「2025年問題」への危機感からDXを推進
生産設備は自動化・ロボット化を徹底追求
株式会社 ヒラノ 代表取締役 平野 利行 氏
㈱ヒラノのデジタル化の取り組みが新たな段階に入った。
同社は2003年以降、生産管理システムWILLをベースに、見積りから受注、3次元設計、加工プログラム、生産手配、財務会計まで一元管理する仕組み「Hirano-Factory」を構築してきた。さらに、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksによる設計提案を強化。ワークフローの最上流に3次元モデルを据え、WILLを独自にカスタマイズして、SheetWorksからWILLへの生産情報の受け渡しを実現。IT・ネットワークをフル活用し、情報の一元管理を実現した。
2015年以降は、さらなる自動化・デジタル化を強力に推し進めている。
2016年には新工場「開発センター」を開設。2017年以降は立て続けに大規模な自動化投資に踏み切り、社内の改善・改革チームが生産プロセスの自動化・合理化を進めている。
それと並行して、「3Dモデルから始まるDX」をテーマに、クラウド技術を活用することでグループ企業や顧客とつながる仕組みを独自開発。この取り組みにより、日本デジタルトランスフォーメーション推進協会から「モデル事例」として認定された。
2015年以降の一連の取り組みの背景には、生産労働人口の急速な減少と、国民の4人に1人が後期高齢者(75歳以上)となることで深刻な社会問題が噴出するとされる「2025年問題」への強い危機感があった。
「2025年問題」への危機感からDXを推進
― 2015年頃から自動化・デジタル化の取り組みを加速させています。何かきっかけがあったのでしょうか。
平野利行社長(以下、姓のみ) 2012年頃だったと思いますが、「2025年問題」の記事を読み、衝撃を受けました。生産労働人口が減少し、国民の4人に1人が後期高齢者になり、現役世代1.2人で高齢者(65歳以上)1人を支えなくてはならない時代が来る。会社、社員、社員の家族、そして日本はどうなってしまうのだろうと真剣に考えました。
初めて経営コンサルタントを呼び、本も読んで勉強しました。試行錯誤しながら取り組むべき課題を少しずつ明確にしていき、「情報の一元管理(雑務の削減)」「外段取りの推進(工場外での業務の充実化)」「第2次ロボット化(自動化・無人化)」の3つにテーマを集約しました。
クラウドを利用した「情報の一元管理」
― 順番にうかがっていきたいと思います。「情報の一元管理」については、どのような取り組みをされていますか。
平野 「情報の一元管理」は、「雑務」を減らして「実務」の時間を増やし、全体の生産性を高める取り組みです。
業務は「実務」と「雑務」に分けることができます。「実務」は“設計”“見積り”“製造”“検査”といった付加価値を生む業務で、より充実させていくべきもの。「雑務」は“探す”“不要な確認作業”“不要な書類整理”“余計なコミュニケーション”といった内容の説明がつかないムダな業務で、できるだけ削減していくべきものです。
これまでは「実務」の生産性を上げることに目がいきがちで、「雑務」の削減は見落とされてきたと思います。
― 具体的にはどういう仕組みを活用していますか。
平野 「情報の一元管理」自体は「Hirano-Factory」のときから取り組んできたことです。2015年以降はクラウドを採り入れ、一元管理する情報の対象を生産情報・加工情報だけでなく、会社に必要なあらゆる情報へと拡大しました。
そのために独自開発したクラウドベースの情報管理の仕組みが「What’s No(ワッツ・ナンバー)」です。さまざまなデータをクラウドに保管・共有し、キーワード検索やファイルタイプ、タグなどからほしいデータを瞬時に見つけ出すことができます。管理するデータは、たとえば図面、見積書、勤怠、社員の行動予定、WILLから出力した出荷リストや手配書などなどです。
クラウドベースで高性能な検索機能を備えた「What’s No」を活用することで、情報を“探す”“確認する”“整理する”といった「雑務」が減り、技術・管理・事務系スタッフの工数を推計で年間6,000時間、削減できました。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 ヒラノ
- 代表取締役
- 平野 利行
- 所在地
- 千葉県旭市蛇園5601-1
- 電話
- 0479-55-4626
- 設立
- 1971年
- 従業員数
- 45名
- 事業内容
- 建設機械・航空関連・消防車・建築・医療機器・厨房機器などの板金・製缶・塗装
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