特集

検体検査装置の板金加工

日本とベトナムの2拠点体制を生かし、臨床検査機器部品を生産

新工場が完成 ― 設備レイアウトを一新し生産効率を改善

株式会社 大島

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画像:日本とベトナムの2拠点体制を生かし、臨床検査機器部品を生産新工場に導入したファイバーレーザ複合マシンACIES-2512T-AJのテイクアウトローダー(TK)付き材料供給・製品集積システム仕様(8段)

新工場が完成 ― レイアウトを一新し効率改善

画像:日本とベトナムの2拠点体制を生かし、臨床検査機器部品を生産左から製造部部長の堀毛竹司取締役、大島要社長、営業部の横田卓也課長

㈱大島は2024年4月、「本社工場」(兵庫県三木市)の増築工事を完了した。構想から5年超、生産が止まらないように第1期・第2期に分けて段階的に工事を進めた。隣地を取得して駐車場とし、敷地内の一部建屋を取り壊して新たに工場建屋を増築。延床面積は約25%、広がった。

新工場はブランク工場とし、「本社工場」全体の設備レイアウトを一新した。新工場を先頭に工程の並び順を逆転させ、人とモノの動線が交差・逆流しないように各工程を配置しなおした。作業エリアや通路を拡張し、よどみなくモノが流れるように整流化をはかった。

新工場には、ファイバーレーザ複合マシンACIES-2512T-AJをテイクアウトローダー(TK)付き材料供給・製品集積システム仕様で導入した。レーザマシンLC-1212αⅣNT(マニプレーター仕様)との入れ替えで、生産能力が向上しただけでなく、ジョイントレス加工に対応することでバラシ作業の負担を軽減した。

これにより同社のブランク工程は、ACIES-2512T-AJとLC-2512C1AJ(マニプレーター仕様)のファイバーレーザ複合マシン2台、4´×4´材仕様の自動倉庫SI-MARS(5段7列)と連動するEM-3510ZRTとEMZ-358NT-PDCのパンチングマシン2台の計4台体制となった。

2019年に2代目経営者に就任した大島要社長は「工事完了から半年足らず。工場増築の効果が数字で表れるまでには至っていませんが、製造部のメンバーからは『作業性が今までとまったくちがう』といったコメントを聞いています」。

「中小製造業の場合、設備能力に対して100%の受注量では足りません。100%以上の受注量に対応し続けるためには、生産効率の改善と増産への対応が欠かせません。今回の増築でモノの流れがスムーズになったことで、これまで以上に生産効率を高め、生産量を増やしていきたい」と語っている。

画像:日本とベトナムの2拠点体制を生かし、臨床検査機器部品を生産左:2024年4月に増築工事が完了した「本社工場」。新工場(手前)と従来の工場建屋(奥)がV字型に連結している/右:L字型に配置された曲げ工程も作業エリアと通路が拡張され、よどみなくモノが流れるようになった

加工設備と受注製品の大型化に対応

大島社長は工場増築に至った背景として、加工設備や受注製品の変化も挙げた。

「加工設備の大型化が進み、新しい設備に更新しようとしても、そのままでは元の場所におさまりません。特に従来の工場建屋は天井高さが低く、ブランクでも曲げでも設備選定の制約になっていました」。

「当社で取り扱う製品も徐々に大型化し、スペースを圧迫していました。以前は要求精度がきびしい手のひらサイズの小物が大半で、接合はスポット溶接が中心でした。しかしリーマンショック以降、新規開拓や既存のお客さまのニーズ深耕に取り組むうちに、大きいサイズの製品も受け入れられるようになっていきました。今では肩幅サイズを超える製品も珍しくなく、TIG/CO2溶接やファイバーレーザ溶接にも対応しています。こうした環境変化も、工場増築に踏み切った大きな要因です」(大島社長)。

リーマンショックを転機に新規開拓

同社は1987年に大島亨会長が創業して以来、多品種少量生産の時代に不可欠な小ロット・高品質・短納期を実現する精密板金加工と、量産に欠かせない精密プレス加工の2本柱で事業を展開してきた。

2000年以降は最新鋭の板金加工設備群をネットワーク化し、独自仕様にカスタマイズした生産管理システムAPC21で生産情報と技術情報を一元管理。設備ごとの稼働状況、製品ごとの進捗状況、得意先ごとの損益情報などをリアルタイムで“見える化”し、生産プロセスの最適化をはかってきた。

2006年にはベトナム・ホーチミン市内に造成された輸出加工区(EPZ)にSAIGON METAL PROCESSING CO., LTD.を設立。当初は日本の本社の協力工場という位置づけで、本社が受注した仕事の一部を加工して日本へ送っていたが、その後は現地の日系企業との直接取引を増やし、現地生産・現地納品の割合を高めていった。

2008年のリーマンショックで売上が一時的に半減したことを踏まえ、それ以降は新規得意先の開拓を強力に推し進めた。得意先は15年間で約2倍の45社程度まで増え、1社あたりの構成比をおさえてリスク分散をはかりつつ、業績を伸ばしていった。

現在の売上構成は、半導体製造装置関連の電源装置部品などが20~30%で最多。続いて配電盤関連の気中遮断機・真空遮断機などの構成部品、さらに3番手グループとして医療機器・食品機械・貨幣処理関連機器・自動サービス機・繊維機械などの構成部品がそれぞれ10%弱で並ぶ。

分散化が功を奏し、不調な業種を好調な業種が補いながら、全体の業績は右肩上がりで推移。コロナ禍による落ち込みもみられず、年間売上は20億円の大台を超えた。内訳は日本の本社が70%強、ベトナム工場が30%弱。最新鋭の加工設備とデジタル技術、生産効率を徹底的に追求する社風と、大島社長が「当社の財産」と胸を張る従業員の奮闘により、1人あたり生産性は業界平均を大きく上まわっている。

  • 画像:日本とベトナムの2拠点体制を生かし、臨床検査機器部品を生産TIG/CO2溶接エリア。臨床検査機器の筐体などを接合する
  • 画像:日本とベトナムの2拠点体制を生かし、臨床検査機器部品を生産「本当に優先度の高い仕事」を“見える化”する「ナンセンス・システム」

会社情報

会社名
株式会社 大島
代表取締役社長
大島 要
所在地
兵庫県三木市志染町吉田472-1
電話
0794-83-6800
設立
1987年
従業員数
60名
主要事業
精密機械板金加工、精密プレス加工、ユニット組立
URL
http://www.ohsima.co.jp/

つづきは本誌2024年10月号でご購読下さい。

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