加工・溶接・組立
URL
https://www.ashida-sangyo.com/

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