「ものづくり補助金」の活用で企業体質改善
精密板金加工+工業用ヒーターの「一貫プロデュース力」
「3次元設計支援システム」の導入で生産性が大幅改善 ― 構造解析・流体解析にも対応
株式会社 エフシーシー
精密板金加工+工業用ヒーターの「一貫プロデュース力」
㈱エフシーシーは、産業機械などの工場生産設備や厨房機器の板金部品、各種工業用ヒーター・ヒーターユニットの特注品をオーダーメイドで製造している。
1975年に耐熱塗料の販売からスタートした同社は、顧客ニーズへの対応を第一に事業を多角化してきた。その結果、現在は「精密板金部門」「ヒーター部門」「営業部門」という3つの事業部門を持ち、2016年度の売上構成は「精密板金部門」が46%、「ヒーター部門」が13%、「営業部門」が41%となっている。
同社は1975年に創業し、耐熱塗料の販売を開始するとともに、高温焼付塗装を行うようになった。1981年には、部品の塗装の発注元である八光電機(当時の八光商事)の代理店として、八光ブランドのパイプヒーター(規格品)の販売をスタート。1984年にはパイプヒーターのフィン巻き加工を開始し、特注品の工業用ヒーター・ヒーターユニットの組立も行うようになった。
同社が取り扱っている工業用ヒーターは、樹脂成形機の金型の温度調整や塗装工場の乾燥工程などでの用途が主で、一部は、厨房機器のフライヤーの油温調整にも用いられる。基本的には、規格品は八光ブランドの製品を販売し、特注品や板金筐体をつくって組み込むヒーターユニットは同社が生産するかたちとなっている。
当初、板金加工や機械加工は協力工場に委託していたが、1988年に板金加工を内製化。ヒーター部品だけでなく、塗装を請け負っていた工場生産設備などの板金部品も、板金加工から塗装まで一貫して対応できる体制を整えた。特注品のヒーター・ヒーターユニットも手がけてきたため設計から対応でき、設計~板金加工~塗装~組立の「一貫プロデュース力」を強みとしている。
内製強化から転換 ― “利益額”を伸ばす
「営業部門」は、こうした内製化の流れとは一線を画し、「仕事を取ってきたら、内製・外注にかかわらず、とにかくこなすのが使命」(折口哲也社長)という。
「営業部門」は「精密板金部門」と「ヒーター部門」の営業窓口でもありながら、塗料の仕入れ販売、八光ブランドのヒーターの代理販売のほか、ヒーター・ヒーターユニット製造を通じて築いてきたネットワークを生かし、各種金属加工のコーディネーターとして受注した仕事を最適な協力工場に展開する商社的機能も有している。そのため、たとえば同社の売上全体の40%程度を占める厨房機器メーカー向けの仕事の場合、「精密板金部門」による社内生産分が20%弱、「営業部門」による外部調達分が20%強という内訳となっている。
2010年、リーマンショック後に代表取締役社長に就任した折口哲也社長は、「2010年代は“利益率”よりも“利益額”を追求してきました」と語っている。
「営業部門が協力工場へ展開している仕事を内製化すれば、“利益率”が改善するのはたしかです。しかし、ここ1~2年は工場生産設備も厨房機器も上向きになっているものの、それまでは不確定要素が多すぎました。リーマンショック後は業績が大きく落ち込み、金融機関からは経費節減・人員削減を促されました。しかし、モノづくりは人がいなければできません。人が失われれば、技術力も競争力も失われてしまいます。なんとか人員を削減せずに業績を改善する方法はないかと考えた結果、これまでのような内製強化による拡大戦略をいったん見直し、『精密板金部門』『ヒーター部門』は生産性を高めて競争力を維持する一方で、当社の特徴でもある『営業部門』を生かして“利益額”を追求する方針へと転換しました」。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 エフシーシー
- 代表取締役社長
- 折口 哲也
- 本社
- 大阪府大阪市港区磯路1-6-8
- 生駒工場
- 奈良県生駒市北田原町1765
- 電話
- 0743-79-0244(生駒工場)
- 設立
- 1975年
- 従業員数
- 47名
- 事業内容
- 精密板金加工/板金部品の焼付塗装(粉体・溶剤)・サンドブラスト・メタリコン加工/各種電熱ヒーターの製造/電熱ヒーターを組み込んだ各種ユニット・製品の組立加工
つづきは本誌2019年3月号でご購読下さい。