小径パンチング加工とプレス成形に特化したエキスパート企業
安定供給・精度向上のため加工設備の更新を本格化 ― 高難度成形にサーボプレスを活用
株式会社 サンエース
小径パンチング加工とプレス成形に特化したエキスパート企業
奈良県生駒市の㈱サンエースは、薄板の小径パンチング加工とパンチングメタルのプレス成形加工を得意とし、車載用スピーカーネットや食器洗浄機用ネット、シンク用ゴミ受け、空気調和機ネットなどを生産している。
もともとは同じ生駒市内にある金属プレス加工企業、㈱エスケイケイの一事業部だったが、1995年にパンチングメタルの加工に特化したエキスパート企業として分社化。得意分野を持った独立採算企業の集合体であるエスケイケイグループの一翼を担っている。
エスケイケイ時代には、電子レンジのスクリーン、自動車・音響向けスピーカーシートなどに用いるパンチングメタルをプレス機で加工し、コイル材やシート材として販売していた。1995年に分社化してからは、自社で加工したパンチングメタルのプレス成形・2次加工・表面処理まで行って、部品として納入するようになった。2017年頃からはエッチング加工に取り組み、パンチング加工では不可能な複雑・精細なパターンにも対応するようになった。
近年は、大学や高等専門学校とパンチング加工の産学共同研究に取り組み、「パンチングシートの引張特性」「鋼板硬さの簡易測定に関する研究」「パンチングメタルシートのU字曲げ加工におけるスプリングバックに関する実験的研究」などの論文を発表。設備面では、成形性能に優れたサーボプレスや、立体成形品の測定に適した3Dスキャナ型3次元測定機といった最新設備を導入した。顧客の技術パートナーとして、難易度が高い異形加工や3次元加工への対応力を高め、さらなる精度向上・品質改善に取り組んでいる。
独特のノウハウが求められるパンチングメタルのプレス成形
自社内の加工プロセスは大きく「パンチ工程」と「プレス工程」に分けられる。
「パンチ工程」では、通常のコイル材から高速プレス機で最小φ0.8㎜の小径パンチング加工を行い、それを再び巻き取ることでパンチングメタルのコイル材を製作する。「プレス工程」では、「パンチ工程」で製作したコイル材からブランク加工(外形抜き)を行い、単発プレスで成形する。成形後は協力工場で電着塗装と上塗り塗装を行い、自社で全数検査を行ってから梱包・出荷する。
加工材料は、SECC・SUS304・SPCC・アルミ・銅などの板厚0.2㎜から2.0㎜まで対応する。金型の加工は外部に委託しているが、金型の設計・組立は社内で行う。
薄板の小径パンチング加工とパンチングメタルの成形加工は、一般的なプレス加工と異なり、独特のノウハウが必要になる。
たとえば「パンチ工程」では、せん断打ち抜き加工を行うため穴の周囲にダレとバリが発生し、それによって表面の摩擦係数が変化することで、プレス成形時の加工精度が不安定になるなどの影響が出る。パンチングメタルの穴径・穴位置・配列パターンなどはプレス成形時のスプリングバックやワレの複合的な発生要因となり、対策が難しい。成形時に発生する引張応力・圧縮応力の強さも変わるため、穴の形状・配列に想定外の変形をもたらす。
そのため新製品の立ち上げ時には、塑性加工のエキスパートが長年のノウハウに基づきながら、3次元モデルからの展開や金型設計を行い、試作を重ねながら精度を追い込んでいくことになる。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 サンエース
- 代表取締役
- 河田 裕治
- 所在地
- 奈良県生駒市北田原町1044-5
- 電話
- 0743-79-3314
- 設立
- 1995年
- 従業員数
- 30名(派遣社員を含む)
- 主要業種
- 自動車用スピーカーネット、空気調和機ネット、音響スピーカーネット、水まわり用品など
つづきは本誌2024年7月号でご購読下さい。