医療・医用機器を支える板金加工
調剤機器の自社内一貫生産を強みに発展 ― 板金加工から塗装・組立まで対応
高度なQ,C,D対応に複合マシンとファイバーレーザ溶接機が貢献
株式会社 川西金属
調剤機器メーカーの主力サプライヤーとして発展 ― 塗装・組立までワンストップ対応
兵庫県川西市の㈱川西金属は、板金加工から溶接・塗装・組立までの自社内一貫生産と、卓越したQ,C,D対応力を強みに、大手調剤機器メーカーの主力サプライヤーとして発展してきた。
同社は1977年、大手工作機械メーカーの協力工場に勤めていた井上仁志会長が独立・創業。井上会長の誠実・丁寧な仕事ぶりは評判を呼び、地場の企業からさまざまな仕事を請け負いながら堅実に事業を展開していった。
1990年に法人化してからは、現在の主力得意先である大手調剤機器メーカーとの取引が軌道に乗り、事業は加速的に発展した。
顧客ニーズに応えるため設備投資を活発に行い、Q,C,D対応力を強化。さらに塗装工程・組立工程を内製化し、板金加工からユニット・完成品の組立までワンストップで対応できる体制を整えた。
塗装工程は、メラミン焼付塗装のほか、粉体塗装や特殊塗料を用いた凹凸のあるレザートーン塗装などにも対応する。組立工程は、社内で製作した板金部品を組み上げ、基板・モーター・ハーネスなどの電装品組付・配線を行って、調整・動作確認・検査まで対応する。
以前は金融機器や鉄道車両向け電機品などの板金部品も手がけていたが、今では調剤機器に特化し、大手調剤機器メーカーとその協力会社との取引が90%以上を占める。自社内一貫生産ならではの品質管理・納期管理・コストダウン対応には定評があり、得意先とは長年の継続取引を通じて強力なパートナーシップを構築している。
医療・医薬ニーズの拡大に合わせて成長する調剤機器市場
2013年に2代目経営者に就任した井上博行社長は「調剤機器メーカーのお客さまの業績は好調で、当社の工場も生産能力の上限に達したままずっと横ばいで推移しています」と語っている。
調剤機器が好調な背景には、高齢化の進展にともなう医療・医薬ニーズの拡大と、調剤薬局の負担増大がある。
厚生労働省によると、2023年度の調剤医療費(電算処理分)は前年度比5.5%増の約8.3兆円で、集計開始以来、初めて8兆円を超えた。調剤薬局業界は統廃合による再編が進み、薬局数は増加傾向にあるが、地方を中心に薬剤師不足が深刻化している。
国は、膨張し続ける医療費を抑制するためジェネリック医薬品(後発医薬品)の採用を促進。調剤薬局にとっては取り扱う医薬品の種類が増えたことで調剤作業の負担増につながっている。
また、複数の慢性疾患を抱えていることが多い高齢者などをケアする必要から、一元的・包括的な服薬管理を行う「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」としての役割も求められるようになった。国も調剤報酬の改定を通じて、「対物業務」から「対人業務」への転換を強く推進している。
このように調剤の現場における負担が増大する中、調剤業務の合理化や安全・安心を実現する調剤機器に対する期待がますます高まっている。
特に好調なのが「自動分包機」で、これは処方された薬を服用するタイミングごとにパッケージングする「一包化(分包)調剤」を自動化できる。また、近年は知能化された薬剤カセットが採用され、調剤作業の負担軽減と調剤過誤の未然防止を実現できる。
また、抗がん薬などの強力な薬剤は、皮膚吸収・経口摂取・吸入などにより医療従事者に健康被害をもたらすおそれがあるうえ、調剤過誤が医療事故に直結する。そのため、抗がん薬の混合調製作業の自動化・ロボット化も進んでいる。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 川西金属
- 代表取締役
- 井上 博行
- 所在地
- 兵庫県川西市加茂6-104
- 電話
- 072-757-9607
- 設立
- 1990年(1977年創業)
- 従業員数
- 30名
- 主要事業
- 精密板金加工(精密医療機械部品・ATM関係部品・制御盤)、高級焼付塗装、組立
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