特集

小規模板金工場のものづくりを支援するデジタル技術

デジタル技術の活用で「見える化」と技能伝承を推進 ― 環境経営にも生かす

企業間連携で不況に強い体質づくり

株式会社 エー・アイ・エス

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画像:デジタル技術の活用で「見える化」と技能伝承を推進 ― 環境経営にも生かす各工程には現場端末が設置され、情報管理システムContexerの「作業実績管理画面」(左)やGoogleカレンダーの予定納期(右)を表示している

同業種の企業間連携で技術に磨きをかける

画像:デジタル技術の活用で「見える化」と技能伝承を推進 ― 環境経営にも生かす石岡和紘社長(左)と都立葛西工科高校から昨年入社したCADオペレータの平野優真さん(右)

㈱エー・アイ・エスの前身は、石岡和紘社長の祖父にあたる天野二郎氏が創立した㈱天野電機製作所の東京工場(東京都江戸川区平井)。大手電機メーカーの協力工場として、設計・板金加工・組立を手がけていた。東京工場と深谷工場という2つの拠点があったが、2000年4月、主要得意先からの発注量減少を受けて東京工場を閉鎖し、深谷工場に生産を集約。それにともない、創業者の女婿にあたる石岡三郎会長が東京工場の建物・設備を居抜きで借り、㈲エー・アイ・エスを設立した。

設立当初は天野電機製作所の東京工場が受注していた仕事を引き継ぎ、2006年に株式改組。社名は「天野」の「A」、「石岡」の「I」、「製作所」の「S」はからきている。

2004年に2代目社長に就任した石岡和紘社長は「社員一人ひとりが、技術のみならず人として磨かれることにより、世の中に少しでも貢献できることを経営理念に、ものづくりに励んでいます。先の見えづらい不確実な時代だからこそ、同業種の企業間連携にも取り組み、ノウハウの交換や技術の研鑽を通じて、受け継いできた板金加工技術にさらに磨きをかけていきたい」と語る。

都市再開発などでエコキュート架台の需要が増加

従業員数は19名で、主要得意先は20~30社。集合住宅に設置されるガス給湯器やエコキュート用配管カバーのほか、鉄道車両部品、制御盤筐体、航空管制塔用操作卓などを手がけている。

現在は10個以下の小ロット品が全体の80%ちかくを占める。以前はロットサイズが100個を超える製品も多くあったが、コロナ禍による材料費高騰の影響で、数が多い製品はコスト競争力のある地方の板金工場に転注されるケースが増えた。新規品・設計変更品の割合も高まり、リピート率は40%程度となっている。

「コロナ禍で業績は一時的に落ち込みましたが、ここへきて給湯器向けの配管カバーやエコキュートを載せる架台の需要が回復しています。エコキュートは、東京ベイエリアの開発事業や都市再開発事業で建設が進む高層マンションなどに設置されるケースが増えています。前期は東京五輪選手村跡地の再開発の特需もあった影響で、初めて売上2億円を突破しました。今後は航空管制塔用操作卓の入れ替え需要にも期待しています」(石岡社長)。

  • 画像:デジタル技術の活用で「見える化」と技能伝承を推進 ― 環境経営にも生かすパンチングマシンEM-2510MⅡ
  • 画像:デジタル技術の活用で「見える化」と技能伝承を推進 ― 環境経営にも生かす曲げ工程のモニターにも予定納期が表示されている

インターンシップ受け入れで若返り

同社にはこの2年間で10代と20代の若手社員3名が入社し、20代以下の社員が5名になった。数年前から、都立葛西工科高等学校デュアルシステム科の生徒をインターンシップで毎年2~3名受け入れるようになり、2022年度に受け入れた生徒が翌年、同社に入社した。

「『デュアル』は、『学校』と『企業』を指しています。『学校』では職業人として必要とされる基本的な知識や技能を学び、授業の一環として『企業』で実際の仕事に携わります。卒業までに4カ月以上、インターン生として企業で学ぶことができるとあって、仕事にも前向きです。今年も6月から2名のインターン生を受け入れています。2名ともCAD志望だったので、当社が出展する展示会で、彼らが設計した作品を展示することを目標に、がんばってもらっています」。

「当社には先代と一緒に仕事をしてきた50~60代のベテラン社員が多く、職人のアナログ技術が主体でした。将来を考えると若い人材に技術・技能を伝承していかなくてはなりませんが、現場任せのOJTだけでは難しい。加工ノウハウのデジタル化が必要と考え、さまざまな取り組みを行ってきました。2014年には3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを導入して3次元化に取り組み、2020年からは溶接技能のIoTによるデジタル化に挑戦し、2023年には板金エンジニアリングシステムVPSS 4ieを導入しました」(石岡社長)。

画像:デジタル技術の活用で「見える化」と技能伝承を推進 ― 環境経営にも生かす左:集合住宅に設置されるエコキュート用の架台/右:「見積管理画面」の「工数計算」ウィンドウには「CO2排出量」の項目がある

会社情報

会社名
株式会社エー・アイ・エス
代表取締役
石岡 和紘
所在地
東京都江戸川区西瑞江4-15-15
電話
03-5879-9802
設立
2000年
従業員数
19名
主要製品
ガス給湯器用配管カバー、鉄道車両関連の板金部品、航空管制塔用操作卓、各種制御盤筐体など
URL
https://www.seimitsubankin.com/

つづきは本誌2024年7月号でご購読下さい。

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