「DX認定事業者」に選定 ― 「新古融合」によるDX推進
プレス・板金の両輪体制を確立―板金加工事業が成長軌道に
株式会社 M.T.C
「DX認定事業者」に選定
奈良県大和高田市の㈱M.T.Cは2023年7月、経済産業省が定める「DX認定制度」に基づき、「DX認定事業者」に選定された。奈良県内では初めての「DX認定事業者」で、従業員数50人以下のプレス・板金企業が選定された事例は全国でも珍しい。
「DX認定制度」は、DX推進の準備が整っている事業者を国が認定する制度で、2020年5月から始まった。「DX認定事業者」は「DXに積極的に取り組んでいる企業」であることを社内外に向けてPRできるほか、金融・税制・助成金などの優遇措置や支援を受けることができる。
制度開始から2年半が経過した2023年10月現在、全国のDX認定事業者は累計822者で、そのうち541者が「大企業」だ。「中小企業等」は281者と約1/3にとどまるものの、直近1年間で約2.6倍に増えており、中小企業の間でもDX推進の取り組みが広がっている。
同社はこれまでもさまざまなアプローチからDXを推進してきた。中でもインプロセスで作業者のヒューマンエラーを防止する「AI搭載画像判別カメラセンサー」は取引先や行政からの注目度が高く、一時は毎週のように見学者が訪れた。
そのノウハウの一部は地域の顧客や協力会社に開示され、指導も行っている。同社は2020年に経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定されており、川上・川下の両方に対してDXのノウハウを共有する姿勢は、地域の産業振興に資するとして、関係省庁や自治体から高く評価されている。
同社が掲げるDXのキーワードは「新古融合」だ。森久次社長が就任以来約20年かけて推進してきた「工場全体の向上」と、DX推進本部長を兼務する森秀貴専務が約10年かけて推進してきた「ITシステムの向上」を融合することで、「デジタルを使いこなし、経営環境の変化に適応できる柔軟性の高い製造業であり続けること」を目指している。
“順送化”と“工程短縮”の技術提案で成長
同社は大手住宅設備メーカー、大手事務機器メーカーの2次サプライヤーとして、ユニットバス・システムトイレ・システムキッチン・鋼製家具などに用いる金属プレス部品・板金加工部品を生産・供給している。
金属プレス加工業として創業した同社の成長を支えてきたのが、森社長が推進してきた順送プレスによる“自動化”と、さまざまな創意工夫による“工程短縮”の取り組みだ。
金型メーカーと連携しながら順送加工のノウハウを磨き、それまで単発プレスで加工していた製品を“順送化”。さらに、多数制御システムを用いたランダムピッチ送り方式やステージ交換式順送金型、特殊な技法を採り入れた新カシメ法など、独自の加工技術により“工程短縮”を実現し、コストダウンと付加価値改善を両立させていった。
住宅設備用部品や鋼製家具部品は穴位置ちがいや寸法ちがいが多いうえ、多品種少量生産へとシフトする傾向にある。そうした中で、同社のランダムピッチ送り方式やステージ交換式順送金型の技術は絶大な効果を発揮した。中には20種類以上の製品を1つの順送金型で対応するケースもあり、金型製作費の大幅削減にもつながっている。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 M.T.C
- 代表取締役
- 森 久次
- 所在地
- 奈良県大和高田市大字大谷122
- 電話
- 0745-22-1410
- 設立
- 2004年(1968年創業)
- 従業員数
- 46名
- 主要事業
- ユニットバス、システムトイレ、システムキッチン、スチール家具、スチール棚、自動車部品、建設機械、建築部品、医療機器などの金属プレス部品・板金加工部品・スポット溶接・タップ・組立
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