「食の安全・安心」を担保する食品機械と厨房機器の板金加工
食品製造プロセス向けが40% ― アセンブリーまでの一貫生産に対応
生産プロセスの“見える化”と独自ルールの自動スケジューリングを実現
株式会社 ファイネス
パーツ加工からアセンブリーまでの一貫生産に対応する総合板金企業
㈱ファイネスは、ステンレス製品を中心に精密板金加工・機械加工から装置一式のアセンブリーまでワンストップで対応する総合板金企業。金杉賢治社長が1998年に溶接企業として個人創業し、2002年頃から板金加工に参入した。創業当初から医療機器や半導体ウエハー検査装置などに用いられるステンレス製品を得意とし、板金加工に参入してからは食品機械や包装機械を手がけるようになった。
「2次・3次サプライヤーとしてパーツ加工だけを手がけていては成長は見込めない」と考えた金杉社長は、機械加工工程、組立工程を順次取り込み、パーツ加工からアセンブリーまでの一貫生産体制を構築。ワンストップ対応を強みに、メーカーとの直接取引を強化していった。
2015年には現在地(敷地2,000坪)に第1工場(板金加工)、第2工場(組立)、第3工場(機械加工)の3棟を建設し、分散していた工場を集約。同一敷地内で一貫生産を完結できる体制を整えた。
食品製造プロセス向けが40% ― 安定成長が見込まれる
売上構成を見ると、食品向けを中心とする包装機械・搬送機器が約30%。粉体の混合充填機、惣菜の計量・盛り付け機、異物検査装置などの食品機械に用いるステンレス製品(カバー・ホッパー・継ぎ手など)が約10%で、食品製造プロセス向けの仕事が合わせて40%前後を占める。
そのほか、紙おむつなど日用品の包装機械が約20%、半導体製造装置関係が10~15%、医療設備・製薬製剤設備が約10%などとなっている。
金杉社長は足もとの業績について「今期(2023年7月期)の売上は前期比微増で着地すると思いますが、材料価格の高騰の影響で減益となる見込みです。年明け頃から価格転嫁を本格的に進めたことで後半は改善しましたが、前半のダメージを引きずっている格好です」と語る。
井上享専務は「当社が強みとしているアセンブリーまでのセット発注のニーズは年々高まっており、価格改定後も受注は安定しています。中でも食品製造プロセス向けの仕事は、今後も安定的に伸びていくと見ています。半導体製造装置関係の仕事は昨年と比べると低調ですが、確実に回復すると聞いているので、それほど心配はしていません」と語っている。
生産プロセスの“見える化”を推進 ― 食品向けはシビアな原価管理が必要
同社は2017年頃から、斉藤宏取締役が中心となって原価管理・スケジュール管理の充実と、生産プロセスの“見える化”を強力に推し進めていった。背景には、食品製造プロセス向けに「装置一式」「パーツ単位」の両方を手がける同社ならではの管理の難しさがあった。
同社が手がける材料の約80%がステンレスで、板厚は1.5~3.0㎜が多い。リピート率は20%、中心ロットサイズは5個以下という極端な多品種少量生産で、社内で生産する板金加工部品のうち約1/3は、自社の組立工場で包装機械・搬送機器や半導体製造装置関係などのアセンブリーに使用する。
主力の食品向け包装機械・搬送機器は、物件対応となるため一品一様が基本となる。装置一式の構成部品200~300点のうち約半分が板金部品で、残りの半分は機械加工部品・樹脂部品・購入品・支給品。確定受注からの納期は1~1.5カ月となっている。
標準納期1~2カ月で、得意先によっては1~2年先まで見込める「装置一式」の仕事をベースにしながら、納期1~2週間の「パーツ単位」の仕事を入れ込んでいくのが同社の基本的なスタンスだ。しかし、「装置一式」と「パーツ単位」というリードタイムが異なる仕事を並行展開していくと、進捗管理とスケジュール管理が煩雑になる。
また、40%を占める食品製造プロセス向けの仕事はとりわけコストが重視されることが多く、適正価格で受注し、確実に利益を確保するためにはシビアな原価管理も必要だった。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 ファイネス
- 代表取締役
- 金杉 賢治
- 所在地
- 埼玉県飯能市茜台3-5-4
- 電話
- 042-978-7406
- 設立
- 2000年
- 従業員数
- 40名
- 主要事業
- ステンレス加工をメインとする精密板金加工、粉体・液体容器製作、医療機器・食品機械の製作・組立
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