医療・医用機器を支える板金加工
医療・医薬・産業向け分析計測機器と金融機器の2本柱で発展
事業継続をテーマに経営改革を推進中 ― 全員参加型経営への転換を目指す
株式会社 フジ工業
分析計測機器と金融機器の2本柱で発展
㈱フジ工業は、主に分析計測機器や金融機器に用いる金属部品を生産・供給する精密板金加工企業。1981年に後藤修社長が創業して以来、最新の加工設備・ソフトウエアをいち早く導入し、高品質・低コスト・短納期を徹底追求することで発展を遂げてきた。
当初はプレス加工と板金加工の両輪体制で、金融機器やシャッター、産業機械、情報通信機器など多種多様な分野の部品供給を手がけた。その後は時代の変遷とともに板金加工のウエイトが高まり、得意先も集約されていった。
現在はプレス加工10~20%に対して板金加工80~90%。得意先は、医療・医薬・産業向け分析計測機器メーカーと金融機器メーカーの主要2社で売上全体の70%程度を占める。残りの30%程度は、鉄道車両向け電機品・シャッター開閉機・半導体製造装置などのフレーム・カバー・構成部品となっている。
分析計測機器メーカーとは2000年に取引を開始し、中核サプライヤーの1社として成長。2010年代後半からは顧客ニーズの深耕と課題解決に力を注ぎ、パートナーシップをいっそう強固なものにしてきた。
金融機器メーカーとは創業当初から40年超にわたり取引を継続してきた。かつては新紙幣・新硬貨の発行時期に繁忙になるなど受注変動が大きかったが、2020年頃から海外向け案件が増加したことにより受注変動は小さくなってきている。2024年7月の新紙幣発行にあたっては、同社を含む協力会社が一丸となって対応した。
高精度・高品質・安定供給がきびしく求められる両分野へ向けて供給責任を果たしてきた実績は大きい。
後藤修社長は「金融機器のお客さまは総合的なものづくりのレベルがきわめて高く、分析計測機器のお客さまは製品外観をはじめ品質へのこだわりがきわめて強い。こうしたお客さまとの長年のお取引なくして今の当社はなかったと感謝しています」と振り返る。
2024年6月には敷地内に建築面積609㎡の新工場を竣工した。今後は既存の工場建屋2棟と合わせて生産体制を整備し、半導体製造装置など新規分野の開拓と事業拡大を目指す。
充実の生産設備 ― 自動化・省力化を徹底
生産設備は自動化・省力化を徹底し、少数精鋭による高効率生産を実現してきた。
ブランク工程はファイバーレーザ複合マシンACIES-2512T-AJとパンチングマシンEMZ-3510NT-PDC、EMZ-3510NTの3台体制。このうちACIES-AJとEMZ-PDCは自動倉庫MARS(12段12列)と連動し、夜間を含む長時間連続運転が可能だ。
曲げ工程にはベンディングロボットシステムASTRO-100NTと汎用ベンディングマシン10台を設備。ASTROは2016年に更新した2代目で、継続受注している分析計測機器のカバーやシャーシなどを加工している。
溶接工程にはTIG・MAG・スポットなど各種溶接機を設備。協働ロボットを採用したロボットアーク溶接機も導入し、負荷平準化・スキルレス化・品質安定化をはかっている。圧入機は、金融機器向け機構部品の特殊なピンのカシメなどに活用する。
プレス加工は金融機器向けの部品がほとんど。しかし中には分析計測機器の部品で、複合マシン(ACIES-AJ)で成形・タップ・外周切断、ベンディングマシンで段曲げ、200トンプレス(TPW-200)で複数箇所の一括成形を行うものもある。こうした複合加工に対応できるのも、板金・プレスの両方にノウハウを持つ同社ならではの強みだ。
高精度・高品質な精密板金部品を手がけているため、寸法精度を保証する測定機器も充実している。ブランク工程には非接触式2次元レーザ測定機Fabri Visionを設備し、初回ロットは加工後のブランク材と展開データを比較照合し、寸法精度を確認する。3次元測定機も接触式・非接触式をそれぞれ設備しており、得意先から受け取る3次元モデルと曲げ・成形後の製品との比較照合が可能。スコヤなど治工具の測定にも利用している。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 フジ工業
- 代表取締役
- 後藤 修
- 所在地
- 兵庫県神崎郡市川町西田中62-1
- 電話
- 0790-26-0588
- 設立
- 1985年(1981年創業)
- 従業員数
- 31名
- 主要事業
- 精密板金加工・レーザ加工・プレス加工・溶接・リベット組立
つづきは本誌2024年11月号でご購読下さい。